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家族が事件・事故の加害者に……私の責任は?

2016/10/3

PIXTA
わが子が他人にケガをさせてしまった。老親がクルマを運転して事故を起こしてしまった……。そのとき、家族である自分はどこまで法的責任を問われるのでしょうか。家族に対する法的責任の有無の線引きは? 弁護士の松崎久美子さんにお聞きしました。

――少し前になりますが、若手俳優が事件を起こし、女優である母親が謝罪会見をしたことがありましたが、会見を見ていて、親の責任ということについて釈然としない思いが残りました。道義的責任については価値観により考えはさまざまでしょうが、法律上は、子の不始末に対して親はどこまで責任を問われるのでしょうか。

松崎さん 法的な責任としては、まず刑事責任については当然のことですが、親が子に代わって責任をとることはありません。親が子どもの代わりに刑務所に入るなんてことは起こらないですよねというお話です。

一方、親に民事責任があるか、端的には、損害賠償の必要があるときに賠償金を支払う責任が親にあるのかについては、子どもの年齢によって取り扱いが違ってきます。

子どもの民事責任には、ごくざっくりいうと年齢によって2つの線引きがあり、3つに分類されます。一つは20歳、つまり成年か未成年か。そしてもう一つが12~13歳くらい、中学生になるあたりが境目になります。「責任無能力者」というカテゴリーがあるのですが、12~13歳以下の子どもは責任無能力者とされ、子どもは民事責任を問われない代わりにお父さんやお母さんが監督者としての責任を問われます。例えば8歳の子どもが自転車で他人にぶつかってケガをさせてしまった場合には、子どもではなく親が民事責任を問われることになります。

子どもが20歳に達していて通常の判断能力を備えているなら、民事責任は子ども自身が自分でとることになり、親には法的責任は通常生じません。

――12~13歳ですか。意外に、年齢が低いんですね。では、16歳の高校生がで事故を起こしてしまった場合には、民事責任はどうなるのですか。

松崎さん 高校生の16歳の息子が自転車で他人にケガをさせ、300万円の賠償金を支払うとなれば、実際に16歳の高校生に金銭の支払いが可能かはさておき、子どもにも民事責任はあるということになります。

12~13歳という年齢は、確かに意外と低いと感じるかもしれませんが、善悪の判断はできる年齢ですから、民事責任はあると考えられています。一方で、16歳という年齢の子どもであっても、親の監督責任が問われる可能性はあります。

例えば、子どもが無免許でバイクを乗り回していて親はそれを放置していた、といった場合は、子どもに対する監督義務が十分に果たされていなかったとして、親も民事責任を問われる可能性が高いですね。この場合、16歳の子と父母は、ともに民事責任を負うことになります。

まとめると、子どもが小さいうちは責任無能力者にあたるので子ども自身は民事責任を負わず、代わりに親が民事責任を負います。12~13歳あたりを目安として子どもも民事責任を負うようになるのですが、親にも監督責任があり、十分果たされていないとされた場合には、親も民事責任を負う可能性があります。子どもが成人して通常の判断能力を備えていれば、親が民事責任を負うということは通常は考えられません。

――「責任能力」という言葉が出てきましたが、子ではなく自分の高齢の親についてはどうでしょうか。例えば80代の親がクルマを運転していて事故を起こし、他人に損害を与えてしまった場合に「運転は危ないので注意してやめさせるべきだった」などと、子が監督義務を問われることはあるのでしょうか。

松崎さん 高齢の親についても、監督義務の有無という発想の枠組みは子どもの場合と似ています。80代のお父さんが、年齢の割には元気でしっかりしているけど目や耳は遠くなっているのに運転しているのを放置していたら、家族の方が監督義務を問われることがあるか。あるいは、認知症で判断能力が弱っているのに、家族が運転を止めなかったことで、家族が責任を問われるかという話ですね。

認知症を患っていた男性が徘徊して電車事故を起こし、男性の妻と長男に対して、鉄道会社が損害賠償を請求した裁判がありました。一審の地方裁判所では妻と長男に対して賠償責任が認められたのですが、二審の高等裁判所では妻だけに賠償が命じられ、さらに最高裁判所では妻も長男も責任を問われず、鉄道会社の逆転敗訴となりました(2016年3月)。

この裁判を見ると、認知症を患う高齢の親が事故を起こした際の家族の民事責任の有無は、監督義務の問題として判断されています。具体的にどういう場合に家族に監督責任ありとされるかについては、今後の裁判例の蓄積を待たなければ明確なことは言えませんが、認知症の家族が起こした事故の責任については、家族であれば当然に責任を負うということではなく、監督責任の有無が看護や介護の具体的な状況に沿って慎重に判断されていることが分かります。

松崎久美子(まつざき・くみこ)
大学卒業後、大手損害保険会社、ドイツでの職務経験を経て2008年より弁護士。第二東京弁護士会所属。2015年3月、広尾なみき法律事務所を開設。

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