本物の優秀なマネジャーには思いやりがあるハワード・ビーハー著「スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則」

殺されたのは「私の子供たち」だった

目標達成には、今まで「ロマンがなくなるから」と最高経営責任者(CEO)、ハワード・シュルツが忌み嫌っていた半自動のエスプレッソマシンの導入も貢献しました。CEOの意見にもかかわらずマシンを導入したのは、毎日大量のコーヒーを提供するために、スタッフの多くが手首の痛みやしびれを訴えていたことなどが理由です。

私たちはどうも、厳格で、感情をあらわさず、物事に動じないタフなビジネスマンを賞賛(しょうさん)する傾向があるようだ。思いやりは人間に備わったもっとも強力な資質なのに、それを最大限に活用するリーダーは正当に評価されないし、昇進もしない。偉大なマネジャーと普通のマネジャーの違いは、本物の優秀なマネジャーにも思いやりがあるということを理解しているかどうかだ。
(107ページ 「信頼を築く」より)

企業が人材募集の際に用意するパンフレットには、必ずといっていいほど、「人を大切にする」ことが、自社の哲学としてあげられています。にもかかわらず、実際は正反対の行動をとっていることが多いと、著者は指摘します。「危機」という難しい判断を求められる状況でも、スターバックスが人を大切にし、思いやりのある行動をとることができた例として、著者はある事件について述べます。

1997年7月、ワシントンDCの店舗で、3人の若いパートナー(従業員)が銃撃されて殺害されるという事件が起きました。「殺されたのは『私の子供たち』だったし、実際私の本当の子供たちだったかもしれないのだ」と著者は当時の心境を語っています。CEOのシュルツ氏はその時、偶然にも東海岸に滞在していて、銃撃から数時間後にはワシントンDCに到着することができました。そして、被害者の家族、他のパートナーたちと過ごし、悲しみを分かち合ったのです。

「人間らしく」行動する大切さ

スターバックスで私たちがしたことはごく単純だった。私たちは人間だ。悲しいくらい、どうしようもなく、不完全な人間なのである。なによりもまず人間だ。オフィスに閉じこもって世界中の痛みや暴力から目をそむけるわけにはいかない。ビジネスは「ただのビジネスだよ」と簡単に割り切れるようなものではない。心と身体を切り離すことはできない。
(198ページ 「困難に立ち向かう」より)

危機に直面すると、人は機械的な反応に陥りがちです。しかし、緊急事態マニュアルに頼ることも、代弁者の陰に隠れることもなく、まず人間らしく行動したシュルツ氏の行動を、著者は「なにがあろうとも守るべき原則を社内外に示した大切な瞬間だった。人を第一に考えることだ」と称賛します。

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