ももクロ ここ私塗ったの、すごくない?(動画あり)ももクロVS伝統工芸/玉井詩織、「万祝」に挑戦(4)

撮影 大谷真幸
撮影 大谷真幸

「ぼかしがうまくできているか、すごく心配!!」――アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の玉井詩織さんが挑戦した千葉県の伝統工芸「万祝」(まいわい)作り。今回は完成品を持って、楽屋にお邪魔しました。難しかった「ぼかし」の出来栄えを気にする玉井さん。完成品を目にすると「あ、すごい、めっちゃすごい」「ここ私塗ったの、すごくない?」――大はしゃぎです。【前回はコチラ】

万祝を着て鴨川の海岸に立つももクロの若大将、玉井詩織さん

想像以上の出来栄えに本人はおおはしゃぎ

万祝は千葉県の房総地方が発祥の着物とその染色方法のこと。大漁の中でも、年に数回あるかないかというほどの桁外れの大漁を祝い、網元が漁に関わった人達にはんてんを贈ったのが始まりだといわれています。明治時代から戦前にかけて最盛期を迎えますが、戦後は作られることも減り、今では万祝を手がける業者も数えるほど。今回、玉井詩織さんが万祝を体験したのは、今も伝統を守り続ける「鈴染」でした。玉井さんに万祝を指導し、完成を手伝ったのは、平成2年生まれの鈴木理規さんです。

玉井さんが「大漁」という文字を黄色に塗り、亀の甲羅では黄色と茶色のグラデーションを作る「ぼかし」に挑戦したはんてんが完成したのは、挑戦から1カ月後。さっそく本番を前にしたももクロの楽屋に完成品を届けます。

玉井詩織さん ぼかしがうまくできているか、すごく心配。

実際の出来栄えはどうか。まずは動画でご覧ください。

動画でご覧になったとおり、万祝の出来栄えは予想以上。玉井さんも「あ、すごい、めっちゃすごい」「ここ私塗ったの、すごくない?」と大はしゃぎで、同じ楽屋にいるメンバーに見せていました。

玉井さんが「大漁」と「亀の甲羅」を塗った万祝。鶴や松竹梅などめでたい絵が描かれた万祝の基本的な絵柄です

玉井さんが心配していたぼかしもきれいにできています。

亀の甲羅に描かれたぼかしもきれいにできていました
「大漁」という文字も玉井さんが塗ったもの。「玉井詩織」という名前は鈴木さんが入れてくれました

■プロも驚く順応性の高さ

鈴染の鈴木さんは、「玉井さんのはけの使い方に驚いた」そうです。

鈴木理規さん はけは大胆に動かさないとうまく塗れないのですが、慣れないうちはどうしても慎重になり、動きが小さくなってしまうんです。玉井さんは、最初は慎重でしたが、すぐにはけを大胆に使えるようになっていました。センスがいいんですね。

今回、玉井さんは机などの安定した場所ではなく、生地が水平に張られた状態で色を塗っていきました。鈴木さんが万祝に色を塗るときと同じやり方ですが、実は鈴染で万祝体験教室を行うときは、布を机の上に置いて動かないようにします。生地を張った状態で、未経験の人が染色に挑戦するのは、玉井さんが初めてだったそうです。

揺れる生地に色を塗る玉井さん。見ているよりずっと難しい作業です

鈴木 やってみるとわかりますが、揺れる生地に色を塗るのはすごく難しいんです。普通、空中に浮いているものに色を塗ることはありませんから。だから、実際と同じ手順で色を塗ると聞いたときは、正直「ありえないんじゃないか」と思いました。うまくいくのか心配だったので、玉井さんが塗る様子を見て、ホッとしたというか驚いたというか。本当に順応性がすごい。

実は同じことを、第1シーズンで佐々木彩夏さんに漆塗りを指導した漆琳堂の嶋田希望さんと内田徹専務も言っていました。「初めてなのに、すぐにコツを覚えた。やっぱりいろいろな体験をしているから、本番に強いんでしょうね」

このあたりは、中学生の頃から、さまざまなムチャブリを経験してきたももクロならでは。そういえば前回の対談の時も玉井さんからこんな発言がありました。「アイドルに向いていないと思ったことはありますか?」という質問に対する回答です。

玉井 ももクロは最初からみんなが思い描いている「ザ・アイドル」という道を歩んでいなかったので、自分が向いていないと思うこともありませんでした(笑)。アイドルってライブでも前髪が崩れちゃいけないってイメージがあるじゃないですか。でも私たちは、全身がびしょぬれになったりすることも普通で、前髪どころか全身の見た目を気にしても仕方がないという感じの道を歩いてきたので。そういう王道ではなく邪道だったのがよかったのかな。でも私たちはそれが王道だと思ってずっとやってきたんですけど(笑)。

日産スタジアムに2日間で11万5000人を集めるようになった現在ですが、最新シングルの「ザ・ゴールデン・ヒストリー」のPVでは、何も知らされずに現場に連れてこられ、さまざまなゲームで粉まみれ、泥まみれになりながら楽しそうに歌う様子が見られます。

ちなみに前回、「ぜひ万祝でももクロの衣装を作りたい」と言っていた玉井さんですが、鈴木さんによると、黄色以外のメンバーカラー、赤、ピンク、紫、緑も問題なく作れるそうです。鈴木さんが作った万祝の衣装がももクロのステージでみられる日がくるかもしれません。

完成した万祝を持つ玉井さん(撮影 大谷真幸)

■伝統工芸の深さ、繊細さに驚きました

最後に玉井さんに万祝への挑戦について改めて感想を聞きました。

玉井 塗るのは本当に難しかった。鈴木さんが塗っているのを見ていると、本当に繊細な作業なんだなって。あの繊細さがあるから、万祝のこの鮮やかさが出るんだなと思いました。日本の伝統工芸の深さを感じたような気がします。

エンタテインメントを始め、さまざまな世界のベテランたちに会う機会も多い玉井さんですが、伝統工芸を志す同世代に会ったのも印象に残ったようです。

玉井 日本特有の伝統工芸が少なくなっている今、私たちと同世代の人達がそれを残そう、受け継ごうと思っているのは、とても大切なことだなと実感しました。鈴木さんにもぜひ万祝をなくさないように頑張ってほしいし、他の伝統工芸を勉強している人達にも大変かもしれないけれど続けていってほしいですね。

「ももクロは最初からザ・アイドルという道を歩んでいなかったので、自分がアイドルに向いていないと思うこともありませんでした(笑)」

以上で、ももいろトラディショナル第2シーズンは終了。第3シーズンは高城れにさんが江戸切子に挑戦します。どうぞお楽しみに。

鈴染の近くにある海岸で万祝を着て立つ玉井さん

【ももトラ第3シーズン「高城れにVS江戸切子」はコチラから】

ももいろクローバーZ
百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏で構成されるアイドルグループ。2008年5月に結成(当時のグループ名は「ももいろクローバー」)。観客数十人の路上ライブからスタートし、国立競技場や日産スタジアムでのコンサートと並行して、小さな会場でのライブやユニークなイベントなども積極的に企画、ファンを驚かせ、楽しませている。
玉井詩織
1995年6月4日生まれ。神奈川県出身。2005年、小学生のときにスカウトされ、スターダストプロモーション入り。08年5月、ももいろクローバーの結成に参加。キャッチフレーズは「ももクロの若大将」。イメージカラーはイエロー。愛称は「しおりん」。
ももいろトラディショナル
デビュー当時のコンセプトが実は「和をモチーフにしたアイドル」だった彼女たちが、日本の伝統工芸を学ぶ連載。メンバーが伝統工芸の仕事現場を訪れ、作る過程を勉強し、実際にもの作りを体験。さらにその道で頑張っている同世代の若者と夢や目標を語り合うという詰め込みすぎな企画です。第1シーズンは「ももクロVS伝統工芸/佐々木彩夏、漆器作りに挑戦」。

(写真 勝山弘一、ヘアメイク チエ、編集協力 佐々木健二=ジェイクランプ、動画撮影 古屋智美、文 大谷真幸)