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「仕事も育児も大事」 それが男女共に働きやすい環境 内閣官房国際広報室 羽田由美子さん(後編)

日経DUAL

2017/2/3

日経DUAL

 2016年10月、内閣官房の国際広報室に着任した羽田由美子さんは3人の男の子を育てる母。大学院卒業後に経済産業省に入省し、3回の産休・育休を取りながら働き続けてきました。前編の「男児3人を育てながら働き続ける官僚の母」に引き続き、官僚の夫と分担する現在の“3人育児法”と、これからの展望についてお聞きしました(取材時は、経済産業省秘書課に在籍)。(聞き手は藤村美里さん)

■都心に住むことよりも子ども達の環境の良さを選択

内閣官房国際広報室 羽田由美子さん

―― 夫婦ともに霞が関に勤務されているわけですが、ご自宅も官庁がある場所から近いところにあるのでしょうか。

 いえ、通勤には1時間かかるので、都内ですが決して近いとは言えないところで暮らしています。長男を出産後、官舎を出てマンションに移ったのですが、勤務先に近い都心に住むか迷った結果、双方の両親に近く、比較的緑の多い郊外を選びました。結果的にはとても良かったと思っています。

 運の良いことに、自宅のすぐ近くに私立認可園が新設され、長男から三男まで、全員そこに入っています。板橋区ですが、保活も都心ほど激戦ではありませんでした。

 また、長男のときには、同じマンションで同じ保育園に通う、同じ年の男の子が3人いました。皆さん第一子のママさんだったので、お互いに悩みを相談しあったり、一緒に家族旅行に行ったり、今でも家族ぐるみで仲良くさせてもらっています。息子達はそれぞれキャラクターが違い、学校では別のお友達と遊んでいるようなのですが、朝も夕方も行き帰りは一緒なので心強いです。

 同じ保育園から8人くらい同じ小学校に進学したので、それも安心でしたね。朝は通学班があるので、他のお母さんとも顔見知りになりましたし、保護者会や学校公開の時に顔を合わせたときには積極的に話すようにしています。

―― 学童保育は、民間学童ではなくて学校の学童保育でしょうか。何時まで預かってもらえますか。

 公立小学校の学童保育に通わせています。数年前から、保育園とほぼ同じ夜7時になったので、お迎えに行けるようになりました。もっとも、現在はもう少し早い時間帯に、友達と帰ってきています。以前は6時までだったようなのですが、今のように7時までならば、私も主人も職場を6時に出れば間に合うので、シッターさんなどには頼らないで済んでいます。

 夏休み中も仕出し弁当でオーダーできるようになっているので、お弁当を作る必要はないですし、本当に助かりますね。希望すれば6年生まで通えるそうです。本人がいつまで通ってくれるかは分からないですけどね。

 今は、夫に相談して、週2回は朝30分早く出勤させてもらっています。長男の通学班と一緒に学校まで行って、そのまま出勤すると、ちょうど30分ほど早くに到着できるのです。その日は、パパが下の2人を保育園に送って行ってくれます。

 お迎え担当の日は6時くらい、おばあちゃんにお願いしている日は7時くらいには仕事を終えて帰るようにしているので、朝の30分は大きいです。

 夜のお迎えは、曜日では決めていなくて、夫婦でスケジュールを共有できるアプリを使って、週2日ずつ分担しています。曜日固定だとそれに合わないこともあるので、お互いに融通が利いたほうがいいね、ということになりました。

 おばあちゃんが担当の日は、下2人を保育園にお迎えに行ってもらって、長男は学童保育の後におばあちゃんの家に帰るという決まりになっています。

■「仕事ができる人=育児をする人」を目指していきたい

―― 今、週2回きっちりお迎えから寝かしつけまで担当してくれているご主人に両立の葛藤はなかったのでしょうか。

 夫は常日頃から、「仕事をしっかりやりたい人、しっかりやっている人こそが育児のために早く帰宅する事例を見せないと」という話をしていて。また、夫は「職場から配慮されたくない」という気持ちが強いようで、早く帰宅しても、電話やメールで必要な業務を継続する体制を作っています。私もこの点は見習いたいと思い、場所によらず成果を出したいと試行錯誤しています。

 特に男性で、早くに帰る人に対して「仕事より育児が大事」と周囲から思われがちな状況は良くないですよね。ただ、その認識は、実例によって少しずつ変えていけるのだと思います。男女ともに「仕事も、育児も、どちらも大事」という人がたくさんいるという状況は、男女双方にとって働きやすいだろうと感じます。

 実際、4月にフレックスタイム制が入りましたが、週1~2回、育児のために早く仕事を切り上げる男性による利用が見られます。また、毎朝の保育園への送りを担当されている男性も増えているようです。

 また、パソコンを自宅に持ち帰って仕事をする在宅勤務も上手に活用していけたらよいのではないかと思います。現在は、育児中、介護中の方に限って週何日かの在宅勤務が認められていますが、子どもを午前通院させ、その後子どもは保育園、親は半日在宅勤務という使い方もでき、働き方の選択肢が広がっています。通勤時間の分を家事や育児にあてられるので、両立にとても役立つという声を聞いています。

■「有言実行」できたのは、夫婦の価値観が同じだったから

―― 3児の母であり、夫と育児分担をしながらきっちり仕事されている羽田さんは、後輩世代にとっては重要なロールモデルとなるでしょうね。

 計画的だったわけではないのですが、実は3人目の育休に入るときの送別会で、上司に「君、有言実行だね」と言われて驚いたことがありました。どうやら、大学時代に官庁訪問した際、10年後の自分について書く欄に「政策の最前線に立つ3児の母」と書いていたそうなのです。普通は「〇〇分野のプロフェッショナル」とか書くのだと思うのですが……。私自身はすっかり忘れていたのですが、もしかしたら最初から頭のどこかで目標にしていた姿なのかもしれません。

 両立していくうえでは、「仕事や育児に対しての夫婦の価値観」が同じであることも重要だと思っています。私は専業主婦の母に育てられたこともあって、子どもの面倒は自分達でみたいという気持ちが強いです。仕事はバリバリしたいと思っているのに、ベビーシッターとかにアウトソーシングすることには戸惑いがあるんですね。

 そんなジレンマを抱えているのですが、この価値観は夫も同じで、「育児を外注するのではなくて手分けして自分達で面倒をみよう」という考えでした。これがすごく大きかったと思っています。私は心理的な抵抗があるのに、「そんなのシッターさんやおばあちゃんにお願いすればいいことじゃないか」という夫だったら、難しかったかもしれません。

―― 後輩女性職員から相談を受けることも多いのでしょうか。

 そうですね。官庁の仕事というのは、どうしても長時間労働となる時期があるため、結婚・出産前の女性がふと不安を覚えるときがあるという声は耳に入ります。まだまだ管理職のワーキングマザーは少ないですし、両立に成功している人は頭が飛び抜けて良くて、両親も近くにいるという印象が強い。「地方出身で能力も普通の自分にはできないのではないか」、と不安を漏らす方もいらっしゃいます。また、男女ともに同等のキャリアを持ち、仕事の責任と同様、家庭責任もしっかり果たしたいと考える男性が増えていると感じています。

 女性の採用数は、私達の世代よりもずっと増えているのが今の20代と30代。先のことまできちんと考えている世代だからこそ、その不安は解消できるようにしていきたいと思っています。

藤村美里
 TVディレクター。早稲田大学卒業後、民放テレビ局入社。報道情報番組などでディレクターを務める。2008年に女児出産後、児童虐待・保育問題・周産期医療・不妊医療などを取材。2013年退社。海外と東京を往復しながらフリーで仕事を続ける。働くママの異業種交流会「Workingmama party」 を主催。働くママ&20代30代女子が集まる異業種交流会「Women’s Lounge」 も立ち上げた。

[日経DUAL 2016年11月25日付記事を再構成]

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