パソコン操作も一因 手荒れが起きるメカニズム
冬になると、手のカサカサ感やケバ立ちなどが気になるという人も多いだろう。「冬の手荒れは、空気が乾燥し、手の水分が蒸発することで起きる。手指が冷えて、血液循環や新陳代謝が悪くなり、角質層が硬くなりやすいことも一因」と、南青山皮膚科スキンナビクリニックの服部英子院長は話す。
本来、皮膚の角質層は、天然保湿因子(フィラグリン由来)や角質細胞間脂質(セラミド)などの"潤い成分"によって水分が保たれている。さらに、角質層の表面には、皮脂と汗が混じりあってできる皮脂膜というバリア機能があり、水分が逃げないようにガードしている。
「しかし、手のひらは皮脂腺がなく、皮脂膜が薄いため、もともとバリア機能が低い。風邪対策などで手洗いや消毒の回数が増えることで、セラミドなどの潤い成分もどんどん洗い流されてしまい、バリア機能が低下し、さらに手荒れが起こりやすくなる。皮脂や潤い成分が減少する40代以降はさらにリスクが高まる」と服部院長。
段ボールが症状を悪化させることも
手荒れは症状によって、初期、進行期、重症期に分けられる。初期は指先のかさつきなどで、使用頻度の高い人さし指、中指、親指に出やすい。進行期は皮膚が粉っぽくなる、皮がむける、角質層が硬くなる、ひび割れなどが起きる。重症期には、手のひら全体に症状が広がり、じゅくじゅくしたり、手湿疹(主婦湿疹)や水ぶくれができることもある。
症状は初期で止まる人が多いが、紙をめくったり指先をよく使う人は摩擦が刺激となって進行期へ移行しやすい。最近では、パソコンのキーボードを長時間操作する人によく見られる。また、主婦や美容師、看護師、飲食関係者など、水仕事や手洗い回数の多い人は、重症化する傾向がある。
「乾燥した角質層は傷つきやすく、傷口から皮膚の中へ洗剤などの刺激物が入り込み、接触性皮膚炎を起こしやすい。意外なところでは、紙や段ボール。特に、段ボールはくずが刺激となり湿疹が出ることもある」とおゆみの皮フ科医院の中村健一院長は説明する。
この人たちに聞きました
おゆみの皮フ科医院(千葉市緑区)院長。一橋大学法学部、信州大学医学部卒業。聖路加国際病院皮膚科等を経て、おゆみの皮フ科医院を開業。「日経メディカルonline」で「【臨床講座】ドキュメント皮膚科外来」を連載中
南青山皮膚科スキンナビクリニック(東京都港区)院長。東京女子医科大学医学部卒業。日本皮膚科学会皮膚科専門医。保険診療の一般皮膚科と自由診療の美容皮膚科で、女性の心に寄り添う治療を行う。特にアトピー性皮膚炎に実績がある
(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 羽田光)
[日経ヘルス2017年2月号の記事を再構成]
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