だから、これから生まれてくる人たちは近い将来、テレビで通販番組を視聴して「ジャパネットたかた」ではなく、「ジャパネット」としてイメージする日も近いでしょう。どんどん「個」のイメージのある「たかた」が後退していって、「ジャパネット」として世の中に貢献する企業に脱皮すればいいのだと思います。ただ、番組でも流す歌が、♪ジャパネット、ジャパネット、夢のジャパネットたかた♪ ですから、そこを変えるのはちょっと難しい(笑)。

高田明氏(右)は長男の旭人氏(左)にトップを譲った(2014年の記者会見)

私が社長の時も一度、「たかたを取ろうか」という話が浮上したのですが、歌詞をどうするか皆で話し合ったことがあります。ジャパネットたかた改め、「ジャパネットたかか」とも言えないし(編集部注:「たかか」は九州弁で「高い!」の意味)。そういうこともあって、「たかた」が1社だけ残っているということなのでしょうね。

だから、ジャパネットは高田明個人の会社ではとうにないし、個人の力でやっていくわけではないのです。企業というのは社会の公器として、信頼を背景にお客様との信頼関係を作るわけです。

例えば、ソニーもソニーという名前の会社がお客様と向き合っている。創業者の名前はありません。松下幸之助さんが興した松下電器産業も今ではパナソニックに社名が変わりました。ジャパネットもそういう方向に向かっています。企業として世の中に責任を果たし続けられて初めて100年、200年と続く会社になる。情報漏洩事件はそんな信頼関係を自ら壊してしまった。あの時、販売自粛を決めて、原点に戻ろうとした判断は間違っていないと思います。

ただ、誤解していただきたくないのは、情報漏洩事件での私の対応を決して「美しい形」として、美談として取り上げてもらってはいけないのです。50万件もの情報が流出し、顧客に迷惑をかけた。その責任をジャパネットは企業としてずっと背負ってお客様に向き合っていかなければいけない。やっぱり、何ていうか……。「生き方」でしょうね。自分がどう生きるか、企業はどういう使命を負って生きていくか、ということが人間の使命であり、企業としての責任だろうと思います。

高田明(たかた・あきら)
1971年大阪経済大経卒。機械メーカーを経て、74年実家が経営するカメラ店に入社。86年にジャパネットたかたの前身の「たかた」を設立し社長。99年現社名に変更。2015年1月社長退任。16年1月テレビ通販番組のレギュラー出演を終える。長崎県出身。68歳

(シニア・エディター 木ノ内敏久)

前回公開「いま明かす、顧客情報流出事件を防げなかった理由」では、50万件もの顧客情報流出がなぜ起こったのか、事件の真相を語ってもらいました。

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