嫌われ上等! 反りが合わない人とチームを作るために
「反りが合わない人とチームを作る」という発想
会社員の仕事の悩みを聞いてみると、「社内の人間関係」と答える人が数多くいます。それだけ、自分と合わない人、苦手な人と一緒に仕事をするのに苦労している人が多いということです。そうした中で、どうすれば周囲をチームのメンバーとして取り込めるのかをお話しします。
自分と意見が合わない、あるいは自分とは対立ばかりしているという人は、発想を変えた途端に「自分では表現できない部分を持っている貴重な存在」に変わります。ですから、その人たちの力を戦力として生かすことができれば、それだけチーム力を高められるのです。
苦手な人とコミュニケーションを取るには
私は今、地方での事業に取り組んでいます。都会と違って、地方ではこれまでとは違う新しい考え方を持つ人が突然現れると、みんなが戸惑います。そこで私はいつもこう言っています。「異質な人が来たということは、その地域が豊かになるということです」。これは、企業でも言えることだと思っています。
もちろん誰しも、会った瞬間、「この人は苦手だな」と思うような相手がいるものです。
私がいつも心掛けているのは、嫌だと思うならなおさらその気持ちを一度持ち帰って、どうしてその人を嫌だと思ったのか考えるようにすることです。そして必ず、その嫌だと思った考えや行動の背景にあるものを想像し、自分がその人だとしたら、どういう考えを持ってどういう行動をするか分析してみます。
その後に、もう一度会って話す機会を持つ。とはいえ私は、出会った人全員に迎合する必要はないと思っているので、嫌な要素を分解して分析して、それでもやはり嫌な思いしか持てないようなら、諦めようと決めています。でも、そういうケースは実はとても少ないのです。
「嫌われ上等」の精神を
私の大好きな言葉に、「嫌われ上等」というのがあります。相手に嫌われてもいいから、「私はこう考えて、こう動くけれど、あなたは違うんだよね。違うから面白いんだよ」と言ってチームのメンバーに加えていくというのが私のやり方です。つまり「嫌われ上等」の裏側に、「嫌われてもいいからきちんと説明しよう」という考えがあるのです。
会社というのは、自分とは考えの違う人や、苦手な人だらけだと思います。ですから、そういう人を積極的にチームに取りこみ、チームを大きく強くしていくという発想が必要です。
あなたが入社して10年目ほどの社員だとします。自分の下にいる、新卒で入社してきた若い人たちはいったい何を考えているのかわからない。一方で、自分の上にいる上司や先輩たちの言うことは古臭くていちいち腹が立つ。こう言ってしまうことは簡単です。だいたい、10歳、20歳の世代の開きがあるということは、受けてきた教育の方針や内容も大きく異なります。異次元空間で育った人同士が違うのは当たり前のことですから、わかり合おうとしなければチームなど成立しません。
そこで、こう考えてみたらどうでしょう。「違う時空を生きてきた厚い層のメンバーに恵まれている」「このチームには新しい考え方のメンバーもいるし、昔ながらの安全なやり方を示してくれているメンバーもいて、とても豊かだ」。あなたの発想をそんなふうに一つ変えるだけで、あなた自身が変わります。さらにあなたの変化が周りの考え方や行動も変えていくことになるのです。そしてそれが、新しいものを生み出す力になっていきます。
インド国立ボンベイ大学(現州立ムンバイ大学)大学院社会福祉課程修了後、1989年に国際会議の企画運営会社に入社。1991年、ITに特化したイベントサポート事業を設立。2001年にウィズグループ、2013年にたからのやまを設立。2014年より、情報処理推進機構(IPA)の未踏IT人材発掘・ 育成事業の審査委員を務め、若い世代の新たなチャレンジを支援している。これまでに携わったITイベントの数は300以上。数億円規模のイベントをいくつも成功に導いている。著書に『会社を辞めないという選択 会社員として戦略的に生きていく』(日経BP社)、『人生は見切り発車でうまくいく』(総合法令出版)、『ワクワクすることだけ、やればいい!』(PHP研究所)がある。
(ライター 成田真理)
[nikkei WOMAN Online 2016年9月6日付記事を再構成]
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