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犬の鳴き声・隣家で火事 ご近所トラブルどう解決?

日経DUAL

2017/1/13

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今回は、ご近所トラブル。犬の鳴き声がうるさいとのクレーム、隣家の火事がわが家に延焼したら? など身近な困り事に、弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士が解決法をアドバイスしてくれました。

■CASE1 犬の鳴き声対策をしたので、訴えられないはず?

Q. 自宅で犬を飼っています。うちの犬はよくほえるのでご近所のことを考えて防音設備を付けました。犬がほえるのは動物として当たり前だし、こちらとしては防音設備というできる限りの対策をしているので、近所に文句を言われても責任はないですよね?

A. 今回のご相談、防音設備の取り付け前後で考えてみましょう。防音設備を取り付ける前から犬がよくほえていたとすれば、その間、鳴き声が騒音とまでいえるかどうかは別として、ご近所の方が我慢していたかもしれません。さらにその鳴き声を原因として、不眠症など体調を崩した場合は飼い主であるあなたに損害賠償請求をされる可能性があります。

もちろん、防音設備を取り付けたのであれば状況は改善されるとは思います。しかし、防音設備を付けたとしてもその防音が十分でなかった場合や、取り付け前のことを理由に損害賠償請求される可能性は残ります。実際、防音設備取り付け前のことを理由に、損害賠償請求が認められたケースもあります。

閑静な住宅地で犬を4匹飼育していた飼い主に対し、犬が夜間に連日断続的に鳴き続けたため、飼い主は防音装置を付けたが、向かいの共同住宅の持ち主および居住者が1098万円の損害賠償を請求したというものです。

これに対し裁判所は、被害の状況は近隣者の受忍限度を超えていると認定しました。受忍限度とは、社会通念上、我慢できる範囲のことです。さらに、飼い主の義務について住宅地で飼育する以上、飼い犬に愛情をもって接し、十分なしつけをし、場合によっては専門家に訓練を依頼すべきであるとし、被害者にはそれぞれ30万円の損害賠償(慰謝料)を認めたのです。共同住宅の所有者には、犬の鳴き声が原因で賃貸借契約を解除されたことによる損害として、別途32万円の賠償を認めました。

この判決では損害賠償額を算定する際に、犬の鳴き声というよりも「ご近所付き合いの希薄さが問題の根本のひとつである」ということにも言及しています。人間関係の希薄さが損害賠償額へ影響をしているという点で、非常に興味深いケースといえます。

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■CASE2 隣の火事で、わが家も半壊。弁償はしてもらえるか

Q. お隣さんが火事になりました。原因は、寝ていたベッドからずり落ちた毛布に、つけたままにしていたガスストーブが引火したことです。わが家も半焼してしまいましたので、お隣さんに弁償してもらえますよね?

A. まず、今回のケースを考えるうえで必要になるのが、失火責任法という法律です。この法律では、火事を起こした張本人が故意や重過失で火事を起こしたといえない限りは、その人に対して損害賠償請求ができないと定められています。この法律は明治32年に制定された古いものですが、現代でも適用されています。日本は狭い土地に木造家屋が密集しており、火災が発生すると広がりやすいという住環境にあり、延焼させた人に、自宅を失ったうえに損害賠償責任を負わせるのは賠償能力をはるかに超えるのではないか、といった様々な背景があるようです。

重過失とは、ざっくり言うと容易に火災が予見・防止できるのに、非常識な行為をした場合のことです。

今回の場合は意図的ではなかったことから、お隣さんに重過失があったといえるかどうかがポイントになります。しかし残念ながら、今回のケースでは重過失があったとはいえないのでお隣さんに弁償してもらうことは難しいかもしれません。

今回のケースとよく似た事例がありますのでご紹介します。この事例では、深夜6畳の居室内でベッドから36センチ離れたところにあるガスストーブに点火して、ベッドで寝そべって週刊誌を読んでいるうちに、そのまま寝入ってしまったところ、布団にガスストーブの火が燃え移った、というものです。延焼を受けた住人が損害賠償請求をしました。しかし裁判所は、そのまま寝入ってしまうことも十分に予測できたので過失はあるものの、ベッドに寝そべって週刊誌を読んでいるうちに不覚にも寝入ってしまうということはよくあることで、注意義務を著しく欠いたとまでは言えないとしました。すなわち、重過失はないと判断したのです。

ただ類似の事例では、重過失を認定しています。こちらでは、石油ストーブの灯油が切れていたために電気コンロを点火して寝入ってしまったところ、布団がずり落ちて引火したという事案でした。

どのような場合に重過失が認められるかは事案ごとに異なります。場合によっては、弁護士などの専門家にご相談されるのがいいかと思います。

徳原聖雨
『弁護士法人・響』の福岡オフィス支店長。福岡県弁護士会所属。子どもの権利委員会、法教育委員会、消費者委員会、精神保健委員会所属。交通事故・離婚・相続・借金問題など民事案件を主に扱う。http://hibiki-law.or.jp/ (TEL)0120-205-376

(ライター 小泉恵里)

[日経DUAL 2016年11月29日付記事を再構成]

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