Let's note 20周年限定モデル 性能は究極の上
戸田覚のPC進化論
Let's noteシリーズの20周年を記念するモデルが登場した。2016年10月4日から200台限定で予約を受け付けている。歴史のあるメーカーは、こういった記念モデルを出すことがある。ちょっと特別なパソコンを入手できるのだから、ファンにとってはうれしい限りだろう。
そもそも本当の意味でのファンがいるパソコンは、もはやLet's noteくらいしか残っていないのではないだろうか? VAIOやThinkPadにも昔からのファンは少なからずいるだろうが、どちらも"変わってしまった感"が否めない。VAIOはソニー製品ではなくなり、ThinkPadもまたIBM製品ではなくなり、それぞれの製品のコンセプトも当初とはずいぶん違っている。そんな中でわが道を貫いているのがLet's noteなのだ。
最近は海外メーカーばかりが元気で、国内のパソコンメーカーに関しては暗いニュースが多い。突き抜けたコンセプトのパソコンはレノボ製かエイスース製という中で、パナソニックがこんなモデルを投入するほど元気でいてくれるのは、ちょっと胸がすく思いだ。
嫌みのないゴールドのカラーリングが魅力的だ
Let's noteシリーズは、シルバーと黒のモデルが定番だ。どちらもつやを抑え、かなり落ち着いたカラーリングになっている。ビジネス向けのモデルとしては、最も無難かつ安心して使える色味と言えるだろう。
今回の記念モデルは天板だけを特別な色にするのかと思いきや、すべてのパーツを「アニバーサリーゴールド」というオリジナルカラーでそろえてきた。銀色に近い落ち着いた金色、いわゆるシャンパンゴールドだ。しかもつやがないので嫌みを感じさせない。
ゴム足や底面のビスなどの各種パーツの色も、本体カラーに合わせてカスタマイズされている。僕が個人で所有している黒の「Let's note SZ」と比べてみると、ホイールパッドの周囲の色やキートップの色も若干違っていた。
ほとんどの人がこれを見ても限定品とは気付かないかもしれないが、Let's noteファンなら必ず分かる。ごく一部の人にはうらやましがられるはずだ。なお、50枚限定で七宝柄の天板も用意されたのだが、そちらはすでに売り切れになっている。
末長く使うのにはベストなモデルだ
Let's note SZは約30万円と、最近のパソコンとしてはとても高いが、長く使い続けられることは間違いない。このモデルが登場したのは2015年の秋なので、すでに登場後1年ほど経過しているわけだが、それでもこのSZで記念モデルを投入してきたことを考えると、Let's noteシリーズのフラッグシップモデルとして今後も販売を続けるのだろう。フルモデルチェンジは相当先になりそうだ。
この1年ほどLet's note SZを使い続けてきた僕が感じるのは、やっぱり無骨なことだ。極薄パソコンが次々と登場する中で、今や異質とさえ言える分厚いボディーは、かばんの中でも場所を取る。しかし、この分厚いボディーだからこそ壊れにくく、長く使えるのだ。
キーストロークは2mm確保されており、非常に打ちやすい。キーパッドの手前が低くなっているのも打ちやすさにつながっている。性能は文句なしで、冷却性能にも優れているのだから素晴らしい。
究極の上を行く性能は10年使うため
20周年記念モデルの最大の特徴は、処理性能のすごさだ。CPUは第7世代のCore i7だが、それは驚くほどのことではない。このモデルがすごいのは、16GBのメモリーに加え、1TBのSSDを2基搭載していることだ。
ワードで文書を作ったりメールやウェブサイトをチェックしたりする程度のユーザーでは持て余すほどのスペックだが、4Kビデオの編集など、データの保存容量を食う作業をする人にはうれしい。16GBのメモリーも、ビデオ編集でもしないと生かし切れないだろう。
そこまでしないという人でも、大容量ハードディスクを搭載したデスクトップの代替として使うことができる。自宅や会社では外付けモニターとキーボードをつないで大画面で使用し、外出するときはそのまま取り外して持ち歩ける。この処理性能なら、下手なデスクトップよりも間違いなく高速だ。
普通に使うだけなら、こんなモデルはオーバースペックだという意見はあるだろう。いや、事実オーバースペックだ。しかし、今後10年使うと考えると妥当だとも思う。パソコンの平均利用年数は6~7年といわれているが、このモデルなら10年は使えるだろう。もちろん、今後10年間にハードウエアを刷新するような、新しいアプリケーションでも出てくれば話は別だが……。
そう考えたとき、ちょっと残念に思うのが、USB-C端子を搭載していないことだ。スマートフォンの端子がどんどんUSB-Cに変わりつつあり、パソコンにもUSB-C端子搭載モデルが増えている。10年先を見越すなら、1基だけでも搭載してほしかった。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
[日経トレンディネット 2016年11月1日付の記事を再構成]
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