復興への希望 「ななつ星」 熊本地震乗り越えて

九州旅客鉄道(JR九州)が運行する豪華寝台列車「ななつ星in九州」が奮闘しています。4月14日に発生した熊本地震により約3週間、運休を余儀なくされたものの、運転再開後に懸命に走る姿は被災地に勇気と希望を与えています。2013年の運行開始から約3年が経過した現在も人気が続いており、九州を世界に売り出す大役も担っています。「ななつ星」を運行するJR九州の取り組みと震災に負けじと奮闘する被災地、観光関係者らの姿を、BSジャパンの日経プラス10特別編「九州に生きる“ニッポンブランド”-ななつ星in九州 震災に克つ-」(8月14日日曜日午後7時~8時54分放送予定)で紹介します。

まずは、熊本地震の被災地のみなさまにお見舞い申し上げます。震災からほぼ4カ月、1日も早く元の生活に戻れるよう、番組スタッフ一同、心よりお祈り申し上げます。

今回の番組は当初「ニッポンのブランド戦略を探る」をテーマに、400年の歴史を誇る佐賀の有田焼、風光明媚(めいび)な阿蘇地方などを訪ねながら、「ななつ星」の車内で作家の五木寛之さん、前地方創生担当大臣の石破茂さんらと「日経プラス10」のメーンキャスター、小谷真生子さんが対談し、ゴールデンウイーク(GW)に放送する予定でした。

小谷キャスターと対談する、デザイナーの柳原照弘さん(右)
コーヒーを飲みながら「ななつ星」のラウンジでくつろぐ五木寛之さん

撮影は3月上旬に実施。放送予定日に向けて追加取材や編集作業など準備を進めていたところに、熊本地震が発生しました。被害の状況を受けて放送中止を決めました。

脱線した九州新幹線の車両を撤去する(4月18日午後、熊本市西区)=写真 高木雄一郎

地震発生時、「ななつ星」は熊本県八代市にある肥薩おれんじ鉄道の肥後二見駅に停車中でした。夕日が沈む海岸の景色を眺めた後のディナータイム。乗客・クルーにけがなどなかったのは幸いでしたが、ツアーを中断してバスによる代行輸送で福岡に戻らざるを得なくなりました。このときのクルーの奮闘は「熊本地震その時…『ななつ星』気迫のおもてなし」(日本経済新聞電子版5月28日公開)をぜひご参照ください。

JR九州は「ななつ星」の運行ルートである豊肥本線や九州新幹線が被災して運休を強いられました。九州新幹線は熊本駅付近で回送列車が脱線。運転再開には時間がかかるとみられていましたが、中越地震や東日本大震災などでの復旧作業で積み上げたJR東日本などの経験を生かしつつ、JR各社の応援を受けて約2週間で復旧にこぎ着けました。

5月7日から運行を再開した(JR博多駅)

「ななつ星」は熊本から阿蘇を経由して大分に至る豊肥本線が土砂崩れや落石など甚大な被害を受けたため、ルートを変更したり、立ち寄り先に福岡県柳川市などを新たに加えたりして、地震発生から3週間後の5月7日に運転再開に踏み切りました。

再び走り出した「ななつ星」を沿線住民らは歓迎する一方、クルーも見学者らにお菓子を配るなど地震によりふさぎ込みがちだった九州の人々に大きな勇気を与えました。このような地元の様子を見て、番組スタッフは放送実現に向けて動き出しました。当初計画していた内容を見直し、九州の強さ=ブランド力を探るとともに復興をバックアップする番組に構成できるよう取材を再開したのです。

石破茂・前地方創生担当相と小谷キャスター
小谷キャスターと対談する、経営コンサルタントのルース・ジャーマンさん

3月のロケに参加した五木寛之さん、石破茂さんらにも改めてお話をうかがいました。九州ブランドの強み、底力について改めて尋ねました。

福岡県出身の五木さんは子供のころから身近に感じていた隣県、熊本の被災に心を痛めたそうで、「『ななつ星』の運行再開に、原爆が落ちて数日で運転を再開し人々を勇気づけた広島の路面電車を想起した」と話します。鉄道ファンで知られる石破さんは「地震発生時の『ななつ星』のクルーの対応こそ、九州の誇れるおもてなし」と称賛しています。

不通になった豊肥本線の現場からリポートする小谷キャスター

小谷キャスターも『プラス10』の放送の合間を縫うように、現地を再訪してギリギリまで取材を重ねました。

スタッフも頻繁に現地に足を運び、被災地と住民、観光業界などを取材しました。大分・由布院は1975年(昭和50年)に発生して大きな被害をもたらした大分県中部地震後の街づくりをヒントに、観光関係者らが音楽祭の復活などを企画しているそうです。

巨大な岩が豊肥本線の線路をふさいだ

一方、熊本では豊肥本線の阿蘇~豊後荻が7月9日に復旧して大分から阿蘇に至るルートはつながったものの、肥後大津~阿蘇は依然として復旧のめどが立っていません。トロッコ列車などで人気の高い第3セクター、南阿蘇鉄道(立野~高森)も7月31日に中松~高森で一部運転を再開しましたが、全線復旧には多額の費用と時間がかかります。阿蘇地域の観光は回復に時間がかかりそうです。

改めて巨大地震による被害の深刻さを痛感します。ただ、現地では希望を胸に立ち上がろうとしている住民や自治体職員、観光関係者が大勢いらっしゃいます。

番組をご覧になれば、「ななつ星」を軸にした住民や関係者らの一体感を感じ取れるはずです。「ななつ星」は復興に向けた「希望の星」であり、これこそ世界に誇れる九州の強さ、ブランド力なのかもしれません。

最後に、番組スタッフ一同、これからも取材を続けて、復興のお役に立てればと考えています。

(コンテンツ編集部 苅谷直政)

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