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涙のNAHAマラソン 体当たりで感じる沖縄

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NIKKEI STYLE

12月4日、那覇市を発着点に沖縄本島南部をめぐる「NAHAマラソン」が開かれた。通称「太陽と海とジョガーの祭典」。今回参加した市民ランナーは約2万6500人を数えた。出走ランナーの数では東京マラソン、大阪マラソンに続く規模を誇る。そもそも「決して楽な大会ではない」とベテランランナーたちも口をそろえる過酷なコースだが、それでも多くのランナーを引き付けて離さないのはなぜなのか。大会当日、気温セ氏28.2度と102年ぶりに那覇市の12月最高気温を更新した厳しい条件の下、記者がレースに挑んだ。

◆      ◆       ◆

エイドの温かさにリピーター続出

「私は参加してもう20年以上。本土の大会も出るけど、NAHAが一番よ」「札幌から10年以上通っているの。補助食品とか何も持たなくても走れるし」

午前9時前。スタートを待つ奥武山(おうのやま)公園では、誰かが声をかけ始め、会話が途切れない。あと30分もしないうちにスタートの号砲が鳴るレースの魅力を語り合う。

1985年に始まり今年で32回目を迎えたNAHAマラソン。記者は去年に続き2度目の参加だ。去年はフルマラソン初チャレンジ、なんとかゴールにたどり着いたのも思い出深い。エントリーの始まった6月、記者は迷わずウェブサイトの申し込みボタンを押していた。

NAHAマラソンの定員は3万人。人口32万人の那覇市は、赤と白の「NAHAマラソンバッグ」を持ったランナーであふれる。足元はランニングシューズだ。「この人もランナーだ」と思わず親近感がわく。

この大会のファンたちは、真っ先に「応援がとにかく温かい」とその魅力を口にする。

フルマラソンでは、体の回復を補うためにアミノ酸補助食品などを持って走る人が多い。中間点を過ぎたとき、30キロメートルを過ぎたときなど、タイミングにあわせてエネルギーを注入しひとふんばりするのだ。

しかし、このレースではその心配がない。大会公認のボランティアに加え、「私設エイド」と呼ばれる沿道の応援団が途切れない。彼らの多くが、ミカンやバナナ、ドリンク、瞬時に患部を冷やすコールドスプレーを手に待ってくれている。沖縄の伝統菓子「サーターアンダギー」を用意している人までいた。「この大会に出ると太っちゃう」。そう笑うランナーも多い。

厳しいアップダウン

しかし、コースとしては決して初心者向きではない。スタート地点の奥武山陸上競技場から、20キロメートル地点付近の仲座入口(なかざいりぐち)バス停までの高低差は約100メートル。特に、17キロ地点から20キロ地点までは約60メートルの傾斜をほぼ登り続けることになる。ここが「最大の山場」と誰もがいう。

去年は昼ごろから天気が崩れはじめ、どんよりとした曇り空とたまに感じる風が逆に心地よかった。びしょぬれのゴールも悪くない、と思ったものだ。

ところが、今年は12月とは思えない暑さ。さえぎる物もなく、焼けるような日差しを浴びながら、目の前の坂を見上げると心が折れそうになった。

あまりの暑さに給水所ではコップがなくなり、ホースから直接、頭に水をかぶった。それでもあっという間にウエアは乾いてしまう。次から次へと現れる乾いたランナーを潤すため、沿道の人々が業務用のプラスチック製バケツにたたえた水を柄杓(ひしゃく)で次々にすくってくれていた。

70年前の激戦地に献花を

スタートから21.3キロの中間制限地点、平和祈念公園が近づくにつれ、上り坂が辛くなってくる。青々とした緑と、視界の左側に飛び込んできた太平洋の青さに思わずため息がもれた。オレンジ色の琉球瓦の屋根と、真っ赤なハイビスカスの花の色も鮮やかだ。南は、第2次世界大戦、沖縄戦終焉(しゅうえん)の地である摩文仁(まぶに)の丘。20キロを過ぎれば、下り道だ。そして、5キロほど過ぎた25キロ地点付近に、慰霊碑「ひめゆりの塔」がある。

そこでのことだ。ある男性ランナーがコースから外れると、息を切らせながら、ウエストポーチから小銭を取り出した。花を買い求めると献花台にたむけ、一礼してすぐ走り出した。今、自分の立つ場所が70年前、激しい戦地であったことを思い出し、胸がしめつけられた。

くらくらするような日差しのなかで、足を一歩、一歩とアスファルトに踏み出すと神経が研ぎ澄まされてくる。沖縄の抱える痛みと、強いエネルギーを全身にあびながら進む。音楽もうれしかった。沖縄民謡、エイサーを踊りながら私たちを応援してくれる町の人たち。暑さのなか、必死で踊る子供たちに思わず目を細めて手を振った。手を伸ばすと、ハイタッチをしてくれた。

完走率は53%

NAHAマラソンは、完走率の低い大会としても知られる。例年、厳しいアップダウンと、気候条件の厳しさを前に完走率が7割を切る年も珍しくない。制限時間は6時間15分と決して短いわけではないが、出走数が多いため開始から30分以上過ぎたころにやっとスタート地点を走り出せるランナーも多い。自己ベストはそもそも狙いにくい大会だ。

今年、午後3時15分の制限時間までにゴールできたのは1万4138人。完走率は53%だ。ワースト記録だった1999年、52.3%に続き2番目に低い厳しい結果となった。

記者は今回、結局完走することができなかった。暑さにやられ、中間地点でレースから脱落した。フルマラソンは3回目の挑戦。駅伝も含め10回を超えるレース経験で、リタイアしたのは初めてだ。

根性を出せば、もっと走れたのではないか。あの山を越えたら、下りが続くことを知っている。あと少し、まだ走れる、と駆け出そうとするたびにどうしても、次の坂道を登り切れなかった。ひとえにトレーニング不足だった。

とぼとぼと歩く私に、ミカンやスポーツドリンクを渡してくれる町の人たちの優しさがしみた。リタイア組を「収容」した、中間制限地点からの帰り道、ざわわ、と音を立てる緑色のサトウキビ畑が広がっていた。

「来年も待っています!」。高校生らしきボランティアの女性が声をかけてくれた。次こそ、完走します――。ちゃんと声に出ていただろうか。終わったばかりの今、来年の那覇に向けてトレーニングをしたい、強く思っている。

完走できなかったことは、悔しい。悔しいけれど、マラソンの楽しさは速さや完走だけではないこともまた、NAHAは教えてくれた。この大会で走ったからこそ、普通の観光では味わえない沖縄の人たちとの一体感や、自然・歴史の魅力を感じることができたと思う。来年もまた、那覇の地に足を運ぶだろう。

(松本千恵)

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