ライバルの模倣防ぐ 一見非合理、戦略全体で合理性楠木建著「ストーリーとしての競争戦略」(4)

神戸大学教授 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院 研究員 小川進氏

神戸大学教授 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院 研究員 小川進氏

部分的には非合理に見える店舗起点の発注が売り逃さない仕組みの欠かせない要素であることに競合が気付くのには時間がかかりました。仮説検証型の発注をファミリーマートが導入するまでに7年、ローソンは10年かかりました。それまでにセブンイレブンは膨大な量の仮説検証型の発注を全商品、全店で行い、他の追随を許さない組織能力を構築していきました。

ユニクロのクリティカル・コア シーズン内 返品自由

最後にもう一つ事例を紹介してこの連載を終わりましょう。ファーストリテイリングが展開するユニクロの商品は展開初期には安かろう、悪かろうのイメージがありました。そこで柳井正社長はシーズン内なら返品自由という政策を始めました。「そんなことをしたら商品を購入して着るだけ着てシーズン中に返品してくるお客が多く出るのではないか」。そう考える人もいました。しかし柳井さんはそうは考えず、返品された商品に対するお客の不満を吸い上げ改良すれば商品力を上げることができるし、返品費用を研究開発投資と見れば安いものだと考えました。返品政策はユニクロのクリティカル・コアになっていたのです。

小川進氏(おがわ・すすむ)
神戸大学教授 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院 研究員

1987年神戸大学経営学部卒、89年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了。98年米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号(経営学)取得。神戸大学経営学部助教授などを経て、2003年から神戸大学大学院経営学研究科教授。16年からMITスローン経営大学院研究員。専攻はマーケティング、イノベーション管理。主な著書に『ユーザーイノベーション: 消費者から始まるものづくりの未来』(東洋経済新報社)など。

=この項おわり

この連載は日本経済新聞火曜朝刊「キャリアアップ面」と連動しています。

「経営書を読む」記事一覧

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 : 楠木 建
出版 : 東洋経済新報社
価格 : 3,024円 (税込み)

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