味わうことなくたくさん食べてしまう、といったことが習慣化してくると、「食べることなしにはストレスが消えない」というループにはまり込む「摂食障害」の危険性ありだ。
過食の習慣化には、「私たちを支えている“3つの自信”の低下が関わる」と、メンタルレスキューシニアインストラクターの下園壮太さんは話す。3つの自信とは、第一が「自分はできる、という自信」、第二が「自分の感情や行動をコントロールできる自信」、第三が「愛される、居場所がある自信」のこと。
食べ過ぎを我慢できないときには第二の自信が揺らいでいる。「このとき、苦肉の策として食べ過ぎた後に吐く、という手段をとると、自分をコントロールできている、という第二の自信が一見維持できるように見えるが、結局は過食が習慣化し、自信が低下していく」(下園さん)
食べ過ぎが習慣化してきたかも……と感じたときは、「食べてストレスを晴らす」以外の対策にも目を向ける「コーピング」という手法が効果的だ。
ネイルや顔のパックをすると、疲れを癒やし、自分へのご褒美を与えることができるうえ、「食べる」行為からも遠ざかることができる。猫とじゃれあうと、「自分が必要とされている、という第三の自信を補える」。範囲を区切れば、部屋の片付けも心すっきり効果が得られる。
自らのストレスについ蓋をしがちな頑張り屋さんは、「気分リセット呼吸法」もお薦めだ。「頑張っている自分、我慢している自分を認めることで、ストレス感情が落ち着く」(下園さん)
気分リセット呼吸法のすすめ
イライラや不安が押し寄せてきたら、深い呼吸を繰り返し行ってみよう。
まずは、ゆっくりと呼吸をし、「1」と数える。そこで嫌なことを思い出してしまったら、「そうか、私は今日このことが悔しかったんだ。教えてくれてありがとう」と、思い出したその気持ちに対してお礼を言って、再び呼吸に戻る。30回まで呼吸を数える。「つらい気持ちを無視せず認めることによって、心が落ち着いてくる」(下園さん)
■この人たちに聞きました

牧野クリニック(東京都・中野区)診療部長。北里大学医学部卒業。オーストラリア・メルボルン大学医学部大学院修了。医学博士。心身医療内科専門医、日本心療内科学会登録医、優秀専門臨床医。摂食障害の治療にも積極的に取り組む

メンタルレスキュー シニアインストラクター。1982年、防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。心理幹部として多くの隊員のカウンセリングを手がけ、2015年に退官。現在、講演や研修会、カウンセリングやコーチングなどを手掛ける
(ライター 柳本操、構成:日経ヘルス 太田留奈)
[日経ヘルス2016年10月号の記事を再構成]