重くて高くて不安になる ASUSのドラレコ
戸田覚のPC進化論
エイスーステック・コンピューター(ASUS)から新しいドライブレコーダー「RECO Sync Car and Portable Cam」が登場した。興味深いのが、普段はドライブレコーダーとして使い、必要なら取り外してアクションカムとして使えるという点だ。
RECO Sync Car and Portable Camの見た目は、スマートフォン(スマホ)に取り付けるレンズスタイルカメラ、ソニーの「サイバーショットQXシリーズ」のようだ。サイズは、直径約60mmの円筒形で高さは40mmほどある。重量は112gだ。
これは、ドライブレコーダーとしてはとても大きい。愛車に取り付けてみたところ、存在感はかなりものだ。実際、視界を妨げるようなことはないのだが、一般の車好きから見たら「やたらに大きなドライブレコーダーを付けてるな。安物じゃないか?」と思われそうだ。
とはいえ、製品の質感はかなり良く、チープな樹脂っぽさがむき出しの多くのドライブレコーダーと比べると高級感がある。
いきなり取り付けに不安あり
今回は、テストとして愛車に取り付けてみたのだが、特に問題なく利用できた。ただ、重量が112gもあるのがちょっと不安だ。ドライブレコーダーはフロントガラスに両面テープで取り付けることになるため、直射日光にも当然さらされるわけで、テープの劣化も激しい。これだけ重いと、そのうち落ちてくるのではないかと心配になる。
給電にはシガーソケットを利用するが、本気で使い倒したいなら、業者に頼んできちんと配線してもらうべきだろう。というのも、シガーソケットからの給電ではバッテリー上がりの恐れがあるため、使用後は取り外すことが推奨されているのだ。それはいくら何でも面倒すぎる。また、コードも太くて重いので、付属の取り付け金具では取れてしまいそうだ。
なお、取り付け位置などは法令で決められているので、しっかりと確認してから取り付けよう。
操作にはスマホを利用する
このドライブレコーダーがとても異質なのは、液晶モニターを搭載しないことだ。運転中にずっと表示される意味はないのだが、モニターがあるとちゃんと録画できていることは分かるし、何かあったときにはその場で再生して確認できる。
ところが、RECO Sync Car and Portable Camは、液晶がないために録画できているかどうかが分かりづらい。LEDランプの点灯で判断するべきなのだろうが、何となく心もとない。
また、撮影した画像の再生などはスマホを利用することになる。ドライブレコーダーの小さい画面ではなく、スマホの画面で見られるともいえるが、最近は液晶を搭載した上でスマホとも連携できるドライブレコーダーが登場しているので、このクラスならやっぱり液晶が欲しかった。
アクションカムとしては失格だ
さて、このドライブレコーダーの特徴となっているのがアクションカムとしての機能だ。そもそも、これだけ大きくて重いのは、取り外して使うためのバッテリーを内蔵しているからだと思われる。
しかし、大きくて重いために、帽子などに取り付けるには無理がある。いや、それ以前の問題で、取り付け用のアダプターが用意されていないのだ。三脚のアダプターを取り付ければ、自転車などでの利用は可能だ。しかし、ほかの部分にはどうやって固定すればいいのだろうか。防水や防塵のケースも欲しいところだが……。つまり、アクションカムとしてはまともには使えない、と僕は思う。
では、ビデオカメラとしてはどうだろう? 三脚が利用できるし、58mmのフィルターも用意されており、広角でフルHDが撮れる。ただ、ドライブレコーダーだと思えばこの画質でも納得がいくが、ビデオカメラとしては物足りない。
またそもそも論になるが、ズーム機能すらないビデオカメラが役に立つだろうか。操作にスマホが必須なら、スマホのカメラで動画を撮れば済む話ではないだろうか。いまや機種によっては4Kまで撮れるわけで、RECO Sync Car and Portable Cam程度のスペックでは出番がないだろう。
この製品の魅力を生かすにはアクションカムとして利用するためのアダプター類を充実させてほしいところ。また、単体のバッテリーが720mAhの容量しかなく、駆動時間は1時間というのも物足りない。
ドライブレコーダーとしての完成度は上々で、スマホでの再生もスムーズ。問題は大きさと重さ、そして実売で3万円近い価格だろう。近ごろはスマホと連携できるドライブレコーダーも1万円台で手に入るのだ。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『一流のプロから学ぶ ビジネスに効くExcelテクニック』(朝日新聞出版)がある。
[日経トレンディネット 2016年9月13日付の記事を再構成]
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