インフルエンザに「絶対かかりたくない」時の切り札
今シーズン(2016/2017シーズン)は、インフルエンザの流行が例年になく早く始まりました。周囲に感染者が増える中、「この時期だけは絶対にかかりたくない」と感じている人も多いでしょう。そこで、「抗インフル薬の予防投与」についてまとめました。ぜひお役立てください!
A 抗インフルエンザ薬の中には、インフルエンザの予防薬として使えるものがあります。原則として、インフルエンザの治療に使う量の半分を倍の期間使用することで、一定の予防効果が現れることが知られています。ただ、予防薬として処方するには条件があり、条件を満たさない人の場合、服用して重い副作用が起こっても補償が受けられません。また、予防として薬を使用する場合は、健康保険(公的医療保険)が使えず自費となります。受験生やその家族に予防薬としての処方を行うかどうかは、医師によって考えが大きく違います。
予防に使える抗インフルエンザ薬は3種類
インフルエンザの治療に使われる抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)は4種類。そのうち、点滴薬を除いた3種類について、インフルエンザの予防に使うことが認められています。抗インフルエンザ薬には、体の中でインフルエンザウイルスが増えるのを抑える作用があります。抗インフルエンザ薬を予防的に使っていると、インフルエンザウイルスに感染しても体の中でウイルスが増えにくくなるため、結果としてインフルエンザの発症を予防できるのです。
現在、インフルエンザの予防薬として使えるのは、経口薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)、吸入薬のザナミビル(商品名:リレンザ)と、吸入薬のラニナミビル(商品名:イナビル)です。いずれも原則として、治療に使う量の半分を、倍の期間使用します。使用期間は薬によって違い、タミフルは7~10日間、リレンザは10日間、イナビルは1~2日間です。あくまで予防としての使用ですので、ワクチンと同様、医療保険は使えず自費となります。
ただし、抗インフルエンザ薬を使い過ぎると、薬への耐性を持ったウイルスが出現する恐れがあり、実際に抗インフルエンザ薬が効きにくいウイルスも見つかっています。そのため、どのような人に予防投与を行ってよいかが定められ、薬の説明書(添付文書)に記載されています。
予防投与を行うための条件は?
抗インフルエンザ薬の予防投与を行うための第一の条件は、家族など同居の人がインフルエンザにかかっていることです。インフルエンザウイルスは感染力が強く、インフルエンザの患者と一緒に暮らしていると、かかるリスクが極めて高くなるためです。
そして、第二の条件は、予防投与を受ける本人の健康状態です。健康な人よりもインフルエンザにかかりやすいか、かかった場合に重症になりやすい、以下のいずれかの条件に当てはまる人が予防投与の対象となるのです。
・気管支喘息など慢性の呼吸器疾患がある
・心不全など慢性の心臓病がある
・糖尿病などの代謝性疾患がある
・腎臓病がある
もっとも、この2つの条件を満たさない人への予防投与が禁じられているわけではありません。ただ、添付文書に記載されていない使い方(適応外処方)となりますから、万一、重い副作用が起こっても「医薬品副作用被害救済制度」の対象とはならず、補償が受けられないというデメリットがあります。
適応外処方をするかどうかは、医師によって大きく考えが違います。「どうしても今はインフルエンザにかかりたくない」という事情をどう判断するかは、個々の医師の価値観によっても変わってきます。まずはかかりつけの医師に、事情を説明し、相談してはいかがでしょうか。
(日経Gooday編集部 内山郁子)
[日経Gooday 2016年12月13日付記事を再構成]
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