格安スマホの売れ筋4機種比較 総合力でP9 lite
佐野正弘のモバイル最前線
格安SIM人気の高まりにつれ、格安SIMとセットで使うSIMフリーのスマートフォン(スマホ)にも注目が集まっている。中でも価格と性能のバランスで売れ筋となっているのが、実売価格で2万円台後半のモデルだ。
そこでここでは、SIMフリースマホの主要メーカーの同価格帯のモデルから4機種を比較する。ファーウェイの「HUAWEI P9 lite」、「FREETEL」ブランドでスマホを販売するプラスワン・マーケティングの「REI(FTJ161B-REI)」、エイスースの「ZenFone Max(ZC550KL)」、そしてZTEの「Blade V580」だ。
3機種がメタル素材を採用、REIはカラーが豊富
まずは外観から見ていこう。4機種を並べてみて、最初に目につくのがディスプレーサイズの違いである。P9 liteとREIは5.2インチと、スマホとしては標準的なサイズ、ZenFone MaxとBlade V580はiPhone6s Plusと同じ5.5インチディスプレーを採用している。
機種名 | HUAWEI P9 lite | REI(FTJ161B-REI) |
---|---|---|
サイズ | 146.8(H)×72.6(W)×7.5(D)mm | 145.8(H)×71.5(W)×7.2(D)mm |
重量 | 約147g | 約136g |
ディスプレー | 5.2インチ IPS液晶 フルHD(1920×1080) | 5.2インチ IPS液晶 フルHD(1920×1080) |
カラー | ゴールド、ホワイト、ブラック | メタルブラック、メタルシルバー、シャンパンゴールド、ピンクゴールド、スカイブルー |
機種名 | ZenFone Max(ZC550KL) | Blade V580 |
サイズ | 156(H)×77.5(W)×5.2~10.55(D)mm | 約155.3(H)×77.2(W)×8.55(D)mm |
重量 | 202g | 約165g |
ディスプレー | 5.5インチ IPS液晶 HD(1280×720) | 5.5インチ IPS液晶 フルHD(1920×1080) |
カラー | ブラック、ホワイト | シルバー、グレー |
機種名 | (参考)iPhone 6s | (参考)iPhone 6s Plus |
サイズ | 約138.3(H)×67.1(W)×7.1(D)mm | 約158.2(H)×77.9(W)×7.3(D)mm |
重量 | 143g | 192g |
ディスプレー | 4.7インチ IPS液晶 Retina HD(1334×750) | 5.5インチ IPS液晶 Retina HD(1920×1080) |
カラー | シルバー、スペースグレイ、ゴールド、ローズゴールド | シルバー、スペースグレイ、ゴールド、ローズゴールド |
P9 liteとREIを5インチディスプレーの「iPhone 6s」と比べた場合、両機種ともディスプレーが大きい分サイズはやや大きめ。厚みはiPhone 6sの7.1mmに対し、P9 liteが7.5mm、REIが7.2mmとわずかに厚い。重量は、iPhone 6sの143gに対し、P9 liteが約147gとほぼ同等。REIは約136gと、iPhone 6sより軽い。
一方ZenFone MaxとBlade V580は一回り大きいが画面は見やすい。ただし、P9 liteとREI、Blade V580の解像度がフルHD(1920×1080ピクセル)であるのに対し、ZenFone MaxはHD(1280×720ピクセル)なので、写真や映像の表示がやや粗くなる。なお、5.5インチの2機種を、同じ5.5インチディスプレーの「iPhone 6s Plus」と比べた場合、厚さの面では7.3mmと薄いiPhone 6s Plusに軍配が上がるものの、重さの面ではBlade V580が約165gと、192gのiPhone 6s Plusより軽量だ。
価格で見ればiPhoneの半額以下の、これらSIMフリースマホだが、サイズ面ではiPhone 6sやiPhone 6s Plusとほぼ同等レベルを実現している。
続いてデザインと質感を見ていこう。P9 liteとREI、Blade V580の3機種は側面に金属素材を採用して高級感を打ち出している。REIとBlade V580は背面も金属素材を使っており、P9 liteとREIの側面は、金属の地色を削り出し、美しいデザインを実現するダイヤモンドカットを施している。いずれも、最近のスマホのデザイントレンドを踏襲しており、美しく高級感がある。iPhoneなどと並べても見劣りしない。
一方、ZenFone Maxのボディーは樹脂素材。高級感はないが、背面にレザー風の加工が施されており、触感は上々だ。
持ちやすさに関しては、ディスプレーサイズが小さいP9 liteとREIが有利だが、画面の大きさとトレードオフとなるだけに、サイズを取るか持ちやすさを取るかは悩ましいところだ。ちなみにZenFone Maxは背面をラウンドさせることでフィット感を高めており、他の3機種も側面に丸みを持たせるなど、それぞれ持ちやすくするための工夫がなされている。
カラーバリエーションに関しては、ZenFone MaxとBlade V580が2色、P9 liteが3色であるのに対し、REIは5色。さらに今夏から秋にかけて、メタルレッドという新色のモデルが登場する。
ベンチマークテストはP9 liteが有利、バッテリーはZenFone Maxが圧倒的
続いて性能面を確認してみよう。CPUやグラフィック処理などを内蔵したチップセットを見ると、REIとBlade V580はメディアテック製の同じものを採用しているが、P9 liteはファーウェイ傘下企業が開発した独自のもの、ZenFone Maxはクアルコム製のものを使っているため、性能面でどれだけ違いがあるのか見えにくい。
機種名 | HUAWEI P9 lite | REI(FTJ161B-REI) |
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チップセット | Kirin650 オクタコア 4×2.0GHz+4x1.7GHz | MT6753 オクタコア 1.3GHz |
RAM | 2GB | 2GB |
ストレージ | 16GB | 32GB |
microSD | 最大128GB | 最大128GB |
SIMスロット | ナノ×2 うち1つはmicroSDと共用 | マイクロ×1、ナノ×1 うち1つはmicroSDと共用 |
バッテリー | 3000mAh | 2800mAh |
連続待ち受け時間 | LTE:約610時間 3G:約630時間 | LTE:約288時間 3G:約285時間 |
連続通話時間 | 約18.9時間 | 約750分 |
指紋センサー | あり(背面) | あり(前面) |
機種名 | ZenFone Max(ZC550KL) | Blade V580 |
チップセット | Snapdragon 410 クアッドコア 1.2GHz | MT6753 オクタコア 1.3GHz |
RAM | 2GB | 2GB |
ストレージ | 16GB | 16GB |
microSD | 最大64GB | 最大32GB |
SIMスロット | マイクロ×2 | ナノ×2 うち1つはmicroSDと共用 |
バッテリー | 5000mAh | 3000mAh |
連続待ち受け時間 | LTE:約683.6時間 3G:約914.4時間 | 約600時間 |
連続通話時間 | 約2258分 | 約30時間 |
指紋センサー | なし | あり(背面) |
そこでここでは、CPUやグラフィックなどの性能を測定する、Android向けベンチマークアプリの一つ「Antutu Benchmark」を使って、各機種の性能を測定した。
機種名 | HUAWEI P9 lite | REI(FTJ161B-REI) |
---|---|---|
総合 | 53161 | 37166 |
3D | 9662 | 5398 |
UX(ユーザー体験) | 19495 | 14494 |
CPU | 19226 | 12623 |
RAM | 4778 | 4651 |
機種名 | ZenFone Max(ZC550KL) | Blade V580 |
総合 | 26213 | 38095 |
3D | 868 | 5167 |
UX(ユーザー体験) | 11276 | 15085 |
CPU | 11316 | 13049 |
RAM | 2753 | 4794 |
結果を見ると、P9 liteがほぼ全ての項目で最も高いスコアを出している。それに続くのはBlade V580とREI。同じチップセットを使っているので性能はほぼ同等だ。ZenFone Maxは性能面でやや低い。通常の操作や、メールなど軽いアプリでは動作の差を大きく感じることはなかったが、ゲームなど動作が重いアプリを使った場合、差が出てくる。
ZenFone Maxは、実売価格で1万円台の「ZenFone Go」をベースに作られていることから、他の機種より性能が低いが、一方で他の機種よりも圧倒的に上回っているポイントがある。それがバッテリー容量だ。他の3機種は、バッテリー容量が2800~3000mAhと大きな差がないのに対し、ZenFone Maxはなんと5000mAhもの容量を搭載。スペック上では連続通話時間が2258分と、他を圧倒している。
実際に使用していても、バッテリーの持続時間は他と比べかなり長いと感じる。その分重量が202gとやや重いが、予備のモバイルバッテリーを持ち歩くことを考えれば、それほど重いわけではないだろう。バッテリーの持ちを重視するならZenFone Maxが最も有利だ。
ちなみに、ZenFone Maxを除く3機種には指紋センサーが搭載されている。REIは前面のホームボタン、P9 liteとBlade V580は背面に、指紋センサーがある。認証スピードに関してはP9 liteとBlade V580が速く、REIはそれよりやや遅めという印象だ。
auのMVNOには非対応、Wi-Fiの5GHz対応はREIのみ
もう一つ、基本的な性能として気になるのが通信機能だ。LTEは4機種共にキャリアアグリゲーションに非対応であるため、理論値での下り最大速度は150Mbps。対応するバンド数には違いがあるものの、いずれもLTEではバンド1(2GHz帯)、3(1.7GHz帯)、8(900MHz帯)、19(NTTドコモの800MHz帯)に対応している。
機種名 | HUAWEI P9 lite | REI(FTJ161B-REI) |
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最大通信速度 | 下り150Mbps/上り50Mbps | 下り150Mbps/上り50Mbps |
対応バンド(3G) | 1/5/6/8/19 | 1/6/8/19 |
対応バンド(LTE) | 1/3/5/7/8/19/28/40 | 1/3/7/8/19/20 |
Wi-Fi | 802.11b/g/n | 802.11a/b/g/n |
機種名 | ZenFone Max(ZC550KL) | Blade V580 |
最大通信速度 | 下り150Mbps/上り50Mbps | 下り150Mbps/上り50Mbps |
対応バンド(3G) | 1/2/5/6/8/19 | 1/6/8/19 |
対応バンド(LTE) | 1/3/5/6/8/9/18/19/28 | 1/3/8/19 |
Wi-Fi | 802.11b/g/n | 802.11b/g/n |
NTTドコモはLTE通信で、バンド1、19を用いて日本全国を広くカバーしており、バンド3と21(1.5GHz帯)は高速通信用に用いている。またソフトバンクは、バンド1、3、8をLTEで主に使っている。それゆえいずれの機種も、NTTドコモやそのMVNO、そしてソフトバンクやワイモバイルのSIMでは問題なく利用できることが分かる。
しかしauのネットワークに関しては、通信方式の違いや周波数帯に起因する問題などから、P9 liteやREIなどは対応していないことをうたっている。auやそのMVNO(UQ mobileなど)のSIMで、今回紹介する機種を利用するのは難しい。
一方で、機種間で違いがあるのがWi-Fiである。実は4機種のうち5GHz帯の802.11aに対応しているのはREIだ。都心部の公衆無線LANなどでは、最近2.4GHz帯の混雑が激しくWi-Fiが遅いという所も少なくないだけに、公衆無線LANの混雑を避けたいならREIが有利だろう。
カメラはBlade V580が高評価、P9 liteは接写に弱い
利用頻度が高く、スマホを選ぶときの大きなポイントの一つであるカメラの機能を見よう。スペックを見ると、メーンカメラはいずれも1300万画素のものを採用しており、一見大きな差はないように見える。
機種名 | HUAWEI P9 lite | REI(FTJ161B-REI) |
---|---|---|
メーンカメラ | 1300万画素 | 1300万画素 |
フロントカメラ | 800万画素 | 800万画素 |
機種名 | ZenFone Max(ZC550KL) | Blade V580 |
メーンカメラ | 1300万画素 | 1300万画素 |
フロントカメラ | 500万画素 | 500万画素 |
実際に撮影してみた。4機種とも初期設定の状態で、さまざまなシチュエーションで撮影して見比べてみると、いくつかの違いが見えたように感じる。あくまで筆者の主観だが、明るさや色の再現性、細部の表現など総合的に見るとP9 liteとBlade V580が良い。中でも、明るさの面ではP9 liteがやや上だと感じた。
しかしながらP9 liteはマクロ撮影が苦手なようで、接写時にフォーカスが合わないことが多い。撮影シーンの広さではBlade V580の方が上だ。一方、REIは細部が潰れやすく、細かな表現が苦手なようだ。またZenFone Maxは全般的に写りが暗くなりがちで、特に薄暗い場所などは苦手なように感じた。
また自撮りなどに用いるフロントカメラは、画素数で見るとP9 liteとREIが800万画素、ZenFone MaxとBlade V580は500万画素である。実際に撮影した写真を見ると、色の再現性や細部の表現など、絵作りの傾向はいずれもメーンカメラと似ているようだ。いずれの機種も人肌を美しく見せる「ビューティーモード」などの機能を用意しており、自撮り人気をしっかり反映している。
話題の「ポケモンGO」、遊べない機種もある
ソフト面で見ると、OSにはP9 liteとREIがAndroid 6.0を採用しているが、Blade V580はAndroid 5.1、ZenFone MaxはAndroid 5.0とやや古いバージョンだ。この辺りはグローバルでの発売時期などが影響しているとみられるが、ZenFone Maxは海外でAndroid 6.0.1へのアップデートが始まっている。現在のところアップデートの発表がないBlade V580も含め、国内でのOSアップデートが待たれるところだ。
またホーム画面のユーザーインターフェースは、Blade V580はAndroid標準のものに近いものの、他の3機種は独自のものを採用。ちなみにP9 liteとREIはアプリを呼び出すドロワーがなく、iPhoneのようにホーム画面上に全てのアプリアイコンが並ぶ仕様となっている。
中でも独自性が強いのがREIで、画面下部をスワイプして各種設定などが切り替えられる「スワイプアップランチャー」を備えるなど、さまざまな工夫が凝らされている。一方で、初期状態では画面下部のナビゲーションバーがなく、指紋認証センサーを備えたホームボタン「FREETELボタン」をダブルクリックしてアプリ履歴を表示したり、ボタンをスワイプして「戻る」の操作をしたりするユーザーインターフェースを使っている。
一度操作に慣れてしまえば便利ではあるのだが、Android標準の操作とは大きく異なるため、初めて使う人はかなり戸惑ってしまう印象を受ける。これらは設定でAndroid標準に近い操作体系に変更可能なので、気になる人はあらかじめ設定を変更しておくといいだろう。
ちなみにソフト面でもう一つ、人気のゲームアプリ「ポケモンGO」が遊べるかどうかも確認してみた。結果、REIとBlade V580は問題なくプレーできたものの、P9 liteはプレーできるがジャイロセンサーがないためARモードが利用できない。またZenFone Maxは、そもそもアプリのダウンロード自体できなかった。
エイスース製のスマホはポケモンGOに非対応のものが多いだけに、その辺りの影響を受けているのかもしれない。この点に関してエイスースの日本法人であるエイスースジャパンは、「ポケモンGOの検証は(開発元である)ナイアンティック側で実施しており、メーカー側では対応・非対応に関してコメントできない。公式サイトでの対応状況を確認してほしい」と話している。
総合的な評価ではP9 liteに軍配
いずれの機種も家電量販店や主要通販サイトなどで販売されているので、購入はしやすい。だがREIはプラスワン・マーケティングが提供する「FREETEL SIM」とのセット販売、P9 liteやZenFone Maxも各MVNOでSIMとのセット販売がなされているので、格安SIM初心者にも購入しやすいのがメリットとなるだろう。
独自のサポートに関しては、REIは破損や紛失、1年を超えた自然故障などをカバーする有料補償サービス「PREMIUM 補償」を用意している。またファーウェイは東京・銀座に直営のサポート拠点「ファーウェイ・カスタマーサービスセンター」を用意しているので、P9 liteを購入した首都圏のユーザーにはメリットとなるだろう。
以上、さまざまな点からSIMフリースマホ4機種を比較してみた。総合的に評価すると、P9 liteが最もバランスが取れていると感じた。片手でも比較的持ちやすいサイズ感であることに加え、この価格帯のモデルとしては基本性能やカメラ性能が高いことなどが、好感度を高めている。ただし、カメラのマクロ機能には難点があるので、マクロ重視の人には薦められない。
REIはカラーバリエーションの充実などデザイン性の高さに加え、Wi-Fiで5GHz帯に対応している点が評価できる。初期状態での操作方法にやや癖があるのが惜しまれる。
Blade V580はこれ、という目立った特徴はないが、欠点なくまとめた好機種である。ゲームや動画などを楽しむため大画面が欲しい人であれば、5.5インチサイズでカメラ性能も高く、有力な選択肢となるだろう。
そしてZenFone Maxは、バッテリーの1点のみが驚異的で、あとは全体的にやや低めの印象だ。ただ、大バッテリーのメリットが一番得られるはずのポケモンGOが動作しないのが、残念だ。
SIMフリースマホは、一見するとみな同じように見えてしまう。だがメーカー各社は独自の要素を盛り込み、差別化を図っている。そうした各機種の特徴を踏まえながら、自分の好みに応じて選んでみることをおすすめする。
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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