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倍率が高すぎるとダメ 双眼鏡&天体望遠鏡選びのツボ 大人のための天体観測入門2

2016/8/9

PIXTA

8月12日、13日に見ごろを迎えるペルセウス座流星群にはじまり、毎月のように天体ショーが予定されている2016年。天体観測に専門的なイメージがある人もいるかもしれないが、最近は手軽に見られる双眼鏡や、安価な天体望遠鏡も増えてきている。今年の天体ショーで使いたい、初心者向けの双眼鏡・天体望遠鏡を紹介しよう。

前回(「売れるポーチ付き双眼鏡 天体観測を楽しむ女性たち」)で解説したように、天体を見るのに使う道具は、主に双眼鏡と天体望遠鏡の2つだ。双眼鏡は星座や流星群、天体望遠鏡は火星や土星などの天体を見るのが得意と、それぞれに特徴があり、自分が見たいものによって選び方が変わってくる。

まずはより安価に、手軽に楽しめる双眼鏡の選び方から紹介していこう。

天体観測用の双眼鏡を選ぶ際のポイントは、倍率が高すぎないものを選ぶことだ。一般的な双眼鏡の倍率は6倍から10倍。初心者はつい倍率が高いほうがよく見えると思いがちだが、実は倍率の低い6倍のほうが天体観測には向いている。これは倍率を上げすぎると見られる範囲が狭まり星を探しにくくなるうえ、手ぶれの影響も受けやすくなるからだ。また、天体観測は慣れていないと対象を探しにくく、見つけた星を見失ってしまうこともある。

「一般的な双眼鏡の倍率であれば、6倍でも10倍でも、一つの星の見え方に違いはほとんどありません。倍率を上げれば多少は星が大きく見えるようになりますが、星座などを形作る恒星は倍率をどれだけ上げても光の粒にしか見えず、土星や火星など、惑星の表面をじっくり観察するにはどちらにしても倍率が足りません。それよりは倍率を抑え、なるべく星空の広範囲を視界に収めたほうが楽しめます」(スターベース・東京、池之上武さん)

■星空専用の双眼鏡 「SG2.1×42」

「SG2.1×42」(2万5920円)。縦54×横128×高さ46ミリメートルという薄型の双眼鏡。ポケットにも入る大きさだが、重量は410グラムと持ってみると意外に重く感じる ※記事中の価格はヨドバシカメラマルチメディアAkibaとスターベース・東京にて調査。税込み

「気軽に星空を観察したい人から人気を集めている」とヨドバシカメラマルチメディアAkibaの三浦優作さんが教えてくれたのが、2013年に発売されたビクセンの「SG2.1×42」だ。ビクセンは「星空を見せる会社」を方針に掲げ、天体望遠鏡や双眼鏡などの開発に力を入れている。そんな星を見せることへのこだわりから生まれたともいえるのがこの双眼鏡だ。

通常の双眼鏡とは違う、見慣れないフォルムが印象的だが、これは実は「星空専用の双眼鏡」。星空観察へのこだわりが、筒が短くレンズの大きい姿にあらわれている。

「双眼鏡は倍率を上げると見られる範囲が狭くなってしまう。このSG2.1×42は倍率を2.1倍と低く抑えているぶん、天の川にある星々を多く視野に捉えられるほど広範囲の星空が見られるんです」(三浦さん)

微細な光も捉える高品質なレンズを使用しているため、肉眼で見るよりもずっと星が明るく見える。これにより、普段人工の明かりに負けてしまう都会でも、星をはっきりと観察することができる。ビクセン企画部の藤田綾香さんによれば、SG2.1×42を使用することで「実は身近なところに星空があった、と感動する人は多い」という。

SG2.1×42で夜空を見たイメージ画像。肉眼でもはっきり確認できるオリオン座を、よりくっきりと見ることができる

「都市部にいると、肉眼で確認できる星は数えるほどです。ですが、見えないだけで実際は無数の星が輝いている。夜空にいっぱいの星の姿を見て感動をしない人はいないはず。星空に対する価値の再認識をしてもらうために開発したので、都心にいる人にこそ仕事帰りなどに気軽に星空を見てほしいです」(藤田さん)

星は好きだが都心を離れて天体観測ができない人にこそ、ぜひ手にとってみてほしい双眼鏡だ。かばんの中に忍ばせて、帰り道に天体観測を楽しみたい。

■まるで星空を散歩しているよう 「YF30-6」

「YF30-6」(8350円)。縦114×横160×高さ48ミリ。重さは470グラムと軽い。ラバーコートがされているため、握った時に手によくなじむ

双眼鏡の長所は一つの星をじっくり観察するのではなく、星空全体を眺められる点にある。池之上さんが「星空散歩するように見られる」というのが、医薬品の開発でも知られるコーワのYF30-6だ。コーワは業務用の光学機器の開発で培った技術を用い、望遠鏡や双眼鏡の開発にも力を入れている。

倍率は6倍と一般的な双眼鏡としては低めながら、ビクセンのSG2.1×42の2.1倍に比べると高く設定してある。広範囲の星空を一度に見られると同時に、明るい星雲などの細かい天体も観察できるバランス型だ。星雲はその名の通り、白っぽい小さな雲のように見えるという。

また、双眼鏡の視野全体を確認できるアイレリーフ(レンズと瞳の距離)の値が大きいのも特徴。アイレリーフが大きいほど、レンズと目が離れていてものぞきやすく、眼鏡をかけている人でも難なく観察することができる。

「星に限らず、風景を見たりバードウオッチングをしたりする時も使えます。幅広い用途で使えるので、初心者の方でも手を出しやすいのではないでしょうか」(池之上さん)

■天体望遠鏡は価格で選んでも大丈夫

続いて、火星や土星などの天体観測を楽しめる天体望遠鏡の選び方を紹介しよう。

初心者が天体望遠鏡を購入する場合は、5万円前後のものを選びたい。天体望遠鏡としては比較的安価な価格帯だが、最近はしっかりしたものが増えており、またレンズなどをオプション購入することで後からグレードを上げることも可能だからだ。

加えて、初心者は見たい星を探し出せずにつまずくことがあるため、見たい星を見つけてくれる自動導入機能付きのものや、ピントを合わせやすいものがおすすめ。どれが良いのかは初心者では分からないので、ネットショップよりも相談しながら検討できる実店舗で購入したい。

池之上さんが「近年若い男性の間で増えている」というように、天体写真を撮影したい場合も、上記の基準で天体望遠鏡を選んで構わない。

「基本的には接眼レンズにスマートフォン(スマホ)やデジタルカメラをのぞかせるだけで撮影できますが、手ぶれが気になる場合はスマホやカメラを天体望遠鏡と固定するアダプターを使用するのがおすすめです。また、惑星の模様をきれいに撮影したい場合は露出補正機能を使うと色飛びを抑えられます」(池之上さん)

天体写真を撮る時にあると便利な、ビクセン「ユニバーサルデジタルカメラアダプターII」(1万260円)。写真のように、天体望遠鏡の接眼レンズに固定して使用する。天体写真は暗い場所での撮影となり露出時間が長くなるため、こうしたアイテムがあると手ぶれを防ぐことができる

■見たい星を自動で探知 「スカイエクスプローラーSE-GT100N」

Kenko Tokina「スカイエクスプローラーSE-GT100N」(4万3200円)。鏡筒部分は直径140×長さ420ミリ、重さ1.6キログラム。三脚・架台は高さ840~1375ミリメートル、重さは3.4キログラム。10万円を超えることも多い自動導入機能つきの天体望遠鏡としては破格の値段だ

天体観測入門者が困るのが、見たい星をなかなか探し出せないこと。知識がない中で無数の星空から目当ての星を見つけるのは、星座早見盤があっても難しい。そんな人にぴったりの望遠鏡が、天体望遠鏡や双眼鏡、デジタルカメラなどの製造・輸入を行うKenko Tokina(ケンコー・トキナー)の「スカイエクスプローラーSE-GT100N」だ。

「見たい星を発見し、追尾してくれる自動導入機能が特徴です。約4万個以上もの天体の情報が入っている『NEWスカイコントローラー』を使って、目的の星を探し、すぐに見つけることができます」(ヨドバシカメラ・マルチメディアAkiba店 三浦優作さん)

こうした自動導入機能付きの天体望遠鏡は以前からあったが、どれもマニア向けのもので、価格も10万円を超えるなど初心者は手を出しづらかった。しかし現在は技術開発の発達により、手ごろな値段で初心者でも気軽に手に入るようになってきたという。

「スカイエクスプローラーSE-GT100Nに付属する「NEWスカイコントローラー」。自動導入機能は星座の配列や星の名前が分からないと初期設定が難しかったが、NEWスカイコントローラーでは経度・緯度・時刻を入力し、明るい星に天体望遠鏡を向けるだけで設定ができる「ブライトスターアライメント」を搭載。初心者でも扱いやすい

「天体は自分で見つけるのも楽しみの一つですが、探すのが難しくそこでつまずいてしまう人もいる。そういう人でも気軽に天体観測できるので、入門者にこそおすすめしたいです」(三浦さん)

■本格的な天体観測を低価格で 「Sky-Watcher BKP130 OTAW Dual Speed」

SYNTA「Sky-Watcher BKP130 OTAW Dual Speed」(鏡筒のみ、3万6180円)長さ585ミリ、重さ3.66キログラム。正確なピント合わせがしやすい「デュアルスピードフォーカサー」を搭載している

最後は、ヨーロッパの天体望遠鏡市場で圧倒的なシェアを誇るSYNTA(シンタ)の「Sky-Watcher BKP130 OTAW Dual Speed」。軽量かつコンパクトで、このクオリティーの天体望遠鏡にしては安価で手に取りやすい。

「他社製品より低価格なのは、世界中にマーケットがあるため、大量生産を行うことができるからです。また、操作は1時間で覚えられるほど簡単です」(池之上さん)

また、この天体望遠鏡は鏡筒と呼ばれる本体と脚になる架台が別売りとなっている。池之上さんによれば、Sky-Watcher BKP130 OTAW Dual Speedの製品は他社の架台と互換性もあるという。「中でも、ビクセンの『ポルタII経緯台』という架台と相性が良いです。この架台は鏡筒を星に合わせる際に、手を離せばその位置で止まる作りになっており、見たい方向へ簡単に鏡筒を向けることができます」(池之上さん)

Sky-Watcherの望遠鏡はビクセンの架台と互換性がある。中でもスターベース・東京の池之上さんのおすすめが直感的に使える「ポルタII経緯台」(3万240円)

Sky-Watcher BKP130 OTAW Dual Speedにはピント合わせが楽にできるデュアルスピードフォーカサーという構造を採用している。「デュアルスピードフォーカサーとは、ピントを合わせるつまみが、大まかな調整ができるもの、微細な調整ができるものと2つ搭載されている構造。これにより、快適かつ正確にピントを合わせることができます。このデュアルスピードフォーカサーとポルタII経緯台の組み合わせは、初心者でも扱いやすいと思います」(池之上さん)

ピントや方角を正確に合わせられると、写真撮影の時にも便利。価格も他の天体望遠鏡に比べると安価なので、「天体写真を撮ってみたい」という人にまずおすすめしたい天体望遠鏡だ。

◇ ◇ ◇

以上、双眼鏡・天体望遠鏡のおすすめ4機種を紹介した。どんな天体を見たいか以外にも、携帯性を優先するなら双眼鏡、写真を撮りたいなら天体望遠鏡といった選び方もある。

2016年8月12、13日にはペルセウス座流星群が見ごろを迎え、その後も年内に2回流星群が見られるチャンスがある。それに加え、11月14日には68年ぶりに月が地球に大接近するスーパームーンなど、2016年後半は天体ショーが目白押しだ。星空をじっくり観察するか、または写真に収めるか。自分なりの楽しみ方で、2016年後半の天体ショーを体験したい。

(文 小沼理、仲田佳恵、丹羽篤志=かみゆ)

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