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ロンドンと東京、ファッションも価値観もこんなに違う kay me 毛見純子のロンドン起業挑戦記(第3回)

2016/10/18

 こんにちは。kay me(ケイミー) ファウンダー兼リードデザイナーの毛見純子です。

 kay me は2011年に私が立ち上げた「一瞬で華やか ずっとラク」をコンセプトとした働く女性のための仕事服ブランドです。創業から5年、この夏から本格的に英国ロンドンに活動拠点を移し、海外展開を始めています。

 第3回の今回は、ロンドンファッションと東京ファッションの違いについて感じることをリポートしたいと思います。

■「右向け右!」が通用しないロンドン

 ロンドンに来て、まず感じるのは、ここに住み働いている人たちがまさに世界中から集まっているということ。中東、東欧、アフリカ、南米、アジア(特に中国とインド)、北米……。そのため、着ている服のテイストもバラバラ。エリアだけでなく国ごとにも服装のテイストは違うようです。例えば、日本で見かける東アジア圏からの人でも、中国の方か、韓国の方か、日本人なのか服装によってだいたい見分けることができませんか?

 人が身に着けているファッションは、その国のファッション業界が提供するテイストやトレンド、品質を知らず知らずのうちに標準にしています。これは意外と自覚されていません。食の好みと同じで、大人になって急に違うテイストの服装が大好きになるということもなかなかないのではと感じます。ロンドンは、一つのトレンドがファッション全体に影響を与えるというのがとても難しい都市だと思います。

 一方、東京に住んでいると季節ごとのファッションのトレンドを道行く女性から感じとることができます。おそらくパリやミラノやニューヨークのデザイナーズブランドのトレンドから、ファッション業界(メーカーやプレス)が日本に受け入れやすいトレンドを決めて投下しているからでしょう。昨今ではガウチョパンツやチェスターコートなどがすぐ思い浮かびます。そして、トレンドアイテムを毎シーズン買う経済力もまだまだあるし、自己主張よりも周囲と同じであることを重視する日本では、ファッショントレンドの「右向け右」が非常に通りやすい素地をもともと持っているのでしょう。

 余談ですが、ロンドンのファッション雑誌はそもそも日本ほど対象セグメント(年齢や職業、経済的背景など)によって細かく分けられていません。内容も、日本のようにトレンドファッションの1週間コーディネートといった類いはほぼなく、どちらかというとセレブリティーへのインタビューやゴシップなど「人物」にフォーカスしたページの割合が多いように感じます。

ロンドンで開催したkay me期間限定サロンの様子

■「好ましく見える」の考え方が違う

 次に、ロンドンでは人々の出身国や人種がさまざまなことから、当然体形もさまざまです。肌感覚ではありますが、道行く人の9割以上が、男女ともに平均的な日本人よりも骨格や筋肉の付き方がしっかりしているように感じます。日本人はとてもきゃしゃで小さいので幼く見られることが多いというのはよく聞きます。

 それでも日本の女性は、体形をとても気にします。おなかが出て見えないか、胸元が露出しすぎてないか、足を出しすぎてないか、二の腕が太く見えないか……などなど。これは日本女性なりの美意識もありますが、隠れているほうが好ましく思われる、ちらっとだけ見せるほうがセクシーという価値観も根底にあるように思います。

 一方、ロンドンではボディーの形そのものを堂々と表現するほうがセクシーという考え方のよう。おそらく男性もそれをめでる傾向があるからではと思いますが、日本よりタイトフィットなデザインが多いのです。決してスリムとはいかなくても、おなか回りもタイトに見せ、パンツも脚の形がはっきりわかるスパッツのようなデザインが多い。胸元は大きく開いていて、スカートは膝上丈、袖丈は二の腕を隠そうとはしていません。

 セクシーの概念の違いは根底にありますが、それに加えて、ロンドンの女性の多くは日本人に比べて他人の目を気にしていない、という印象を受けます。

 ファッションの傾向を分析するだけでも、民族の持つ価値観や美意識などが浮かび上がってくるようですね。何か新しい価値を創造するには、まず自らを知ることが大事。視界をグローバルに持って、可能な限り自らを相対化させることからはじめたいですね。

ロンドンのオフィス街の至るところに「プロテインショップ」を見かけます。女性客も多い!
ロンドンの有名百貨店セルフリッジで見つけたカップ。確かに!

 前回のコラムでも述べたように、ロンドンでは日本人や日本のベンチャー企業の存在感は残念ながら大きいとはいえません。ただ、一つの流行だけで市場を席巻できないということは、逆に「いろいろな選択肢でチャレンジしがいがある」、「日本と異なる『好み』はしっかりローカライズする(現地の人を巻き込むのが一つのポイントでしょう)」。このあたりがロンドンにおける事業成功のポイントかもしれません。ぜひ、こうした感覚を生かして存在感を高めていきたいですね。

 最後に裏話です。「ロンドンにおける希少な日本人起業家」ということで、メディアからの取材依頼も日本よりさらに多い印象があります。興味を持っていただけているのはありがたいことです。先日は英国放送協会(BBC)の人気番組(生放送!)でkay me を特集していただきました。打ち合わせも台本もなく、英語でのインタビューという環境で私にとっても大変エキサイティングな経験となりました。ブランドだけでなく日本の良さもうまく伝わっているとうれしいと思います。

英国放送協会(BBC)の人気番組に出演させていただきました

 次回は早くも最終回です。どうぞお楽しみに。

毛見純子(けみ・じゅんこ)
 kay me 株式会社代表取締役。早稲田大学第一文学部卒業後。ベネッセコーポレーションでの営業職、PwC、ボストンコンサルティンググループでの経営戦略コンサルタントを経て、2008年にマーケティングコンサルティング会社設立。自らの経験とマーケティングメソッドを生かし、2011年「一瞬で華やか ずっとラク」をコンセプトとしたキャリア女性向け日本製ストレッチ素材アパレルブランド「kay me」を創業。2015年英国法人を設立し欧米を中心とした海外展開を開始。オンラインショップのほか、銀座、新宿、日本橋、梅田、羽田空港、ロンドンにて店舗展開。2015年英国商工会議所が選出する「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」受賞、2016年日本政策投資銀行「DBJ女性起業大賞」受賞。

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