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誰にとっても、退屈に感じる話の代表格といえば、一般論でしょう。一般論は、どう考えても興味を引かない、誰もが知っているような話です。

たとえば、

●「仕事の成果を出すには、しっかりした目標が必要です。目標を持って行動しましょう」

●「挨拶は自分からしましょう。そうすれば、あなたにもいいことが返ってきます」

●「腸内環境を整えるには、乳酸菌がいいです」

こう聞いて「なるほど」「確かに」「初耳だ」「素晴らしい」と思う人は、皆無に等しいのではないでしょう。気を使ってうなずく人もいるでしょうが、心の中では「そんなこと知っている」「常識でしょう」「今さら……」とダメ出しをしている方もいるはずです。

そして、「私はこんなつまらない話はしない」と思うでしょう。しかし普段ならば、こうした類いの話をしないあなたであっても、急にスピーチを促されたり、意見を求められたりすると、気の利いた話のネタが思い浮かばず、「つまらないだろうな」と思いながらも、一般論でその場をつなごうとする場合があります。話すあなたからして、「つまらないだろうな」と思うのですから、相手はもっとつまらないに、違いありません。

人は誰しも、聞くよりも話をしたい、自分を理解してほしいと願う「話したがりやさん」なのです。それでも相手の話を聞くのは、そこに興味や関心を見いだそうと期待するから。話を聞くことで、それらを得られると思うからです。

しかし一般論では、期待はずれに終わります。そこに上下関係や利害関係がある場合には、仕方なく相手は聞くでしょうが、不快感は否めません。たび重なれば「この人の話はつまらない」「中身が薄い」というようなレッテルを貼られてしまいかねません。すると、重要で緊急を要するような話も、スルーされる可能性すら生まれます。

興味がわかない話もひと工夫で生まれ変わる

一般論はもとより、あなたの話に興味を抱かない人に話を聞いてもらうポイントは、次の二つです。

1.共感が得られるように話す

あたかも話の主人公に相手がなったかのように思わせる、話し方です。たとえば、相手の名前を会話に入れるのも、その一つです。

「臼井さんが、当事者だったとしたら、どうでしょうか?」

「山田さんの立場ならば、こういう状況にはなりませんよね」

というように話すと、参加者意識が生じ、あまり興味がわかない話でも、次第に話に関心を示すようになります。

2.協調できるような話し方をする

「~に違いない」「~しかありません」というように、断定する話し方をされると、たとえそれが正しく疑いようがない事実であったとしても、「あなたに言われたくない」「高飛車だな」などと感じる人もいます。

すなおに「イエス」と言いたくなくなるのが、人情なのです。ですから、「~だと思いませんか?」「~だと感じるのですが、いかがでしょうか?」「~とも考えられますが……」というように、質問形式やお伺いを立てる話し方をするといいでしょう。

質問形式の話し方をすると、「ゆとりのある態度」や「聞く耳を持っているという柔軟な姿勢」を演出できるだけでなく、相手をいい意味で話に巻き込むことができます。質問をすれば、誰でもそのことに注意が向きます。それまで、何となく話を聞いていた人も、考えざるを得なくなるのです。

エピソードを盛り込んだ話を心がける

さらに興味を引くためには、自分の体験談やエピソードを盛り込んだ話し方を心がけるといいでしょう。たとえば先の一般論にあった、

●「仕事の成果を出すには、しっかりした目標が必要です。目標を持って行動しましょう」には、

「かつて私は目の前の仕事を片付けるのに精いっぱいで、目標なんて考えなかったのですが、目標を設定しなかったら時間活用がうまくできず、仕事に追われていたのですね。人は目標を設定することで、自分が持っている本来の力が発揮できるようになるのです」

●「あいさつは自分からしましょう。そうすれば、あなたにもいいことが返ってきます」には、

「かつて私の部下だった田中さんは、自分からあいさつする笑顔のすてきなお嬢さんと評判になって、取引先の○○社長から、息子のお嫁さんにと望まれて結婚しました」

●「腸内環境を整えるには、乳酸菌がいいですよ」には、

「毎朝ヨーグルトを欠かさず食べて10年以上たつけれど、便秘はしないしお腹の調子が確かにいい」

一般論であっても、そこにちょっとした体験談やエピソードを添えることで、話がイキイキしてきます。共感や協調が生まれ話に引き込まれるのです。

エピソードをストックしておこう

会話が苦手な人に共通するのは、エピソードが圧倒的に不足しているということ。面白い体験をしたり、手痛いミスをしたり、心躍る感激が生じても「この事実を覚えておこう」という意識がないので、せっかくのネタ=エピソードを取りこぼしてしまっています。

「これをいつか誰かに話そう」「これは使えるかもしれない」。そう意識するだけでも、会話がかなり変わります。

私の場合エピソードは、

笑える話

驚きの体験

感動する話

ほほえましい出来事

自身の失敗談

と5つにわけて、普段から、見逃さずにメモをしてストックしています。

「きょう、いいことがありましたか?」と聞かれると、多くの人は「別に何もありません」と答えるでしょう。いいことがあったとしても、「人に誇れるほどのものではない」と思う。でも、エピソードをストックするようになると分かりますが、いいことがない日というのは、全くないといっていいでしょう。日々、何かしらうれしい、楽しい、心躍ることがあります。

たとえば「左右違う靴下をはいて外出してしまった」という他愛ない話も、「そのおかげで、憧れの○○さんと、話をするきっかけになった」「おしゃれだねとほめられた」など。

笑える、驚き、ほほ笑ましい、失敗……といった出来事にエピソードが隠れている。それを誰かに話そうという考えがないので、すぐに忘れてしまっているだけなのです。

せっかくのエピソードも、忘れてしまったら損。何かあったときには、必ずメモしておく習慣をつけてくださいね。何を話したらいいか分からない、急に話をふられて困ったという人には、ストックしたエピソードは大きな武器になります。

 「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は11月9日の予定です。

[BizCOLLEGEの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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