楽天の電子書籍リーダー 「間違いなく魅力的」なワケ
戸田覚のPC進化論
僕は電子書籍リーダーに高いお金を払うつもりがない。というのも、例えば1500円の本を購入すると、言うまでもなくそのままで読める。ところが、電子書籍は何らかのデバイスがないと読めない。本が紙とほぼ同じ値段なのはいい。ならば、電子書籍リーダーは無料であるべきではないだろうか。それで経営が成り立たないなら、例えば本を買うたびに1割くらいキャッシュバックして、10冊買えば元が取れるといった仕組みがなければバランスが悪いと思う。
楽天の電子書籍サービス「kobo」では、2冊以上購入すると10%割引してくれるので、ある程度の数を買えば端末代の元が取れる。欲を言えば、万一サービスを終了する際には、購入したすべての書籍をPDFで提供することを確約してほしいところだ。
余談はさておき、今回新たに登場したのが、電子書籍リーダーkoboシリーズの最上位モデル「kobo Aura One」だ。電子ペーパーを採用した端末で、画面サイズは7.8型となっている。タブレットを含め、競争相手の多いカテゴリーだけに製品の出来が気になるところだ。
手ごろなサイズで出来は上々
本体サイズは8型のタブレットとほぼ同様だ。ちょうど手元にあったエイスースの「ZenPad S8.0」と比べてみたが、大きさは似たようなものだ。また、おなじみの「iPad mini」とも近い。サイズと税別価格は以下のようになっている。
・ZenPad S8.0:203.2×134.5×6.6 mm 298g 3万9800円
・iPad mini 2:200×134.7×7.5mm 331g 2万9800円
一般的なタブレットと比べた際の、kobo Aura Oneの最大の優位点は軽さだろう。手に持って読むことが多い電子書籍は、軽いほうが好ましい。画面サイズはB6判の単行本と同じくらいと思えばいい。
ただ電子書籍は、僕に言わせると紙の本に大きく劣っている。そもそもビジネス書などは、紙の書籍で見開きの状態で読むように設計されていて、右ページの文章を読みながら左ページの図を見る構成になっていることも多い。そんなケースでは、1ページずつ読み進める電子書籍は不便なのだ。
もちろん、電子書籍には何冊分の書籍でも持ち歩けるとか、部屋で場所を取らないといったメリットもあるわけだが……。
電子ペーパーは見やすいが欠点も少なくない
kobo Aura Oneは電子ペーパー搭載なので表面が紙に近く、読んでいて疲れにくいような気がする。1872×1404ピクセルと解像度が高く、コントラストも高いので、文字がくっきりとしていることもあるだろう。
電子ペーパーにはバッテリー消費が少ないメリットもあり、kobo Aura Oneの駆動時間は約1カ月とされている。これはライトとWi-Fiをオフにした状態で、1日30ページを読んだ場合とのことだが、3泊4日程度の旅行などで使うなら充電なしでも余裕だろう。
とはいえ、電子ペーパーには欠点もある。ページをめくったときや、メニューを開いたときの書き換えの待ち時間があり、使っていてイラっとすることがあるのだ。電子ペーパーの特性なので致し方のないのだが、知らずに手にした人はがっかりしそうだ。
言うまでもなく、表示はモノクロだ。小説しか読まないなら問題ないだろうが、ビジネス書などを読む際には見づらい。最近のビジネス書は、図版や強調したい文字列など、青と黒の2色で構成されているものが多い。しかし、紙では見やすい青が薄いグレーで表示されしまい、とても読みづらくなってしまうのだ。もちろんこれは、kobo Aura Oneを含むモノクロ表示の電子書籍リーダーすべてにいえることだ。
個人的には、kobo Aura Oneの最大の欠点は、保存容量が8GBの内蔵メモリーにとどまることだと思っている。コミックは120~300点しか保存しておけない。最上位モデルなのだから、旧モデルのようにmicroSDカードで容量を追加できるようにしてほしいところだ。
調光機能とナチュラルライトが素晴らしい
kobo Aura Oneは、周囲の明るさをセンサーで感知して明るさを自動調整する機能を搭載している。スマートフォンやタブレットでは当たり前とはいえ、バッテリーの消耗も防げるので良い機能だと思う。
とても興味深いのが「ナチュラルライト」機能で、昼間の読書に適した真っ白から、夜の電球下で見やすいオレンジ色まで、段階的に画面の色の調整が可能になっているのだ。自動調節をオンにしておくと、指定した就寝時間に合わせて色を調整してくれる。iPhoneにある「Night Shift」と似たような機能だ。
フロントライトはとても優れているのだが、やや色むらが気になった。写真では分からない程度の微妙なものだが、一度目につくと気になる。オレンジのナチュラルライトにすると、濃淡がかなり生じる。また、色合いを薄くしても画面の下の方が若干黄色みがかっているように感じることがあった。
とはいえ、そのあたりは細かいことで、文字のくっきりさは文句なしだ。解像度が高いので、文字サイズを大きくしても、ギザギザが気にならない。IPX8対応の防水にも対応しており、プールサイドや温泉で本が読めるのもいい。
非常に魅力的な端末で人気も高く、すでに初回出荷分は売り切れたようだ。個人的にも、再入荷したら購入しようと思っている。ただ、2万2800円という価格は高すぎるのではないだろうか。容量が32GBの「iPad mini 2」が2万9800円で買えるのだ。当然ながら、iPad mini 2はカラーでさまざまな用途に使える。普通に考えたら後者がおすすめだ。読書専用と考えると、1万2800円くらいが妥当だと思う。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『一流のプロから学ぶ ビジネスに効くExcelテクニック』(朝日新聞出版)がある。
[日経トレンディネット 2016年9月20日付の記事を再構成]
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