セレナ、ベンツ、テスラ…自動運転1800km実走テスト

日経トレンディ

高速道路での自動運転に対応した日産自動車の「セレナ」(写真は山本琢磨、以下同)
高速道路での自動運転に対応した日産自動車の「セレナ」(写真は山本琢磨、以下同)
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「自動運転」が、いよいよ現実のものになってきた。2016年に入って発売された日産自動車の新型「セレナ」など4車種は、運転者がハンドルを持って前方を注視し、周囲に気を配る必要があるという条件付きながら、クルマが自動でハンドルやアクセル、ブレーキを制御して走る。

自動運転とひと言で言っても、実は4つの段階がある。16年発売のクルマに搭載された技術は、4段階の「レベル2」に相当する。市街地を含む一般道ではまだ十分に機能しないものの、緩やかなカーブが中心の高速道路では、緊急時を除けばハンドルやアクセル、ブレーキの操作をある程度はクルマ任せにできるものだ。ウインカーレバーの操作だけで自動的に車線変更したり、簡単な操作で駐車場の空きスペースに自動的に入れたりする機能を備えたクルマもある。

自動運転のレベル1~2。現在の市販車のレベル
自動運転のレベル3~4

レベル2相当のクルマは、実際にはどこまで自動運転を達成できているのか。メーカー間で差はないのか。日産セレナを筆頭に、アウディ A4、メルセデス・ベンツEクラス、テスラ モデルSの4台の「自動運転」を徹底チェック。計約1800kmを走破した結果を明らかにする。

東名・小田厚~箱根・一般道・首都高で検証

実力を確かめるために、4つの舞台を選んだ。

まず1つ目が、東名高速道路の東京~厚木。片側3車線の非常に緩やかなカーブが続く約35kmのルートで、自動運転の基本的な実力を試した。そこから片側2車線の有料道路・小田原厚木道路を通り、山道を含む一般道での実力を見るために神奈川県の箱根に向かった。これが2つ目の舞台だ。そして3つ目が、交通量があり信号と交差点も多い、東京都心の一般道。最後に、急カーブが続くため自動運転にとって最も過酷ともいえる、東京都内の首都高速道路を走った。4車種で走った距離は合わせて約1800kmに達した。

「レベル2」の自動運転に対応した4車種を、高速道路から一般道まで約1800km走って試した

同じレベル2の自動運転技術とはいえ、4車種が搭載するハードウエアの性能と、できる機能には違いがある。

車線や先行車などの認識は、すべて1台のカメラで賄う。レーダーは用いない

8月に発売されたばかりの日産セレナは、カメラ1台だけで先行車と車線の両方を識別する。一般的に先行車の認識には高価なミリ波レーダーを複数使うので、セレナの技術はコストダウンを狙った“簡易版”と言っていい。日産の技術者は「法定速度の上限が時速100kmの日本国内なら、すべて1台のカメラだけで賄える技術水準に達した」と説明する。これは画像解析ソフトウエアと半導体の進化によるもので、セレナが日本専用モデルだからできた割り切りだ。

カメラ1台で車線を認識し、それに複数のミリ波レーダーなどを組み合わせたのが、アウディ A4とテスラ モデルS。メルセデス・ベンツのEクラスは、ミリ波レーダーに加えてカメラ2台を用いることで、車線の認識精度を高めたという。

アウディA4は車線の認識などに使うカメラ1台をフロントガラス上部に備える
アウディA4は前部バンパー左右などに計5個のミリ波レーダーを装備

新幹線がレールを走る感覚

これら4車種を最初の舞台である東名高速で走らせた。明らかに優れていたのは、Eクラスとテスラ。いずれも車線の中央をきっちりと維持し続け、まるで新幹線がレールの上を走り続けているかのようだった。次に秀でていたのが、意外なことに簡易技術のセレナ。カメラ1台だけを使っているためか、やや精度が甘い点も見受けられたが、緩やかなカーブでもきちんと車線の真ん中を走り続けた。

メルセデス・ベンツのEクラスは 自動運転では車線の中央にレールでも引いたかのように、直線もカーブも安定して走行した

これらに一歩譲ったのが、アウディ A4だ。カメラ1台とミリ波レーダーの組み合わせはテスラと同様だが、ハンドルに軽く手を添えて走る状態だと、ほぼ直線でも左右に僅かにふらつく。カーブではハンドルの切れ角が十分ではなく、外側に膨らんでしまった。左右へのふらつきは、ハンドルをしっかり握って前方を注視していれば抑えられたので、運転者によるハンドル操作を促すための意図的な動きの可能性もある。だが、「自動運転」を期待するのなら、運転をクルマ任せにするのはやや不安になるだろう。

箱根に向かうために東名高速を厚木インターで降り、小田原厚木道路に舞台を移す。片側2車線で緩やかなカーブとアップダウンが続くルートだが、東名高速で受けた印象は大きくは変わらなかった。

箱根で一般道を走らせると、ここで実力に差が出始めた。交差点のない区間ではEクラスとテスラ、アウディ A4がほぼ横並び。交通量が少なければ車線を認識して中央を維持して走る。渋滞ではアクセルとブレーキを自動制御しながら、先行車と一定の距離を保ち続けた。ちなみに、どの車種も赤信号まで識別して止まるわけではない。

セレナは自動運転中はハンドルのアイコンが緑に点灯する。一般道では作動しないようになっている

一方、そもそも一般道では自動運転しないようになっているのが、セレナだ。これは「自動運転技術としての信頼性を担保する意味もあり、長距離運転の負荷軽減にターゲットを絞り込んだ」(日産)のが理由。カメラで捉えた歩行者や看板などを識別し、一般道ならハンドルの自動制御がオンにならない設計にしてあるという。

テスラは低速なら山道も上った

さらに山道へと進むと、やや渋滞していて速度が遅い場面に限ってだが、テスラが先行車に追従しながら急なカーブでもハンドルを自動で切り、ぐいぐいと上っていった。なお、他の3車種はアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)による先行車への追従こそ利くものの、ハンドル制御はオンにならなかった。これは車線の認識精度の優劣というよりも、どこまでクルマ任せにできるかという考え方の違いだと感じられた。米西海岸のベンチャーと、歴史ある自動車メーカーの設計思想の違いが見えたようで興味深かった。

次なる舞台は東京都心の一般道。都心は信号と交差点が続くので、どうしても路面の線が途切れがちになる。このため、一般道に対応しないセレナを除く3車種は、いずれも交差点を通過するたびにハンドル制御がオフになることが多かった。全般的に車線の認識率は低く、まだ現段階では一般道での自動運転は実用的ではなさそうだ。その点で、セレナが一般道での自動運転を“諦めた”のは、自動運転に対する一般ユーザーの信頼感を育てるという意味で“正解”だったのかもしれない。

Eクラスは車線などを識別するカメラを2台装備して精度を向上
2種のミリ波レーダーを用いて先行車を認識する

実用的とはいえないまでも、健闘したのはEクラス。自動運転中に路面の線を識別できない場面でも、先行車やガードレールを認識してハンドル制御を続ける機能が奏功したようだ。時間の関係でテスラは都心をほとんど走れなかったが、Eクラスと同等の性能を発揮していたように思えた。なお、ACCによる先行車への追従に関しては、4車種で大きな差は感じられなかった。

最後の舞台は首都高速。なかでも、急なカーブが続く最難関の環状線で試した。ここで意外な実力を発揮したのがセレナだった。主に渋滞などでゆっくり走っている限りは、それなりにきついカーブでも自動で走れた。Eクラスとアウディ A4がほとんど車線を認識できなかったのとは、大きな差が出る結果となった。これは日産が国内の高速道路を徹底研究し、「車線を区切る多種多様な線を認識できるようにした」(同社の技術者)ことが功を奏したとみられる。

セレナは時速60km以下なら大半の線を認識し、さほど急でないカーブではハンドルも切られた

セレナは車高があるミニバンという特性上、一定速度以上でカーブを曲がると車体が大きく傾きやすい。このため、横に加速度がかかって車体が傾くと、安全のためにハンドル制御が一時的にオフになる。車高が低いセダンやコンパクトカーなら、カーブをより速いスピードで曲がりやすくなるので、かなりの実力を発揮しそうだ。

これらの走行結果から総合的に判断すると、現時点で優れた「自動運転車」といえるのは、高速での自動走行の安定感が高く、車線の認識精度に秀でていたEクラス。これに並ぶのが、高速で十分に安定して車線を維持し続け、都市高速の渋滞でも威力を発揮したセレナだ。カメラ1台だけでほぼ自動運転を可能にし、コストを抑えて普及価格帯のクルマに載せたことを考えても、高く評価していいだろう。

テスラは今回のテストでは時間の制約があり、都市高速や都心の市街地を十分に検証できなかったので選外としたが、Eクラスと同等かそれ以上の実力があると見てよさそうだ。ただし、クルマの走行性能がスポーツカー並みに高いこともあってか、思った以上に速いスピードでハンドルを切りながらカーブに入る場面があった。実際は安全だとしても、人によっては不安を覚えるかもしれない。現時点では万人向きとまではいえず、最新テクノロジーを楽しみたい人に向きそうだ。

セレナ:高速限定だが、かなり実用的な水準


一般的な自動運転技術は先行車の認識にミリ波レーダーを使うのに対し、セレナの「プロパイロット」はカメラ1台で車線の認識も含めすべてこなす。これによりコストを下げ、普及価格帯のミニバンに搭載できたという。ただし、オプション価格は他の装備とセットで約24万円なので、“簡易型”の割に値が張る。一般道での自動運転は現状の技術ではハードルが高く、コストもかかることから、ハンドルの自動制御をオンにできる範囲を高速道路に絞るなど、割り切った仕様ではある。


●車両本体価格:243万5400~385万200円(税込み)
●サイズ・重さ:全長4690×全幅1695×全高1865mm・1680kg
●エンジン:直列4気筒DOHC、1997cc
●最高出力・最大トルク:エンジン110kW(150ps)/6000rpm・200Nm(20.4kgm)/4400rpm、ハイブリッド用モーター装備
●JC08モード燃費:16.6km/l

アウディA4:車線維持の精度では一歩譲る


市販車としてはテスラ モデルSに続いて2番目に「レベル2」の自動運転に対応した。車線の認識はカメラ1台で、先行車の追従にはミリ波レーダーなどを使う。渋滞時など時速65km以下で動作する「トラフィックジャムアシスト機能」と、それ以上の速度に対応する「アクティブレーンアシスト」が備わるが、これらは継ぎ目なく切り替わる。このため、実質的に全速度域でハンドル制御も含む自動運転に対応している。


●車両本体価格:518万~624万円(税込み)
●サイズ・重さ:全長4735×全幅1840×全高1430mm・1540kg
●エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1984cc
●最高出力・最大トルク:エンジン140kW(190ps)/4200~6000rpm・320Nm(32.6kgm)/1450~4200rpm
●JC08モード燃費:18.4km/l

Eクラス:精度の高い自動化を実感できる


今回テストした「レベル2」に対応する4車種で唯一、車線認識に2台のカメラを用いて車線の中央を維持する精度を高めている。さらに、路面の線を認識できない場面は先行車に追従したり、ガードレールを識別したりすることで、自動運転を継続する。車線変更や駐車の自動化にも対応しているなど、現時点で自動化できる機能が、テスラと同様にほぼ全面的に搭載された一台だ。


●車両本体価格:675万~988万円(税込み)
●サイズ・重さ:全長4930×全幅1850×全高1455mm・1670kg
●エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1991cc
●最高出力・最大トルク:エンジン135kW(184ps)/5500rpm・300Nm(30.6kgm)/1200~4000rpm
●JC08モード燃費:14.7km/l

テスラ モデルS:多くの場面で積極的に自動走行


市販車で初めて「レベル2」の自動運転を達成し、技術的に最も先進的な部類に入る。自動運転にはカメラ1台とミリ波レーダーを主に使う。高速道路では安定して車線の中央を維持し、一般道でも低速ならきついカーブも自動で曲がる。車線変更はレバー操作から間を置かずにすっと横に移動し、駐車の自動化にも対応。慎重な他社と比べて、より多くを積極的に自動化した点は評価できるが、人によっては行きすぎに感じる可能性も。


●車両本体価格:798万~1623万8000円(税込み)
●サイズ・重さ:全長4979×全幅1950×全高1435mm・2100kg
●モーター最高出力・最大トルク:225kW(302ps)/5000~8000rpm・430Nm(43.8kgm)/0~5000rpm
●バッテリー容量:60kWh
●走行可能距離/最大400km

結論:安定感のEクラス、高速特化ならセレナ

一般道での自動運転は、全体的にまだ実用レベルに達していない印象。そのなかで優れるのは、高速道路での安定感が際立ったEクラスと、都市高速でも速度を落とせば実用的なセレナ。セレナは簡易型技術ながら高速道路で十分に安定して自動走行するなど、コストパフォーマンスが良い。アウディA4は認識精度や安定感で一歩譲った。テスラは都市高速や都心の一般道で十分に検証できず選外とした。

(日経トレンディ編集部)

[日経トレンディ2016年11月号の記事を再構成]

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