「不安にならないためにも、今はがむしゃらにやりきるだけ」「不安にならないために精いっぱいの準備をすればいい」──ももいろクローバーZの高城れにさんが江戸切子に挑戦するももいろトラディショナル第3シーズンもいよいよ最終回。江戸切子を作る同世代の根本幹大さんと「破りたい殻」「将来の夢」について語り合います。アイドルと伝統工芸、平成世代が考える未来とは?【前回はコチラ】
どうすれば伝統工芸の「殻」を破れるか
ももいろクローバーZのメンバーが伝統工芸の魅力を同世代の若者から学ぶ「ももいろトラディショナル」。第3シーズンは高城れにさんが東京・亀戸の根本硝子工芸で江戸切子に挑戦しています。いくつかある工程の中から細かな模様を刻む「三番掛け」を体験した後に、江戸切子を教えてくれた平成生まれの根本幹大さんと仕事や未来について対談中。「お互い応援してくれる人がいるからがんばれる」と意気投合した前回に続き、後半戦では「これから挑戦したいこと」の話題に……。
高城れにさん 伝統工芸のやりがいってどんなところで感じますか?
根本幹大さん 江戸切子って世界に誇れるものだなと感じるので、そこはやりがいがありますね。この仕事に就くにあたり、海外のガラス工芸も勉強しましたが、江戸切子のすごさを確信したんです。
高城さん 逆に、難しいなって思うのはどんなこと?
幹大さん 良くも悪くも、江戸切子は国内だけでなんとか商売が成り立っちゃう。最近は他の伝統工芸の職人さんとの交流もしてるんだけど、日本の伝統芸能って殻に閉じこもってるなと感じることが多くて。それをちょっとずつでも、僕らの世代で変えられたらいいと思ってます。高城さんには、やぶってみたい殻とかってありますか?
高城さん 殻、ですか……。アイドルの活動と並行して、演技やラジオのお仕事もちょっとずつやらせてもらっているんですが、そうやって少しずつ今までにはなかったところでお仕事の幅を広げていけたらなって思ってます。今日やらせてもらった江戸切子の体験も、その一つです。普通に生活してたら、目にしていたとしても深く知ることがなかったことを実際に触れたり、お話をうかがって知ることができた。このお仕事をしてると、新しい体験をしたり知識を深めたりする機会がいっぱいあると思うので、少しずつ積み重ねていきたいです。
幹大さん すごくしっかりした考え方をしてるんですね。
高城さん 基本、いつも自分に自信がないんですよ……。
幹大さん じゃあ、将来への不安もあります?
「35歳までに江戸切子を海外に」「私は25歳までに準主演を」
高城さん どうかなあ。たまに感じるけど、あくまで「不安」でしかないですよね。実際に起きたことではないから、その時になってから考えればいいのかなと。不安にならないためにも、今はがむしゃらにやりきるだけです。
幹大さん 僕も同感ですね。前回、高城さんが言ってたみたいに、仮に嫌だと思うことがあっても前進するしかない。不安にならないために精いっぱいの準備をすればいいと思うんです。
高城さん じゃあ、幹大さんの将来の目標は?
幹大さん 目下の目標は、35歳までに海外へ進出すること。始めてから10年でというのは最初から考えてることだし、早く行けるならもっと早く出て行きたいですね。
高城さん 私は、25歳までにもっと演技のお仕事がしたいですね。そこまでにドラマの準主演とか、できたらいいな。
幹大さん 主演じゃなくて、どうして準主演?(笑)
高城さん 本当は主演をやりたいって言いたいけど、やっぱりそこは、自信がなくて……(笑)。お芝居だと自分とは正反対の役もできるから面白いなって思う。
最後まで笑いの絶えない対談もこれで終了。最後まで若い2人を後方で見守っていた達也氏も加わって、3人で一緒に決めポーズの「ゼーット!」でしめました。
高城さん できあがりが楽しみです。きょうはありがとうございました。
うまくいかなかったところも愛着に
高城さんが体験した江戸切子「しずく」。幹大さんが仕上げを施した後、磨きをかけて完成です。実際に江戸切子ができあがったのは体験日のおよそ1カ月後。さっそく高城さんに届けました。
当日はももクロの撮影日。撮影の合間に、できあがった江戸切子を高城さんに手渡します。
高城さん わあ、すごい。きれいに仕上がっていますね。
撮影に立ち会っているももクロの衣装や小物もそろえる女性スタイリストも「これ、すごくきれいじゃないですか」と興奮気味。
高城さん あ、でもはみ出したところが残っている!
その言葉通り、江戸切子に目を近づけると、「菊繋(つな)ぎ文」に上の部分にはみ出したキズが残っていました。
高城さん でもそれ以外はあまり分からないと思いません? 幹大さんがきれいに仕上げてくれたんですね。
続いて「しずく」の部分をチェック。
まずは幹大さんの仕上げた部分。
続いて高城さんが彫ったしずくを4つ並べてみます。
高城さん ああ、幹大さんが彫ったのと比べるとバランスが悪いし、大きさもバラバラだあ。
高城さん こうやってできあがってみると、江戸切子って、やっぱり難しいと思いますねえ。
でも幹大さんも、お父さんの達也さんも「初めてにしては上手でした」と言っていました。
高城さん (疑わしそうに)本当かなあ。でも褒められたらうれしいです。それにうまくできていないところがあるのも、自分が作ったってわかるから愛着がわく気がする。
というわけで、完成品を見た高城さんの感想を動画でご覧ください。
私も生活の中で使い続けたい
江戸切子を体験してどうでしたか。
高城さん やっぱり実際自分で体験したせいかもしれないけれど、昔の人のもの作りのアイデアってすごいなって思いました。
体験した菊繋ぎ文のように、直線だけで菊の模様を作るみたいなところですね。
高城さん 同世代が伝統的なもの作りに関わるというのはうれしいし、若い人が作ると伝統工芸が若々しく見えるというのも面白かった。ぜひ自分の生活の中でも使い続けていきたいなと思います。私は神奈川生まれなので伝統工芸というと箱根の寄せ木細工の印象が強かったんですが、これから他の伝統工芸についても勉強していきたいです。
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以上、ももいろトラディショナル第3シーズン「江戸切子」編は終了です。来週からは第4シーズンスタート。ももクロの小さな巨人、有安杏果さんが「笠間焼」に挑戦します。お楽しみに!
【第3シーズン】高城れにVS江戸切子(東京都)
第1回 粉々にならない? ももクロ・高城れにが挑む江戸切子
第2回 「江戸切子」に見た「ももクロ」長続きのヒント
第3回 ももクロと伝統工芸 共通項は「応援してくれる人」
第4回 ももクロ・高城れに あ、はみ出したところが残ってる
【第1シーズン】佐々木彩夏VS越前漆器(福井県)
【第2シーズン】玉井詩織VS万祝(千葉県)
【第4シーズン】有安杏果VS笠間焼(茨城県)
百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏で構成されるアイドルグループ。2008年5月に結成(当時のグループ名は「ももいろクローバー」)。観客数十人の路上ライブからスタートし、わずか6年で国立競技場ライブを実現。大会場のコンサートと並行して、小さな会場でのライブやユニークなイベントなども積極的に企画、ファンを驚かせ、楽しませている。
高城れに
1993年6月21日生まれ。神奈川県出身。2007年、中学2年生のときにスカウトされ、スターダストプロモーション入り。07年、ももいろクローバーの立ち上げ時から参加するグループ最年長。イメージカラーはパープル。愛称は「れにちゃん」。記事で発言していたラジオ番組は「高城れにの週末ももクロパンチ!!」(文化放送)。毎週土曜日17時から放送中。
デビュー当時のコンセプトが実は「和をモチーフにしたアイドル」だった彼女たちが、日本の伝統工芸を学ぶ連載。メンバーが伝統工芸の仕事現場を訪れ、作る過程を勉強し、実際にもの作りを体験。さらにその道で頑張っている同世代の若者と夢や目標を語り合うという詰め込みすぎな企画です。
(文 橘川有子/写真 佐藤久/ヘアメイク なかじぃ=kind/企画協力 佐々木健二=ジェイクランプ)