アンジャッシュ・渡部建さん「ネタ作りに父の影響」
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回はタレントの渡部建さんだ。
――東京の西部、八王子市のご出身ですね。
「八王子の山の中で育ちました。家のまわりにはカブトムシがいて、子どもの頃は虫を捕ったり、ツツジの花の蜜を吸ったりして遊んでいました。近所の空き地にはツクシがたくさん生えていました。母親がそのツクシを採ってきて、しょうゆで甘辛く煮た料理をよく食べていました」
――お母さんは料理が得意なんですね。
「家での料理はすべて手作り。おやつもクッキーやバナナケーキを焼いていました。今思えばありがたいんですが、飲み物も炭酸飲料は禁止で手作りのプルーンジュースとか。友達の家で市販のお菓子を食べるのが楽しみでした。僕がむさぼるように食べたからか、一度友達のお母さんが『建君にお菓子をあげていないんですか』と母に電話してきたこともありました」
――食の仕事が多いのもお母さんの影響がありますか。
「家を出てからは子どもの頃の反動でジャンクフードにはまったこともありました。ただ、食べ歩きやグルメリポートの番組を今できているのは、母親が食べ物について厳格で、こだわりを持っていた影響があると思います」
――お父さんのお仕事は?
「父は技術職のサラリーマンで、酒もたばこもやらず、週末の接待ゴルフに備えて練習するような真面目な人です。僕は中学まで野球をやっていたのですが、父が東芝に勤めていたので、たまに都市対抗野球の観戦に連れて行ってもらいました。一度、父が大阪出張で阪神タイガースの帽子をお土産に買ってきてくれて。それ以来、今も僕はタイガースファンです」
「父は考え方がものすごく合理的でした。例えば漢字のテストでも、人と同じ時間勉強して同じ点数では褒めてくれません。いかに少ない時間で大きな成果を出せるかにこだわり、登下校の道順も『この公園を斜めに横断すれば早く行けるだろう』というようなことを言う人でした」
――そういうお父さんの性格からも影響が。
「コントのネタ作りに生きていると思います。例えば、相方の児嶋(一哉さん)が僕の母親と結婚するというネタがあるんですが、これも方程式に当てはめてつくるんです。同級生が義理の父親になる。すると、呼び方や人間関係のねじれでおかしさが出ます。それを、僕が結婚相手に気付く前と後の2段階の公式で会話を組み立てるんです」
――ご自身の結婚願望は。
「『ある』って言ってますけど、本音ではないですね。僕の趣味は野球も食も1人で完結するんです。ただ、映画『コウノトリ大作戦』の吹き替えの仕事をして、主人公のジュニアが子どもをかわいがる感情はよくわかった。もし子どもがいたら、振り回される父親になると思います」
[日本経済新聞夕刊2016年10月11日付]
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