「コルベット」7代目 走りの新グレードを追加
ゼネラルモーターズ・ジャパン(以下、GMジャパン)は、シボレーのスポーツカーである「コルベット」に走行性能を高めたグレード「シボレー コルベット グランスポーツ」を新たに設定した。税込み価格は1210万~1287万円となる。
シボレー コルベットは1954年に誕生した米国を代表するスポーツカーで、現行型が7代目となる。伝統的に大排気量OHV(Over Head Valve)エンジンを搭載したFRレイアウトで二人乗りを採用している。またアメリカ車には珍しく、MT(マニュアル)が用意されているのも特徴だ。現行型はタルガトップ仕様のクーペと電動ソフトトップを備えたコンバーチブルのボディーを用意。グレード構成はこれまで、エントリーの標準ボディー「Z51」、ハイパフォーマンス仕様の「Z06」の2つだったが、今回新たにグランスポーツが追加された。
ボディーや足回りをアップグレードすることで純粋に走りを追求
グランスポーツという名前はスポーツカーレース参戦を目指し、1963年にわずか5台だけ製造された特別なプロトタイプに与えられた名称で、その後も走行性能を高めたモデルとして、4代目と6代目で設定されてきた。
この7代目ではレース活動で培った技術をフィードバックするだけでなく、パワフルな過給機付きエンジンを搭載するトップモデル、Z06へ採用するアイテムや技術にさらに手を加えて取り入れるなど、純粋に走りを追求するグレードとして仕上げたのだという。
パワートレインはZ51と共通で、最高出力466psの6.2L V8OHV自然吸気エンジンを搭載。ボディーや足回りなどは最上グレードであるZ06のパーツを積極的に採用し、さらにグランスポーツ専用のチューニングを施している。つまり簡単に言えば、高出力対応のボディーにアメリカンスポーツカーらしい自然吸気の大トルクのエンジンを組み合わせることで、コルベット伝統の自然吸気OHVエンジンの魅力と、クルマを操る楽しさを兼ね備えた純粋なスポーツカーを目指したのだ。このため、Z06の性能を高めるための専用オプション「Z07パフォーマンスパッケージ」(ブレーキ、タイヤ、エアロパーツなど)も装着できるようになっている。
日本ではエントリーモデルとの価格差35万円
グランスポーツの導入に合わせてコルベットは価格を改定し、エントリーのZ51は仕様を絞ることで、これまでより3%下げた994万円からという、税込み価格で1000万円以下を実現。新グレードのグランスポーツの場合、北米ではZ51との価格差は55万円程度(5000ドル)あるのだが、日本では35万円差まで小さくなっている。
コルベットは現在日本に正規導入される唯一のアメリカンスポーツカーであり、高い知名度を持つが、"古き良きアメ車"のイメージが現在でも強く残る日本では、コアなファンに愛されるモデルにとどまっていることは否めない。そこでGMジャパンは高い性能を持つ現代のスポーツカーとしての魅力を訴求すべく、エンジンの性能をフルに引き出した走りを楽しめるグランスポーツを日本に導入したわけだ。
"走りのモデル"をサーキットイベントで訴求
そして"走りのモデル"という印象をより強く訴えるため、GMジャパンは初の公式サーキットイベント「シボレー コルベット ドライビング アカデミー2016」を富士スピードウェイで開催し、グランスポーツ発表の舞台とした。
同イベントは既存のコルベットユーザーを対象としたもので、25台のユーザーが参加した。グランスポーツの性能を存分に味わえるように、午前中は最高速が抑えられるミニサーキットコースと、クルマのコントロールを重視したジムカーナコースでの試乗体験。午後は国際サーキットコースである本コースを走行し、レーシングドライバーからの指導も受けられた。今後も同様のイベントを継続していくという。
欧州車顧客をどう取り込むか
コルベットのスペックはポルシェ「911」などのジャーマンスポーツカーと比較されるほど本格的だが、価格は1000万~1500万円程度とリーズナブルだ。伝統的に搭載するOHVエンジンは進化し新世代のものになっているのにもかかわらず、名前が与える印象から"古典的"と捉える人も多い。それもあって日本では、多くのハイエンドスポーツカーユーザーの目は欧州モデルに向いてしまっているのが実情だ。
クルマ好きが好むFRレイアウトのコルベットの良さを生かせるグレードの導入で新たなチャンスにつかむには、欧州ハイエンドスポーツカーの顧客に試乗してもらう機会を増やすことが重要だ。イベント開催などより積極的なアプローチが重要となるのは間違いないだろう。
(ライター 大音安弘)
[日経トレンディネット 2016年11月29日付の記事を再構成]
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