ワインもおつまみも手ごろな「明治屋直営ワインバー」
真空調理でヘルシーな料理も魅力(京橋エドグラン)
再開発が進む東京駅東エリアにありながら、大型商業施設の開発があまり進まなかった京橋エリア。しかし2001年の「京橋二丁目西地区まちづくり検討会」発足から15年目の2016年11月25日、新たなランドマークとなる複合施設「京橋エドグラン」がグランドオープンした。
同施設は中央区指定有形文化財である歴史的建築物「明治屋京橋ビル」と、新築された再開発棟低層部との2棟で構成。低層区画には34店舗が出店する。そのなかで11月15日にいち早く開業するのが、明治18年(1885年)創業の明治屋が運営するワインバー「明治屋ワイン亭」だ。
輸入食品の老舗がなぜ創業から130年以上たった今、新たに直営ワインバーをオープンするのか。また、いったいどんな店なのか。オープンに先駆けていち早く足を運んだ。
高級感ある雰囲気なのに価格は意外にカジュアル
京橋エドグランは銀座線京橋駅と地下で直結しているが、8番出口を出たすぐのところにあるのが明治屋ワイン亭だ。外から見た時はその間口の広さから「大きな店だな」と思ったが、入口を入って右側の広々としたホールは、明治屋の子会社である中央亭が運営するビアレストラン「京橋モルチェ」。めざす明治屋ワイン亭は入口左手に隣接する小さなドアのほうだった。
面積は約51.14平米と意外なほどこぢんまりした空間で、席はカウンターが10席、2人掛けのテーブルが9卓で合計28席。意外に閉塞感がないのは、天井の高さと窓に並べられたワインボトルの間から通路が見えるためだろう。
まずは最大の目玉であるワインについて、明治屋のワインバー推進事業室長の倉谷良一氏に聞いた。ワインは全て明治屋直輸入で約120品目をそろえており、温度設定の異なる5台のワインセラーに約540本、デイセラー(その日に客に出すワインを入れておくセラー)にはグラスワイン用を中心に60本、合計約600本を常時在庫しているという。
気になるのは価格だが、グラスもボトルも3段階で設定。グラスワインは600~900円、900~1800円、1800円以上の3段階。ボトルは3000~4500円、4500~7000円、7000円以上の3段階。ちなみに最も高価格のワインは、シャトー・オー・ブリオン2009年物のボトルで、22万円だそうだ。意外に低価格からあるのに驚いたが、輸入会社直営店というコストメリットもあるのだろう。
料理は、古典的なフレンチと和食をベースに、真空調理法を採用しているのが目新しい点。なぜ真空調理法なのか。「真空状態で調理すると素材の細胞が壊れないのでエキスが外に出ることなく保たれ、口の中でかんだときにエキスが出てくる。また素材に瞬時に均等に味が浸透するため、調味料を多量に使わなくてもおいしく仕上がり、健康にもいい」(倉谷室長)。
バターもオイルも塩分も通常のフレンチよりぐっと控えめでヘルシーだという同店の料理を味わってみた。たしかに一般的なフレンチやイタリアンよりもあっさり食べられる印象。だがしっかりした味わいがあり、物足りなさは感じられない。同じ料理で仕上げを白ワインと赤ワインから選べるものが多いことも、好きなワインに合わせて料理を選びたい人にはうれしいだろう。
「カッペリーニ・フライのスモーク ワイン風味」「ミックスナッツのスモーク ワイン風味」などの手軽なおつまみは500円均一で、オードブルも600円から(サービスチャージが1人あたり500円かかる)。おすすめやパスタも1000円台と、メニューも価格も意外にカジュアルなのに驚いた。平均客単価は「軽くつまんで2~3杯飲む人なら2000~3000円、じっくりフルコースを楽しむ人なら2万円前後が平均価格帯になるのでは」(倉谷室長)。
狙いは"輸入ワインのパイオニア"のイメージ復活
料理は本格的なフレンチとイタリアンだが、コンビーフやスープなど明治屋ブランドとしてなじみ深い食材を使ったものも多い。だが、「明治屋の商品を宣伝するためのレストランではないので、どの料理にどの商品を使っているかをあえて伝えることはしない」(倉谷室長)という。
それでは、今回の出店の狙いは何なのか。「明治屋は明治23年に日本で初めてワインの輸入を開始し、日本における輸入ワインのパイオニアという自負を持っている。ワインバーを始めることで、明治屋の原点に立ち返りたい」(明治屋の米井元一社長)という。たしかに明治屋はパンやジャム、スープなど輸入食品の老舗というイメージはあっても、輸入ワインのパイオニアというイメージは希薄なのが現状だ。同店は輸入ワインのパイオニアとしてのイメージを復活させるのが狙いなのだろう。
(ライター 桑原恵美子)
[日経トレンディネット 2016年11月16日付の記事を再構成]
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