落語ブームを支えるアニメ女子の妄想力 立川志ら乃

日経エンタテインメント!

たてかわ・しらの 1974年、東京都出身。98年3月に立川志らくに入門。03年5月に立川談志による昇格試験に合格し、前座から二つ目に昇進。12年12月に真打に昇進。(写真:武藤奈緒美)

落語はドラマや映画でモチーフになることも多い定番の芸能だが、現在はアニメをフックにブームが到来中だ。『昭和元禄落語心中』が2016年1月クールでアニメ化されると、新宿末広亭が若者でにぎわう様子がニュースになった。ワンコインで見られる寄席や、神保町の「らくごカフェ」なども盛況だという。この状況を落語家当人はどう見ているのか。WWE所属の女子プロレスラー・明日華と、声優の関智一を“客分の弟子”に持ち、ハロー!プロジェクトメンバーなど、アイドルたちへの落語指導経験もある立川志ら乃に話を聞いた。

観客の9割が初めて来た人

落語が今ブームになっているのは、私も感じています。先日出演した『渋谷らくご』では、初めて来た方が9割で、驚いて。

まず『落語心中』でアニメ好きの間で関心が高まって、寄席がいつもとは違う層でにぎわうようになった。同時に、大ヒットした『おそ松さん』がらみの落語で構成した『落語松』(春風亭吉好による落語会)がドンときて。ドラマでも、『重版出来!』で夢に挫折した人が後輩に「これ聞けよ」って落語の音源を渡すシーンがあったりと、落語を身近に感じる動きが同時多発的に起きたのは大きいです。当事者にアピールされるより、自分が好きな世界から入るほうが興味が引かれるじゃないですか。

それに加えて、アニメ好きや声優ファン、“腐女子”と呼ばれる人たちは、落語を聞く能力が高い。妄想することに長(た)けているので、「いい女だな」という一言で、それぞれが確実にいい女を思い浮かべられる。落語って衣装やセットもないですし、身振りと声だけで1人何役も演じるものですから、聞く人の想像で広がる世界なんです。例えば『おそ松さん』なんて、キャラの見た目は全部ほぼ同じですよ。それが「私はカラ松が好き」とか、好みが分かれるんですから、アニメ好きと落語というコンテンツは相性がぴったりなんでしょう。

私も以前は「玄人にきちんと受けたい」と頭が固かったけれど、近年はエンタテインメントなんだから関係ないだろうって。『スーパーマン』を基に、天狗と鬼が戦う新作落語を作ったり、マクラ(噺の導入)で閉店間際のスーパーの値引きの話や、ポムポムプリンの話をしたりと、落語初心者や女性にもとっつきやすいネタを入れています。盛り上がっている今、気軽に聞きに来てほしいです。

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2016年8月号の記事を再構成]

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
エンタメ!連載記事一覧