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随筆家が醸す至極の信州ワイン 世界の首脳をもてなす ライター 猪瀬聖

2017/1/10

長野県東御市に人気ワイナリーをつくりあげた玉村豊男さん

長野県東御(とうみ)市。かつては養蚕で栄えた山間地に、ワイナリーのオーナーを夢見る中高年が都会から続々と押し寄せ、一大ワイン産地を形成しようとしている。強力な磁石の役割を果たしているのが、エッセイストで画家の玉村豊男さん(71)が建てたヴィラデストワイナリー。フラッグシップの「ヴィニュロンズ・リザーヴ・シャルドネ」は、2016年5月に日本で開かれた主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の晩さん会で各国首脳をもてなした至極の信州ワインだ。

北アルプスを背に広がるブドウ畑

ヴィラデストを訪れたのは12月中旬。畑のブドウの木は一枚残さず葉を落とし、すっかり冬の装いを見せていた。正式名称「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」の名が示す通り、ワイナリーの隣には、春から夏にかけて色とりどりの花が咲き乱れる庭園が広がり、遠くには雄大な北アルプスのパノラマが広がる。

ブドウ畑から北アルプスを望む

醸造施設の入った建物の2階には、ショップとレストランがあり、ワインを買ったり、食事と一緒に楽しんだりできる。料理の食材は自家農園を含めた地元産の新鮮な野菜や肉が中心。もちろん、ワインとの相性は抜群だ。交通の便がよくないにもかかわらず、毎年3万~4万人の観光客が訪れる。玉村さんもよくカフェで接客するという。

ヴィラデストを訪れるのは観光客だけではない。田舎暮らしを考えている人や、第二の人生はワイナリーのオーナーという人たちも、玉村さんに相談しにやってくる。そういう人たちは大抵、他の客がいなくなる瞬間をとらえて近づいて来るので、「すぐにわかる」と玉村さんは笑う。

■東大卒のエッセイスト 療養からワイン造りへ

玉村さんはもともと、東京大学仏文科を出てエッセイストとして活動。長野県軽井沢町に住んでいた時に原因不明の吐血をし、その時の輸血が原因で肝炎にかかった。療養生活を余儀なくされたのを機に、人生の後半は農業をして暮らそうと、夫婦で東御市に移住。今から25年前、45歳の時だった。

ワイン好きだった玉村さんは、新居の近くの土地を開墾してブドウ畑をつくり、赤ワイン品種のメルローと白ワイン品種のシャルドネの苗木を500本植栽。収穫したブドウは隣の小諸市にある大手ワイナリーに持ち込んで醸造してもらい、できたワインは自分で飲んだ。だが、初めはブドウの木が若すぎたこともあり、まったくおいしくなかったという。「毎日くたくたになりながら開墾し、ようやくブドウを育てたのに、まずいワインしかできずにどうしようかと思った」と笑いながら話す。

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