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揚げ物好きはうつ病になりやすい?

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2017/1/22

揚げ物をたくさん食べるとストレスへの対処能力が下がる?(c)Olga Miltsova-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 日本人の食事が西欧化して、食べる機会が増えたものの1つが揚げ物ではないでしょうか。肉、魚にとどまらず、ジャガイモや野菜、スイーツまで、食材を揚げるレシピは日本食に比べ非常に多く、多様です。

 誰しも、揚げ物は高カロリーと知りつつ、週に何回か、またはほぼ毎日食べているのが現状ですが、揚げ物を食べる頻度が高いと、抑うつに対するレジリエンス[注1]が低下し、うつ病になるリスクが高まる可能性が、日本医科大学多摩永山病院(所属は論文投稿時)の吉川栄省氏らの研究で示されました。

[注1] 一般には、逆境に直面した時にストレスに対処し、乗り越える能力を指す。うつ病予防にも大切な能力。参考記事「落ち込んだ気分を回復させる誰でもできる方法」

■魚が多いとうつ病が減り、揚げ物が多いとうつ病が増える?

 研究グループは、大企業で働く日本人を対象に、揚げ物の摂取頻度と、うつ病の有無、レジリエンスの高低の関係を調べました。

 吉川氏らが揚げ物に注目したのはなぜでしょうか。そもそものきっかけは、魚の摂取頻度が高い集団ではうつ病患者は少ない、という報告と、日本食がうつ病のリスクを低減する可能性を示した複数の報告にありました。魚を食べる機会が多いのは、日本食の特徴の1つです。

 一方で、西欧の食事がうつリスクの上昇に関係することを示した研究も複数あります。日本食との違いの1つが、西欧食には揚げ物メニューが多いことです。

 魚は、オメガ3脂肪酸(長鎖n-3多価不飽和脂肪酸)を多く含み、揚げ物には、オメガ6脂肪酸(長鎖n-6多価不飽和脂肪酸)を含む植物油が使われることが多いのですが、これら多価不飽和脂肪酸は感情の調節に重要な役割を担っており、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取量のバランスが崩れると、感情調節がうまくいかなくなって、うつ病をはじめとする精神疾患が起こりやすくなる可能性がある、と考えられています。

 著者ら自身は先に、魚の摂取量が、抑うつに対するレジリエンスに関係することを明らかにしていました。そこで、揚げ物を頻繁に食べると、魚の場合とは反対に、レジリエンスが低下して抑うつ症状が現れやすくなるのではないかと考えて、その真偽を調べることにしました。

■日本の大企業で働く715人の調査結果

 対象としたのは、都市部の大企業6社で働く715人(平均年齢39.9歳、83.4%が男性、65.2%が既婚者)です。

 抑うつ状態の評価には、うつ病自己評価尺度CES-D(スコア幅は0~60で高スコアほど抑うつが強い)を、レジリエンスの評価には14項目からなるレジリエンス・スケール(RS-14;総スコアは14~98で、高スコアほどレジリエンスが高い)を用いました。

 魚と揚げ物の摂取頻度は、食物摂取頻度質問票を用いて、過去6カ月間の状況を「ほぼ食べない」「月に1~3回」「週に1~2回」「週に3~4回」「週に5~6回」「毎日」の中から選択してもらいました。この結果、715人の平均摂取頻度は、魚が週に1~2回、揚げ物は週に3~4回でした。

 分析を行ったところ、魚の摂取頻度とは無関係に、揚げ物の摂取頻度が高い人ほど抑うつ症状は強く、レジリエンスは低いこと、レジリエンスが低い人はうつ病リスクが高いことが示唆されました。さらに調べると、揚げ物の摂取頻度が直接抑うつ症状を強めるのではなく、レジリエンスを低下させることにより、抑うつリスクを高めていることが明らかになりました。

 揚げ物が好きな人のライフスタイルは、揚げ物をあまり食べない人のライフスタイルとは様々な点で異なっていると考えられます。今回の分析は、そうした違いのごく一部しか考慮できませんでした。また対象となったのは、大企業で働く主に男性で、比較的恵まれた職場環境と報酬を得ており、ストレスは少なめで、うつ病リスクは低かった可能性があります。

 これまでに得られた情報の正しさを確認するためには、毎日の食事で摂取する魚と揚げ物の量を指示する臨床試験を行って、レジリエンスとうつ病発症率にどのような影響が及ぶのかを調べる必要があります。

 論文は、2016年9月15日付の『Lipids in Health and Disease』誌電子版に掲載されています[注2]

[注2] Yoshikawa, et al. Association between frequency of fried food consumption and resilience to depression in Japanese company workers:a cross-sectional study. Lipids in Health and Disease. 2016;15:156. Published online 2016 Sep 15. doi: 10.1186/s12944-016-0331-3

■大西淳子(おおにし・じゅんこ)
 医学ジャーナリスト。大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday 2016年11月25日付記事を再構成]

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