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KISSジーン・シモンズが教える 音楽で成功する秘訣

日経エンタテインメント!

2016/10/27

 歌舞伎のくま取りを思わせる派手なフェイスペイントに、火を噴き、血を吐く派手なパフォーマンスで知られる米国の4人組ハードロック・バンドKISS(キッス)。その創設メンバーで、実業家としても活躍するジーン・シモンズが来日。デビューから42年の長きにわたって音楽業界の第一線で活躍を続けられている秘訣や、これから展開を考えている新ビジネスについて語ってくれた。音楽編とビジネス編の2回に分けて掲載する。

 KISSは1973年、ジーン・シモンズ(ベース、ボーカル)とポール・スタンレー(ギター、ボーカル)を中心に結成。翌年にレコード・デビューし、メンバーを交代しながら活動を継続。これまでに発売したシングル、アルバムの総売り上げは1億3000万枚を超え、2015年には「最もゴールドディスクを獲得した米アーティスト」に認定された。15年の来日公演では、ももいろクローバーZとの共演も話題になった。

■火を噴き続けるにはプライドが必要

――KISSと言えば、火を噴くパフォーマンスですよね。あなたは今年67歳ですが、「70歳になったらやめる」という発言もあったように思います。本当にやめるのですか。また、今まで続けられた理由は何ですか。

ジーン・シモンズは左端。右から2番目が、創設メンバーでギター、ボーカルのポール・スタンレー

 やめないよ! 棺桶(かんおけ)からでも火を噴いてやるさ!これまで続けてきたのは、「プライド」があるからさ。例えば、靴職人は1人ひとりの足に合った靴を作ろうとする。他の誰もが認めてくれなかったとしても、自分が認めるクオリティーに達するまで、その追求の手を止めない。

 同じように、火を噴くパフォーマンスだって、誰が認めなくても自分のプライドのために続けるだろう。ステージでワイヤーに乗って飛ぶ際には、安全ネットがないから、ひとつミスをすれば大けがをしてしまう。火を噴くにしても、ガソリンに近い液体を口に含んだ際に、一度だけ間違えて飲み込んだことがあって、心臓停止まであと2時間という危険な状態にもさらされた。しかも、炎は自分に戻ってくるから、熱いし危険だ。

 それでも続ける理由は、プライドだ。命懸けで、プライドを持ってやっているんだ。

――なぜ、そこまでしてKISSというロックバンドの活動を続けているのですか。

 バンドでの活動には、他のどこでも味わえない充足感があったからだ。バンドでデビューする前は、小学校の教員として働いたが、学校で教えることは人生においてあまり役に立たないと感じていた。高校時代に受けた授業を思い出せば分かるだろう。君が今就いている仕事の役に立っているだろうか?

 教員の他にも様々な仕事をしていたが、すべての仕事を通して思うのは、ロックは成功するもしないも全部、自分の責任だということだ。つまり、自分が努力すれば成功しうるチャンスがある。例えば、米国でロックバンドとして成功するためには、英語を習得しなければならないが、その言語習得に時間がかかるとか、環境に恵まれないとか、何かのせいにしても無駄だ。

 成功するための秘訣は、ひと言でいえば「ハードワーク」につきる。特に今は、インターネットで無料で多くの情報が公開されている時代だからね。自分を教育しない言い訳はないだろう。KISSは米国において最多ゴールドディスク獲得アーティストだが、そうなるまでには並々ならぬハードワーキングがあったということだ。

■大事なのは個人ではなくチームだ

――結成以来40年以上の間、解散することなく、音楽業界で成功し続けているのは驚異的です。長く活動を続ける上で、大事にしていることは何ですか。

10月13~31日、東京・ラフォーレミュージアム原宿で開催される「KISS EXPO TOKYO 2016 ~地獄の博覧会~」にあわせて来日。インタビューに答えてくれたジーン・シモンズ。身長185センチの巨漢である

 私が最も大切にしているのは、メンバー個人の力量ではなく、チームだ。四輪の普通自動車のタイヤがひとつでもパンクしていたら、動かないだろう。もしチームの成功のために努力できないという人がいるなら、早く辞めてほしいとすら思う。

 KISSのメンバー交代は11回ある。AC/DCみたいにもっとメンバー交代しているロックバンドもいるし、長年成功し続けているバンドはほかにもいる。あるいはフットボールチーム、野球チームもそうだ。チャンピオンシップをかけた世界中の競技チームは、何回もメンバーチェンジをするものだ。オリンピックに至っては、金メダルを獲得するために毎回メンバーチェンジをしているじゃないか。

――メンバーが代わっても、KISSというチームは不変だということですね。ただ、メンバーの力を引き出したり、適材適所で使う、監督やコーチの役割も大事だと思いますが。

 いや、私はメンバーのほうがより大事だと思っている。大統領だろうがジーン・シモンズだろうが、どんな人物がリーダーだとしても、現場の人々がちゃんと機能していなければ意味がない。1871年にシカゴ大火災があったが、あれは現場で火を消す人々がいなかったがために、ちょっとした火事が大惨事になってしまったのだから。

■ロックスターは傷つきやすくデリケート

──プライド、ハードワーク、チームというキーワードは、ビジネスの世界で成功するためにも必要なことです。世間で思われているような、自由奔放だったり、わがまま放題だったりするロックスターやバンドのイメージとは離れていて、意外な気もします。

 世界的なロックスターとなれば、金でも友達でも名誉でも、何でも手に入るとイメージする人も多いだろう。ところが実際には、とても傷つきやすくて、デリケートな部分があるものだ。ただ、ステージでパフォーマンスをするロックスターとしては、観客に楽しんでもらうためにも、そんな弱い部分は隠さなければいけない。ステージにいる私にしても、スペクタクルでとても強いが、それは鎧(よろい)を着ているようなものだ。こうしたインタビューでサングラスをかけることだってファッションとしてクールに見せるためではなく、実は鎧なんだよ。

ジーン・シモンズ 米ロックバンドKISSのベーシスト、ボーカリスト
 1949年イスラエル・ハイファ生まれ。ナチスの強制収容所を生き抜いた母親のフローレンスさんと共に1958年に米国に移住。当初は英語がまったく話せず、経済的にも厳しかったが、厳しい学校生活やテレビ、マンガを通じて話せるようになった。やがてポップカルチャーに精通するようになり、ビートルズに憧れて、学生時代に音楽活動を始める。1973年にギタリスト、ボーカリストのポール・スタンレーとKISSを結成し翌年デビュー。ド派手なステージパフォーマンスを繰り広げながら、現在まで活動を継続。これまでに発売したシングル、アルバムの総売り上げは1億3000万枚を超える。実業家としても知られ、キャラクタービジネス、ブランドビジネスの可能性にいち早く気づき、ライセンス商品、権利管理、分配などを自ら担当。音楽関連以外にも自己レーベル「シモンズ・レコード」、ファッションブランド「Moneybag(マネーバッグ)」、ブランドマーケティング会社「シモンズ・アブラムソン・マーケティング」など数々の事業を手がけている。10月13~31日東京・ラフォーレミュージアム原宿で開催される「KISS EXPO TOKYO 2016 ~地獄の博覧会~」にあわせて来日した。

(ライター 山田真弓)

明日は、日本文化への思いや新しい事業構想を語るビジネス編を掲載します

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