スズキ・スイフトに見る ガンコで骨太な軽量化戦略

スズキの新型「スイフト」。価格は134万3520円~184万5720円
スズキの新型「スイフト」。価格は134万3520円~184万5720円

フルモデルチェンジしたコンパクトハッチバック「スイフト」をスズキが東京都内で2016年12月27日に発表。年明け1月4日に発売し、早くも1カ月がたつ。2015年4月の軽自動車の増税後、同社の国内販売のメインである軽自動車の売り上げは戻らず、スイフト販売への期待も高まっているように思うが、月間販売目標台数は3000台と手堅い。はたしてどんなクルマなのか。小沢コージさんは、その「軽さ」が注目だという。

マツダ、スバル、そしてスズキがいま元気

日本の中規模メーカーが元気だ。厳しい開発&販売競争が続く自動車業界にあって、日本ブランドの乗用車メーカーはいまだ8社も存在し、年販1000万台に達するトヨタグループはもちろん、2016年に150万台を突破したマツダ、100万台を突破したスバルに加え、偉大なる中小企業といわれる300万台弱メーカーのスズキが頑張っている。

なかでもスズキは名物経営者の鈴木修会長のイメージが強いが、商品も個性的で面白く、勢いがますます増している感すらある。

それは独自のデザイン戦略とモノ作り方針だ。デザインの個性は2014年発売の軽自動車「アルト」や2016年登場の「イグニス」、初のインド生産輸入車「バレーノ」からも分かってもらえると思うが、ひそかにものすごいのが軽量化である。

最近では日産が初の国内向けコンパクトハイブリッドカーを出したし、トヨタはますますハイブリッド化を進めるし、当のスズキも新種のハイブリッドカーを出したばかり。

だが小沢の目から見て、今、スズキが軽自動車からコンパクトカーまで全域で、日本向けも欧州向けもインド向けも世界共通で力を入れているのは、徹底した軽量化戦略である。

しかもそのレベルがハンパじゃない。アルトの最軽量車種は車重610キログラム、新型スイフトは840キログラム台と、ほとんど1980年代の軽やコンパクトカー並みの軽さを実現しているのだ。

全長3840×全幅1695×全高1500mm(2WD車)

キモとなるのは軽からコンパクトカーまでざっくり3つのカテゴリーに共通して使われるボディー軽量化コンセプトである。今回のスイフトでは新プラットホームが「HEARTECT」(ハーテクト)と名付けられたが、ボディーのフレームの通し方を効率化し、高剛性を達成しつつも軽量化。鉄板素材もより硬くて薄くできる超高張力鋼板の使用率を高めたとか。

結果、アンダーボディーで約30キログラムも軽量化したうえ、ドア、足回り、エンジン、シートそのほかで合計約120キログラムも軽量化。乾いた雑巾を絞るようにあらゆるところを効率的に強化しつつ、無駄なところを省いたのである。

その結果得た、走りや低燃費スペックはすごい。エンジンはスズキ自慢の最新世代の1.2Lデュアルジェットが中心だが、ノーマルのモード燃費は24.0km/Lで、簡単なマイルドハイブリッド付きは最良27.4km/L。

平気でモード燃費30km/L代に入ってくる最新型のトヨタ「アクア」やホンダ「フィット」などにはかなわないが、ひと昔前のハイブリッドに迫る勢いだ。

ラゲッジルームは先代より約55L拡大

軽さはすべての性能をアップさせる

スペック以上に感じたのが実際の走りの気持ちよさだ。まずは91psノーマルスイフトに乗ったが、出足からスッと出て、高速まで全く不満なし。それは3.1psの小型モーターが加わるマイルドハイブリッドならなおのことで、さらに走りの剛性感が十分以上。

この手の軽量ボディーのクルマは、たまに鉄板が薄すぎるのか手応え全体に貧弱さを感じることがあるが、スイフトにそれはなく、発進時から缶詰のなかに入ったようなガッチリ感を感じるし、ステアリングフィールも滑らか。逆にタイヤからくるのか、部分的には乗り心地の硬さを感じてしまったほどだ。

1.2L自然吸気エンジン搭載車には、ISG(モーター機能付発電機)と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたスズキ独自のマイルドハイブリッド搭載車を設定している

最後になったが、デザインがこれまたチャレンジングなのだ。すでに世界累計販売530万台を突破したというスイフトだけに、守りに入るのではないかと思いきや、4代目となる新型は、スイフトらしいシルエットやヘッドライト形状を保ちつつ、全体にヌメッとした独特の面質を採用。正直、好き嫌いがハッキリ分かれるカタチで、担当の結城康和デザイナーは「あえて情感方向を狙いました」と吐露。多少違和感が出るのを覚悟で新しいカッコ良さを狙ったのだ。

他メーカーにはない無駄なコストをかけない圧倒的な軽量化技術と独特デザインを追究し続けるスズキ。グローバルでプレミアムイメージはないかもしれないが、着実にその存在感を高めている。

今後来るだろう自動化、電動化時代への対応を含め、未来をどう切り開いていくか大変気になるところなのであ~る。

担当デザイナーが「あえて情感方向を狙いました」という新型スイフト。スズキは圧倒的な軽量化技術と独特デザインを追究し続けている
小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。
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