山崎まさよし 使いたいけどまだ使えない電動ノコギリ

シンガーソングライターの山崎まさよしさん。趣味のDIYを始めたのもギターが関係していました
シンガーソングライターの山崎まさよしさん。趣味のDIYを始めたのもギターが関係していました

「セロリ」「One more time, One more chance」「僕はここにいる」などのヒット曲で知られ、約3年ぶりとなるアルバム「LIFE」を完成させたシンガーソングライターの山崎まさよしさん。前編(「山崎まさよし ギター選びは『欲しい音』探し」)ではギターの選び方や曲の作り方について話を聞きました。楽器に限らず、「必要なものしか手に入れない」という山崎さんが、「買ったけど、まだ日の目を見ていない」と笑いながら話してくれたのは電動ノコギリ。5年前から楽しんでいるというDIYを始めたきっかけも、実はギターでした。

DIYを始めたきっかけはギタースタンド

DIYをよくやるようになったのは5年ほど前から、東日本大震災の後です。前回もお話ししましたが、僕の家は自室兼スタジオになっていて、地震でギターがことごとく倒れて……それを見て、なんとかしなきゃいけないなと思ったんです。

それで、多少の揺れでも倒れないギタースタンドを作ろうと。買おうという発想はなかったですね。ギタースタンドに限らず棚でも収納ラックでも自分にぴったりのものって、そうそう売ってませんから。

ギタースタンドは思うほどは難しくないと思いますよ。基本的に世界共通のユニバーサルデザイン。今も昔も厚みや大きさがさほど変わらないんです。まぁ、THE ALFEEの高見沢俊彦さんが使っている天使が羽を広げたデザインのギターが並んでいたら別でしょうが(笑)。それに、自分で作ると余分な装飾をそぎ落とせるから、ギリギリまでコンパクトに作れる。限られた部屋で自分の居場所や導線も確保しやすくなりました。

「自分で作ると余分な装飾をそぎ落せるから、ギリギリまでコンパクトに作れる」

DIYの道具で最近購入したのが電動ノコギリ。今度、椅子を作りたいと思っていて、それには電動ノコギリが必要だなと考えて購入したんですが、いざ使おうとすると結構な音が出るのでご近所迷惑になるし、木くずもかなり出ることがわかった(苦笑)。その上、小さな子がうろついているので自宅では何かと都合が悪い。作業できる環境を確保できないのでまだ日の目を見てませんが、必ず使いますよ(笑)。

外出時に音楽は聴かない

収集癖は多分、ないんじゃないかなぁ。僕はリビングでアナログレコードを聴くのが好きなんですが、かといって大量のレコードコレクションがあるというわけじゃない。古いブルースや70年代のキャロル・キングやポール・サイモンのソロなどのレコードを、音楽を始めた頃にたくさんいただいたこともあって、その時代のものをよく聴きますね。

自宅のリビングでゆったりした気分で、マッキントッシュのアンプ、真空管じゃなくて石(トランジスタ)アンプなんですが、それを通した音を聴くというのが定番です。仕事の資料として音楽を聴くときは、スタジオの機材を通して聴くことが多い。大型のヘッドホンをして歩いている若い子を見かけますけど、僕は外出時にヘッドホンで聴くことはないですね。

もし、街で見かけるヘッドホンをした若い子が、人知れず山崎まさよしを聴いていたら、ですか。そんな子、いるかなあ。いたら、「お前、どうしたん!?」って聞いてみたいです(笑)。だって、音楽の流行ってやはり絶対的に若い人たちが作るものだと思うし、20年以上音楽を続けてきた僕はそことは少し違っていてしかるべきですから。

経営者ではなく作り手。だから成功体験は壊す

「売れる」というのは自分でどうこうするものではない「現象」だと思います。僕は作り手だから、満足のいくものを作って提示する。そこまでしかできない。売れる=成功と見るのは、レコード会社が考えればいいことだと思ってます。

むろん、成功体験があればそこから外れるのは怖いだろうし、経営者だったら成功例を踏襲しようとするでしょうね。でも僕は経営者じゃないから、そこは壊してもいいと思っています。昨今は、複数の有名なアーティストやクリエーターと組んで話題を集めるのをよしとする風潮があるんですが、そんななか、あえてニューアルバム「LIFE」をほぼ全て自分1人で作り上げたのは、昔から弾き語りでライブをしてきた、ミニマムなところから曲やパフォーマンスを提示してきた者としての意地もあります。もし、次作でいろんな著名人が参加して、それが急に売れたりしたら、僕は音楽業界が信じられなくなるかもしれないなぁ(笑)。

「僕は作り手だから、満足のいくものを作って提示する。そこまでしかできない」と語る山崎さん

僕のような仕事は、いつまで続けられるかわかりません。ただね、ふと思うんですよ。小説家が「断筆宣言」するみたいに、シンガーソングライターにも、そういうのはあるのかなってね。アイドルなら「卒業」、バンドは「解散」や「脱退」もあるだろうけど、僕は1人ですから。できるのは「脱臼」くらいかな(笑)。

続けるために、体に気をつかいながら、やりやすい環境をつくっていくのが大事だなと思います。ギターの話(前編)じゃないけど、必要だけど手元に「無い」音があるならば努力を惜しまずに手に入れるのもその一つです。あとは、ポップミュージックとして大衆の要望に応えることももちろんだけど、”独自性”みたいなものを大切にすることも自分がやりやすいという環境つくりにつながっていくのかなと。

そういう意味で、独自性を貫いてきたボブ・ディランにノーベル賞が与えられたって、すごいことだと思いますね。もし僕にそんな栄誉が与えられたら、ですか。すごいこと、聞きますね(笑)。とりあえず、電話にはすぐに出ますね。「やっとわかってくれたか!」って式にも喜んで出席しますよ(笑)。

「経営者だったら成功例を踏襲しようとするでしょうが、僕は経営者じゃないから、そこは壊してもいいと思っています」
山崎まさよし
1971年12月23日生まれ。滋賀県草津市で生まれ、山口県防府市に育つ。インディーズでの活動を経て、1995年に「月明かりに照らされて」でデビュー。1997年に主演した映画「月とキャベツ」の主題歌「One more time,One more chance」がロングヒットに。以来、丁寧に作られた良質の楽曲で音楽ファンを魅了し続けている。現在は17年5月まで続くコンサートツアー「山崎まさよし ONE KNIGHT STAND TOUR 2016-2017」で全国を巡っている。
「LIFE」
前作「FLOWERS」以来、3年3ヶ月ぶりとなるアルバム。「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」の主題歌として話題となった「空へ」やドラマ主題歌の「光源」など5曲のタイアップソングを含む。親子愛をつづたファミリーソング「君の名前」や、情報化社会へ鋭いまなざしを送る「さなぎ」、まっすぐで温かな感謝の思いがこもった「贈り物」など、生命や生きること=LIFEの様々な局面に寄り添う1枚。

(ライター 橘川有子/写真 吉村永)

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