友人のネガティブトークが止まりません
著述家、湯山玲子
学生時代からの女友達のネガティブな弾丸トークに困っています。会うと仕事や職場の人間関係の愚痴を延々聞かされます。聞き役に徹しますが、疲れます。私が困っていること、楽しい話題をキャッチボールしたいことを、傷つけずに知らせるにはどうしたら良いでしょう。(大阪府・女性・40代)
本当に仕事というものは大変です。私は新卒で入った会社に13年ほど勤めたのですが、最後の5年間は不満タラタラ。友人と毎晩のように飲み歩き、会社のばか者たちの悪口や愚痴をディテールたっぷりに弾丸トークしていました。なので質問者の困ったお友達は「そりゃ私か!?」ってなものです。
「そんなに会社が嫌なら辞めればいい」と、分かりきった結論を実行する勇気もなく、飲んで愚痴る私を何人かの友人はいつも辛抱強くつきあってくれました。そして悪態と酒の日々も終わりが来て、とうとう私は会社を辞めフリーランスになり、今に至るわけですが、その時分、ネガティブの極北状態だった私につきあってくれた彼女たちには、本当に感謝しているのです。なぜなら、私は延々と愚痴りながら言葉にして話すことで、その実、心の中のモヤモヤを整理し、自分の仕事と人生をどうしたいか、という意志をちゃっかり育んでいたのですから。
要するに相談者の困った友人は当時の私と同じように、相談者に甘えて頼ってきているのです。とすれば、相談者は覚悟を決めなければなりません。しばらくは友人のサンドバッグとなり、愚痴の連打を浴びせられるのを我慢するか、「もう御免だ」と疎遠になっていくか。
そして私のアドバイスとしては、ぜひ、前者を選んでいただきたいのですよ。なぜなら、人間関係の基本は「困ったときに助けてあげるし、助けてももらえる」というもの。それを実行するということは、財布を忘れた友人に3千円貸す程度の、無理のない範囲で行うものではなく、明らかに自分に大損や不快感を伴う場合が大半なのです。
加えて、私は相談者が心の中で思い込んでいる、「ネガティブは悪」という思考がちょっと気になります。友達と「楽しい会話をキャッチボールしたい」といいますが、そういった社交マナーのような人間関係ばかりを追い求めていると、愛し愛される、お互いに尊敬し合う、といった本当に人生の支えになる人間関係はまず作れません。
とはいえ、愚痴のサンドバッグ役はあまり面白くないことは事実。ならばいっそ、逃げずに突っ込んでみては? 要するにカウンセラーか、ドストエフスキーばりの人間小説を一冊読む勢いで、彼女の悩みの本質は何か、膨大な愚痴データの中から言い当てていくのです。ソンしてトクを取るとはこのこと。彼女という「小説」は、相談者の人間性を相当深いものに持っていってくれそうですよ。
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[日経プラスワン2016年8月13日付]
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