先生も個性派ぞろい。授業では、教科書を使った記憶はほとんどありません。どの先生も自分で作ったプリントや自分の著書を生徒に配り、授業を進めます。文化系の科目の先生は、受験に必要な知識を教えるというよりは、自分の趣味の話をしているという印象でした。

例えば、徒然草が大好きな古典の先生は、いつも喜々として徒然草の話ばかり。そのぶん後で、自分で勉強しなければならないことも多いのですが、詰め込みではなく、生徒一人ひとりに考えさせる授業なので、とても面白く、学ぶ楽しさを肌身で知ることができました。理科系の科目は、最初に理論をササッと教えて、後はひたすら問題集の問題を解くというスタイル。ですから、やはり教科書は持ち歩きませんでした。

先生へのいたずらもよくやりました。例えば、授業直前にクラス全員が教室から抜け出し、先生が来たらもぬけの殻だったりとか、全員でメーカーに電話を掛け、商品の無料サンプルを先生の自宅に山のように送りつけたりとか、男子校の気楽さからか、結構、むちゃくちゃないたずらをしました。でも、それだけ先生と生徒との距離が近かったということだと思います。

生徒同士は、バラバラでまとまりがなかった

灘校に入ってみて、面白いなと感じたのは、生徒同士が、個性の裏返しで、バラバラなんです。例えば、灘校はテニスなど個人スポーツは結構強いのですが、団体競技は全くダメ。私は小学生の時に水泳で全国の強化指定選手に選ばれるなど、小さいころからスポーツが得意だったので、ラグビー部の顧問を務めていた体育の先生に口説かれてラグビー部に入ったのですが、チームのメンバーは自由奔放すぎてまとまりがなく、対外試合は全戦全敗というありさまでした。

このような灘校の生徒の特徴は、世の中に出てからの生業にもつながっており、灘校のOBが、サラリーマンよりも医師や弁護士、政治家になっている人が多いのも、そうした理由からだと思います。

神奈川県の黒岩知事も灘高校同級生

同期にも個性的な人物がそろっていました。例えば、元ニュースキャスターで現在は神奈川県知事の黒岩祐治さん。彼は集団を嫌う灘校の中ではちょっと変わったタイプで、人を集めて「男だけの演劇部」をつくり、演劇活動に力を入れていました。昔から人前で話すのが得意でした。ロート製薬の山田邦雄会長もユニークな経営で知られていますが、彼も非常に個性が光っていました。

このバラバラな感じの中で過ごした3年間は、今振り返ってみると、非常に貴重な体験だったと思います。バラバラ感は、今の言葉で言えば、多様性、あるいはダイバーシティーです。みんな個性的で、ユニークな考えの持ち主だから、付き合っていても面白い。そして、普段はバラバラでも、先生にいたずらする時や、生徒会が自主運営する名物の体育祭の時などは、一転、一致団結して巨大なパワーを発揮します。その両極端なところが面白かった。

今、日本企業にも人材の多様性が求められていますが、時々、灘校時代を思い出しながら、多様性って大事だなとしみじみ思っています。

インタビュー/構成 猪瀬聖(ライター)

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