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「におわないブリ」から生まれたウナギ味のナマズ

日経トレンディ

2016/10/30

近大ナマズ。ウナギそっくりのかば焼きだ
日経トレンディ

2014年、ニホンウナギが絶滅の恐れがある野生生物のレッドリストに加えられた。絶滅を防ぐべくウナギの完全養殖の研究が進むが、それとは180度異なる発想でウナギを救う道を切り開くのが、近畿大学世界経済研究所教授の有路昌彦氏が開発した「ウナギ味のナマズ」だ。「人がウナギのかば焼きに求めるのは、香ばしく焼いた脂乗りのいい魚肉と甘辛いタレ。その味を他の養殖魚で実現すればいいと思い立った」(有路氏)

有路氏の専門は、生物資源の経済学。実家が養殖業を営んでいたこともあり、水産資源には特に愛情がある

理想に近かったのは、同じ川魚のナマズ。だが養殖ナマズには、独特の泥臭さが付きものだ。解決のカギを握るのが、有路氏が07年頃から海外で売れる養殖魚として開発していた「におわないブリ」だった。

「開発当初は、多くの人に『においをなくしたらブリでなくなる』と猛反対されたが、納豆もにおいの少ないタイプがヒットした。最大公約数を取るには、においがないものが必要だという確信があった」(有路氏)

まず重要なのは、餌。においのもととなる魚粉を減らして植物性たんぱく質を増やし、消臭効果のある緑茶も入れた。さらに養殖場の水質を管理するシステムや、冷凍加工時の切り身表面の菌繁殖を抑えるフィルムを専門企業に頼んだ。さまざまな企業との連携により、においが少ない「近大ブリ」が誕生。サワラや銀ムツなどの高級魚で作る西京焼きをこのブリに応用したところ、コストが安いのに風味の良い商品が生まれた。

近大ブリ。“最強”の西京焼き

この近大ブリで培ったにおわない養殖技術をナマズに応用し、15年に完成。実際にかば焼きに加工されたフィレを食べてみると、皮の食感とタレの香ばしさがウナギのかば焼きに似ている。身の食感はサバなどの魚に近く、脂が乗っていてご飯が進む。

ウナギ味のナマズの養殖は、鹿児島や和歌山の養殖業者に依頼
におわない魚が育つ餌

16年6月には格安航空会社大手、ピーチの機内食に導入され、7月から全国のイオンで限定販売が始まったという、スピード感のある事業化も特徴的だ。「早い段階から企業との連携を進めたことが功を奏した。大学が持たないリソースは外部にある」(有路氏)。近大における大学教授の役割は、基礎研究に没頭するだけではない。企業力を結集する「プロジェクトリーダー」でもあるのだ。

7月、「近大ナマズ」がイオンで限定販売された。価格は税込み1598円だったが、今後価格は下がる予定

■近大発はほかにもいろいろ

有名な近大マグロは60年の歴史がある近畿大学水産研究所が、02年、困難とされたクロマグロの完全養殖に成功したもの。03年にベンチャー「アーマリン近大」を設立。現在は量産化に向けた研究が進む。

「全身トロ」と称される近大マグロ
近大サプリ ブルーヘスペロンキンダイ 青みかん

「ア・ファーマ近大」は薬学部など複数学部が連携したプロジェクトの知見を生かし、04年に設立。早摘みした「青みかん」に抗アレルギー作用のある成分が多いことを突き止め、サプリメントに応用した。

近大マグロの成功以降、「近大」の冠が付いた食品や日用品が企業との共同開発で次々に誕生している。企業から熱い視線が注がれる近大のアイデアから、次のベンチャーが誕生しそうだ。

「近の鶏卵」。薬学部と町工場がコラボ。通常の卵よりコレステロールを20%低減
「近大マンゴー」。近畿大学附属農場で誕生した新品種「愛紅」。高級果物として千疋屋総本店で販売

(日経トレンディ編集部、写真 中本浩平)

[日経トレンディ2016年11月号の記事を再構成]

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