ライバルの模倣防ぐ 一見非合理、戦略全体で合理性楠木建著「ストーリーとしての競争戦略」(4)

神戸大学教授 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院 研究員 小川進氏

神戸大学教授 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院 研究員 小川進氏

セブンイレブンは店舗のすべての商品を店の担当者が発注することをかたくなに守りました。接客や商品の荷受け、品出しや店内の清掃といった作業をしていると、時間はあっという間に過ぎてしまいます。そうした作業に加えて一品一品について仮説をもって発注する仕事は、時間がかかるだけでなく、かなりの労力を必要とします。しかもセブンイレブンはオーナーだけでなくパートにも発注を積極的に任せるように指導しました。

店の商品の発注量は、大量のデータが集まる本部でコンピューターを使って分析して決める方が正確に予測できるし、店舗も発注に時間がとられないので喜ぶはずだ。ましてや素人同然のパートに発注を任せるとは、なんてバカなことをするのか。競合のチェーンはそう考えて店舗の発注量を自動的に計算する仕組みを開発して導入したりしていました。

しかし、セブンイレブンの鈴木敏文さんは決してそうは考えませんでした。発注の情報システムをNECに開発してもらう時には次のようにお願いしたといいます。「自動発注は絶対ダメです。店の人は商品が売れなかった時、本部やシステムのせいだと考えてしまいます。商品の売れ行きを敏感に感じ取りながら発注できるのは店頭です。販売結果に対して店員が責任を感じ、消費者の動きを観察しながら発注しようとするシステムをつくってください」。その結果、生まれた仕組みが仮説検証型の発注システムです。本部は店舗担当者の発注を高度な情報システムと店舗指導員を通じて支援します。

「自動発注は店舗作業を楽にはしましたが、店舗の人たちの知恵が生かされる分、仮説検証型の発注をする店に売り上げで勝つことはできませんでした」。競合チェーンの情報システム開発担当者がそう言っていたのを思い出します。

このように、セブンイレブンにとって店頭起点の発注はクリティカル・コアでした。精度を上げるための短いリードタイムでの発注、多頻度小口の物流、特定エリアへの集中出店や取引先を絞った共同物流体制、店舗指導員による週2回の巡回と鈴木氏による講話を含む毎週の全体会議の開催といった仕組みが、クリティカル・コアである店頭起点の発注を中心に構築されていたのです。

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