役職定年を含む降格や、望まない人事異動、あるいは納得できない人事考課など、ある日突然、「自分はこれだけやってきたのに、なぜ会社は評価してくれないのか?」という事態が起こる。何度かのみ込もうとしても、どうしても自己評価とのズレが解消しなかった瞬間、静かな怒りが会社を去る決断に火をつけるというケースです。会社と自分の評価のズレは20代の頃から何度も経験し、そのたびにのみ込んで収めてきたはずなのですが、心の沸点を超えた瞬間に収めきれなくなり、アクションが始まります。

会社側から見ると、個人のパフォーマンス評価以外に、若手の登用による活性化や幹部人材の選別、適正な人材代謝など、組織強化のための複合的な判断をしなければいけないという事情もあるので、この評価ギャップは収めようがなく、強い慰留もないままに退職が決定的になっていきます。

2.環境変化型 ~倒産・業績悪化、M&A、経営者の交代

「20年やってきて骨をうずめるつもりで働いていた会社ですが、顧客志向の変化とカジュアル化、低価格化の流れで、会社の業績悪化が止まらず、希望退職制度があるうちにと思い、やむなく退職を決めました」(42歳・百貨店・東京)

「外資系企業の傘下に入ったことで経営方針が一転し、私個人としてはこれまでの顧客に心苦しい対応を迫られることが増えた。合理的な経営は理解できるが自分にはどうしても合わないので、これまでの競合も含めて行き先を探しています」(44歳・建築設計・施工会社・大阪)

景況感がいいといわれている昨今の環境下でも、業種や企業によっては、静かな地殻変動が続いており、会社を取り巻く環境が変わって転職を考えることになる人は意外に多いのが実態です。インタビューの最初は「人間関係に少し悩んでいて……」という人の本音を探っていくと、このパターンだったということもよくあります。全体の中で42.3%の方々がこの退職理由に該当しています。

倒産や業績悪化、M&A(合併・買収)などは、課長クラスとはいえ、ー従業員としてはどうしようもない不可避の事態であり、それがゆえに「今回初めて転職する」というビギナー比率も高くなります。早期退職制度で退職金積み増しなどがあり、転職先を決めずに会社を辞めてしまう方も多いのですが、40代の転職活動は長期化することも多く、結果として離職期間が長引き、さらに転職活動が不利になることも多いので、できれば、在職中に行き先を見つけておくことをおすすめしています。

3.プライベート型 ~親の介護、疾病・メンタル

「父親が倒れて入院したのをきっかけに母親が認知症に。地元に兄弟もおらず、長男である自分が会社を辞めて故郷の実家で世話をすることになった」(47歳・金融コンサルタント・東京)

「課長になったころから次の出世レースに勝ち残るために、会社からのプレッシャーを背負い込んで頑張りすぎました。結果的に心身ともに疲れ果てて、うつ病になり休職することに。会社は休職扱いとしてくれましたが、さすがに申し訳なく、昨年自主退職しました」(40歳・求人系広告代理店・愛知)

40代・課長職で退職する方の14.6%が、このプライベート型に相当する理由です。社内での評価も、人間関係も、業績的にも順調に見えて、ある日突然、自分や家族を襲う「病」という壁。人間であるがゆえに避けられないことですが、ご本人としては非常に不本意で、不完全燃焼感も高い辞め方といえると思います。

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