そろそろ紅葉の季節がやってきますね。紅葉狩りと滝めぐりは、もちろん相性のよい組み合わせです。
紅葉の似合う滝は全国に数あれども、華やかさと迫力という点で群を抜いているなあ、と感じるのが、茨城県大子町の袋田の滝(ふくろだのたき)です。
いかがでしょうか。長さ120m、幅73mという実にダイナミックなスケールです。華厳の滝、那智の滝とあわせて、日本三名瀑としても有名な場所なので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。海底火山の断面にできている珍しい滝で、地学的に注目されるジオサイトのひとつ(茨城県北ジオパーク)でもあります。
季節いろいろ、見方もいろいろ「四度の滝」
同じ場所に繰り返し訪れても、季節ごとに楽しめるのが滝の魅力のひとつ。ここ袋田の滝は、かつて西行法師も「四季に一度ずつ来てみなければ本当の良さはわからない」として、「四度の滝(よどのたき)」と呼んでめでたといわれています。
というわけで、私も西行さんの教えに従って季節ごとに訪れてみています。新緑や雪景色もすてきですが、やはり錦秋の頃が一番のお気に入り。目の前に広がるのは、まさに「錦」と称すべき絶景です。
立派な展望台も設置されており、滝を「見上げる」ことも「見下ろす」こともできるのが特徴です。上の写真は専用エレベーターを上がった第2観瀑台からのものですが、下の第1観瀑台では屋根があるので、雨の日でも落ち着いて滝を鑑賞できますよ。
細かい飛沫を浴びながら見上げるのもよし、色とりどりの葉が風に乗って滝に降っていく様を眺めるもよし。さらに斜めや真横からも望むことができるので、展望のアングルという意味でも「四度の滝」といえるかもしれませんね。
風情満点! パワースポット「月待の滝」と「滝見そば」
続きまして、滝ガール旅恒例の「はしご滝」です。袋田の滝からクルマで20分ほどの月待の滝(つきまちのたき)へ向かいましょう。
落差は15mほどと、袋田の滝に比べれば規模としてはこじんまりとしているのですが、滝のそばまで近寄ることができ、さらに滝の裏側に回ることができる「裏見の滝」というところがポイントです。
滝の裏側から眺めてみると、水の流れをより肌で感じることができるはずですよ。
このちょっとロマンティックな滝の名の由来はというと、古くから安産、子育て、開運を祈る「二十三夜講(二十三夜の月の出を待って婦女子が集う)」の場となっていたという伝説からきているそうです。
なぜここがその場所になっていたのかというと、この滝の形状とも関係があるのかもしれません。通常二筋の夫婦滝ですが、水量が増すと夫婦の間に小滝が現れて三筋になる。ここから「安産」祈願につなげられたともいわれています。
滝の脇には、月待の滝観音様もいらっしゃいました。パワースポットとしても女性に人気の場所のようですよ。
そして何より、ここは滝を見ながら、おいしいおそばがいただけるという、くいしんぼ滝ガールとしてもうれしいスポットなのです!
滝の前にある茶屋が「月待の滝 もみじ苑」さん。奥久慈産の玄そばを、水車を利用した石臼ひきで自家製粉し、深井戸からくみ上げた天然の地下水を使って手打ちしているお店です。「もみじ苑」という名の通り、敷地内では色とりどりの紅葉を楽しむことができます。
紅葉に包まれて、滝音を感じながらいただくおそば。これはもう格別ですよね。
「KENPOKU ART 2016」開催中! 芸術の秋も楽しもう
さて、この時期に袋田の滝への旅をご紹介したかった理由が、もうひとつあるのです。
実は9月17日から、茨城県北地域6市町を舞台とした日本最大規模の国際芸術祭「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」が始まっています。
芸術祭のテーマは「海か、山か、芸術か?」。茨城県北部エリアの海側と山側の美しい景色から、さまざまなインスピレーションを受けた作品が各地で展示されています。袋田の滝も、その舞台のひとつになっています。
アート作品が展示されているのは、滝に抜けるトンネル部分。
韓国人アーティスト、ジョン・ヘリョンさんによる滝や川の流れをモチーフにした光るインスタレーション作品です。彼女が滝からどんなことを感じていたのか、そしてそれをどう表現しているのか――。私はよく「滝は地球が作り出したアート」とお伝えしているのですが、このように地球の芸術作品と芸術家の作品とを実際に見比べてみることで、どちらもより深く味わうことができるのではないかと思います。
芸術祭は11月20日まで開催中。常陸大子駅周辺など、近隣のアートとあわせて芸術の秋も楽しんでみてはいかがでしょうか。
https://kenpoku-art.jp/
https://youtu.be/MvCDvyw0-0A
※紅葉のシーズンの土・日・祝日になると、袋田の滝周辺は混雑が予想されます。平日の訪問、あるいは早朝から出発されるのがおすすめです。

滝ガール。2015年まで日経BP社に編集記者として在籍。学生時代から10年以上、趣味の滝めぐりで日本全国を行脚。2013年に自身の滝活動の情報発信サイト「takigirl.net」を開設。日本の滝のポテンシャル、楽しみ方をウェブサイトや雑誌で情報発信するほか、都会で暮らす女性向けに滝めぐりのレクチャーや滝yogaイベントを開催している。 http://takigirl.net/