日常生活にIoTを連携させようとする動きは、日用品では既にありました。たとえばKDDIが2015年に発売した傘立て「Umbrella stand(8070円・税抜き)」は、「今日、傘を持っていく必要があるか」をLEDの色でお知らせ。専用アプリを入れたスマホを近づけると、降水確率に応じて、晴れならオレンジ、曇りなら白、雨なら青に光ります。
こうした「生活がちょっと便利になる」という“様子見”の段階を過ぎて、いよいよ家電に応用が広がり、「生活が大きく変わる!」という段階に入ってきたのが2016年といえます。スマホの普及や、各家庭にWi-Fi環境が整ったことを背景に、ネットワーク接続機能を持つ家電が続々登場しました。電子レンジ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、照明などの家電がインターネットと連動し、利便性アップや省エネなどの効果が期待されています。
今までなかった! 会話でレシピが相談できる電子レンジ
大手電機メーカー各社は既に、製品ごとではなく“家電”という大きなくくりでIoT化を進めています。
なかでもシャープは、「ともだち家電」として展開。電子レンジ、冷蔵庫、空気清浄機、エアコン、洗濯機、お掃除ロボットがインターネットにつながり、声や文字によって使い方や状況に合ったアドバイスをしてくれます。
特に注目したいのは「ヘルシオ ウォーターオーブンAX-XW300」。使いたい食材や料理のジャンルをヘルシオに話しかけると、レシピを提案してくれるのが最大の特徴です。「ジャガイモを使ったメニューを教えて」とヘルシオに話しかけると、「ジャガイモの薬味あえはどうですか?」などと答えてくれます。
例えば……
ヘルシオ 「ポテトサラダはいかがですか?」
私 「いいね! じゃあ、そのレシピ出して」
ヘルシオ 「わかりました、キュウリも加えると野菜がよりとれますよ」
……といった具合。心強い! 「疲れた」と言えば、「ビタミンB1が足りないね。豚肉のピカタはどう?」と答えが返ってきます。
シャープの調査によると、夕食の一番のストレスは、作ることではなく、献立を考えることだそうです。確かに私も、家族に「今日、何が食べたい?」と聞いて「何でもいい」と言われるとちょっとがっかり。そんなとき、ヘルシオがレシピを一緒に考えてくれるのが案外うれしいのです。将来は、クックパッドやタニタとの連携も視野に入れ、レシピがさらに幅広くなるそうです。
「ともだち家電」はほかにもラインアップが充実。冷蔵庫に食品を入れながら話しかけると、入れた食品を覚えて、使い忘れを教えてくれます。空気清浄機は花粉やPM2.5などの情報を知らせてくれたり、エアコンは天気情報をキャッチして気候に合わせたアドバイスをくれます。日常のいろいろな場面できめ細かい対応をしてくれる、まさに“生活のコンシェルジュ”といえるでしょう。
http://healsio.jp/products/axxw300.html
いち早くIoT化したエアコンは「見守り」にも活躍
家電というくくりの中でIoT対応が早かったのはエアコンでした。全メーカーのエアコンは既にインターネットにつながります。スマホをリモコンにして、外出先から操作できるのが本当に便利。運転状況の確認や運転内容の変更なども、いつでもどこでもできるようになります。
わが家では富士通ゼネラルの「ノクリア」を使っていますが、私にとっては、家にいる家族の様子が分かるので、心強い“見守り家電”として重宝しています。夫の部屋のエアコンのオン・オフが私のスマホで分かるので、夫が家に帰ったかどうかチェックできたり、「消し忘れて出かけたな」と思えば私のスマホでオフにして電気代のムダを減らすことができます。ペットが留守番をしているときは、真夏になると熱中症対策で空調温度を下げることも。将来的には、離れて暮らす両親の家にも設置して「オンされてるから、今日も元気だな」と見守ることができればいいなと思っています。
http://www.fujitsu-general.com/jp/products/aircon
スマホひとつで1600万色を超える色彩の照明
IoT家電の中でも、利便性だけでなく楽しさがあるのが照明です。フィリップスの「Hue」はインターネットにつながるスマート電球として支持された製品。1600万色を超える色彩表現と高い拡張性で、今までにない明かりの楽しさが実現しました。
スマホからの点灯・消灯はもちろん、色のバリエーションにはビックリします。起動したアプリには「夕焼け」「色鉛筆」「深海」などのアイコンがズラリ。タップすると、「夕焼け」ならオレンジ色、「深海」なら青や赤に部屋が彩られます。自分の撮影した写真の色をピックアップして照明の色に設定できる機能は撮影したときの思い出がよみがえり、遊びゴコロにワクワクします。
Hueの照明色と連動できる音楽プレーヤーアプリを起動すれば、クラブのように音楽に合わせて照明が変わり、ホームパーティーが盛り上がりそうです。
外出先からも照明を操作できるので、真っ暗な家に帰るのがイヤなら、自宅の最寄り駅に着いたときにスマホで照明をオンできます。共働きなら、夫婦ともに出張のとき、夜になったらスマホから照明をつけて防犯対策もできます。女性のひとり暮らしにも強い味方になるでしょう。
9月には、持ち運べるスタンドタイプの「Hue Go」も発売になりました。電球だと既存の照明器具に合わない場合もありますが、これならその心配はなく、すぐに使えるのがメリットです。
http://www2.meethue.com
「より便利になる」というきっかけで導入したIoT家電ですが、会話などのコミュニケーション、見守り、省エネなど、プラスアルファの使い心地をたくさん体験でき、家電の可能性の広がりを感じます。皆さんも、自分なりのプラスアルファを見つけて楽しんでみませんか。
大手プレハブメーカーでインテリアコーディネートを担当し、インテリア研究所を経て商品企画部へ。その後、インテリア&家電コーディネーターとして独立。情報ポータルサイトAll Aboutをはじめ、雑誌・新聞・テレビなど幅広いメディアで活動中。家電業界出身ではない中立的な立場と消費者目線での製品評価や、分かりやすい解説に定評がある。
(ライター 内藤綾子)