「ブラック求人」に注意 転職する前の見極め方
働き女子のお金レスキュー隊!
労働者を酷使し、使い捨てる「ブラック企業」。そんな企業に人を呼び込む情報を、最近では「ブラック求人」と呼びます。ブラック企業は、求人広告でも実にうまく誘いをかけます。見極め方を覚えておきましょう。
求人の際には、職業安定法という法律で、働く上で重要な以下の6つの項目を明示するように義務づけられています。
2.労働契約期間
3.就業場所
4.始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩時間および休日
5.賃金額
6.健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険の適用の有無
しかし、これらの明示が必要なのは、ハローワークや民間の人材紹介会社などでの職業紹介だけ。求人誌や新聞などでの求人広告については、掲載スペースが限られるという理由で、義務づけられていません。
そこで、ブラック企業を見極めるために、"決まり文句"を読み解く知識を持ちましょう。
1.業務経験不問、未経験者歓迎
こういったキャッチフレーズを見て、「私も働けそう」と思ったあなたは、残念ながら社会を知らない。私も経営者だから分かりますが、企業は即戦力を採用したいもの。"条件を問わず、とにかく人が欲しい"。これは大量に採用して残った人がいればもうけもの、というブラック企業の可能性ありです。
また、この手の会社の求人では、「やる気さえあれば」「諦めない粘り強さ」など、精神論を強調するのも特徴です。
2.給与が高過ぎるか、幅が広い
掲載されている給与が同業他社に比べて高過ぎる場合、残業代込みでの給与でないか、確認したほうがいいですね。月給30万円といいながら、実は月45時間の残業代が含まれていた、なんてことは珍しくありません。
また、給与の幅が広く、「月収25万円から50万円、実力次第」などと書かれたケースも怪しい。どうしたら月50万円もらえるのかが、定かではありません。
3.仕事内容が明確ではない
「企画営業」という求人で入社したら、実際の仕事は飛び込み営業。ノルマが達成できないと給与も下がった……。曖昧な表現で厳しい仕事内容を明示しないのも、典型例ですね。
甘い誘い文句はまだあります。
・若手でも実力があれば幹部に昇格→昇格できる前に辞める社員が多いのでは?
・営業職なのにノルマなし→営業職で売上目標がないケースはほとんどありません。
また、1年中、求人広告を出しているのもブラック企業の特徴。それだけ人が辞めているということです。
面接では疑問点を聞き、重要な条件は文書でもらう
求人広告には気になる点があるけれど、興味があるという会社なら、面接で疑問点をぶつけましょう。曖昧な部分は、納得するまで確認を。落とされたくないと思うほど遠慮がちになりますが、皆さんの人生を左右する重要なポイントです。
面接で合格しても、まだ、雇用契約を結んだわけではありません。最終の儀式、労働条件の明示義務が残っています(会社によっては、採用決定面接と雇用契約を結ぶ日が同じケースもあります)。
労働基準法では、業務内容、労働時間、賃金の計算方法、退職に関する事項など、重要な5項目について、文書で明示する義務を課しています。文書がもらえないのは論外です。ブラック企業の可能性が高いと言えますね。そして、就業規則もしっかり確認しましょう。
文書があれば、採用された後に労働条件が違っていた場合、労働基準法に基づき、労働者側からただちに労働契約を解除できます。転職に伴って引っ越しをした後でも大丈夫。契約解除の日から14日以内に帰郷する場合には、会社側が必要な旅費などを負担しなければならない定めがあります。
今月の回答者
北村庄吾さん
1991年に国家資格者の総合事務所「BraiN」を設立。著書に『給与明細で騙されるな』(朝日新書)、『やさしくわかる給与計算と社会保険事務のしごと』(日本実業出版社)など。給与計算実務能力検定1級・2級の試験を、10月30日に全国主要都市で実施。http://jitsumu-up.jp/
[日経ウーマン 2016年9月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。