相手の気持ちを汲んだ発言、英語でできますか
デイビッド・セイン(16)

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NK商社、うまくいっているように見えた社長と社員たち。実はお互いに不満を持っていることが分かりました。そこで間に入ったのがNK商社お抱えになったコンサルタント、リチャードです。社長の愚痴を聞き、社員の言い分を聞く、そして然るべき解決法を探す。ここがコンサルタントの腕の見せどころのはずですが。
相手の気持ちを十分に汲んだ発言、できますか?

イラスト Dセイン
Richard: Thanks for hiring me as your consultant. I'm sure that in the next three months, we can turn this company around.
Tanaka: Of course. We're in serious trouble, and I need your help.
Richard: So, what do you think is the biggest problem in your company?
Tanaka: Well, my employees never listen to me.
Richard: Oh, dear. You have my sympathies.
Tanaka: I feel like they just ignore me.
Richard: I feel for you. You have a difficult job.
Tanaka: Yeah, my staff is always ignoring me.
Richard: You feel like you're not getting any respect?
Tanaka: Yeah, exactly. What am I doing wrong?
Richard: You're not the problem. It sounds like your staff is the problem.
Tanaka: You're right! Wow, you're the best consultant ever!
Richard: It sounds to me like you're doing everything right.
【対訳】
リチャード: コンサルタントとして雇っていただき、ありがとうございます。この3カ月で私たちは必ず会社を好転させることができます。
社長: もちろん。実は今、我が社には深刻な問題があってね。お力添えをいただききたい。
リチャード: それで、御社にとっては、何が一番大きな問題だとお思いですか?
社長: 社員が私の言うことに耳を傾けないんですよ。
リチャード: それは、それは。同情しますよ。
社長: 彼らが私を無視していると感じていてね。
リチャード: お気持ちは分かります。苦労されているんですね。
社長: ええ、スタッフはいつも私を無視していますよ。
リチャード: スタッフの尊敬を得ていないと感じているんですね?
社長: まったくその通りです。何か悪いことでもしているのかなあ?
リチャード: 社長が問題ではないですよ。スタッフに問題があるようですね。
社長: そう、まったく仰せの通りなんだ! わあ、今までで一番のコンサルタントだね、君は!
リチャード: 社長はすべて正しいことをされているみたいですね。
解説)
▼ You have my sympathies.: 「お悔やみ申し上げます」としても使えるフレーズ。「お気持ちお察しします/同情します」の意味。
▼ I feel for you.: 同感です/お気持ちは分かります。
*相手に共感を示すフレーズ
▼ You have a difficult job.: 「むずかしい仕事があるんですね」すなわち「苦労しているんですね」の意味。
▼ You feel like you're not getting any respect?: 尊敬を得ていないと感じているんですね?
*疑問文にしなくても、語尾を上げることで相手への問いかけになります。
▼ It sounds to me like you're doing everything right.: 「私にはあなたがすべて正しいことをしているように聞こえます」が直訳。「すべて正しいことをされているみたいですね」
*sounds like: ~みたい/~のようだ
Richard: I wanted to meet with everyone without Mr. Tanaka. So, what do you think is the biggest problem?
Sally: Well, if you ask me, Mr. Tanaka never listens to us.
Richard: Yeah, I think I know what you mean.
Mariko: We'll tell him about a problem, but he just ignores us.
Richard: Oh, I see. I feel for you.
Ito: I once made a really good suggestion, but he forgot about it the next day.
Richard: That must have been frustrating.
Sally: He thinks that he's the only one that has any ideas.
Richard: That's obviously not true. I can see you're underappreciated.
Mariko: He doesn't think we have any skills. He doesn't trust us.
Richard: I can see why you're frustrated.
Mariko: So tell us, what are we doing wrong?
Richard: I don't think you're doing anything wrong. The obvious problem is with Mr. Tanaka.
Sally: Wow, you're amazing! You already understand the situation.
Ito: We need someone with your skills to turn this company around.
Richard: There's nothing to worry about. You can count on me.
【対話】
リチャード: 私は田中社長抜きで、皆さんとお会いしたかったんです。そこでですが、何が一番大きな問題だと思っていますか?
サリー: 言わせていただけるなら、社長は私たちの言うことを決して聞いてくれないんです。
リチャード: ええ、おっしゃっていることは分かります。
まり子: 私たちが問題について話そうとしても、ただ無視するんです。
リチャード: なるほど。お気持ちは分かります。
伊藤: 私も前にいい提案をしたことがあったんですけど、その次の日にはもう忘れてしまっていて。
リチャード: それはさぞかしイライラしたでしょうね。
サリー: アイデアがあるのは、自分だけだって思っているんですよ。
リチャード: 自分だけがアイデアを持っているというのは明らかに事実ではないですね。皆さんは正当に評価されていないですね。
まり子: 私たちにスキルがあるなんて思っていないんです。信頼してないんですよ。
リチャード: なぜ皆さんがフラストレーションを感じているのか分かります。
まり子: じゃあ、教えてください。私たちは何か間違ったことをしているのでしょうか?
リチャード: 皆さんは何も間違ったことはしていないと思いますよ。問題は明らかに社長側にあります。
サリー: わあ、すごい。もう状況を理解してくださったんですね。
伊藤: この会社を好転させるには、リチャードさんのようにスキルを持った人が必要です。
リチャード: 心配することはありません。私に任せてください。
解説)
▼ I wanted to meet with everyone without Mr. Tanaka.: 「田中社長なしで会いたかった」は「田中社長抜きで/田中社長のいないところで皆さんとお会いしたかった」の意味。
▼ if you ask me: 「もしあなたが私に尋ねるのであれば」が直訳。すなわち「私に言わせれば/私の意見では」の意味で、自分の発言を始める前の表現。
▼ I think I know what you mean.: あなたの言っていることは理解していると思います。
*共感を示すフレーズ。相手に安心感を与えます。
▼ …he forgot about it the next day.: 彼はその次の日には忘れてしまいました。
*the next day: その次の日 (過去や未来を起点とした次の日) 。現在を起点とした「次の日」であれば冠詞のないnext day になります。
▼ That must have been frustrating.: それはイライラしたことでしょうね。
*<must + have + 過去分詞> : 「~したに違いない」という過去の推量を表します。
▼ We need someone with your skills…: あなたのスキルを持った誰かが必要です。
▼ You can count on me.: 任せてください。
* count on: ~を当てにする/期待する/頼りにする/任せる
セインのビジネスひと口メモ
職場でもプライベートでも、人は誰でも「理解されたい」と思うものです。「理解される」にも色々ありますが、相手が感情的に不平や不満を持っている場合には、まずは相手の話を聞いてあげましょう。うなずきながら、Oh, I see. Oh, ah-huh. Oh, really? のような相づちを打つのもひとつです。でも、相手にもっと深い同情や共感を示すのであれば、あなたが相手の言葉や気持ちを十分理解していることを示すことが大切です。不平や不満を言う場合、人は解決策を模索するよりもただただ聞いてほしいと感じているはずです。
また、日本では、職場に不満がある場合には同僚などに愚痴ってストレスを発散するのが常ですが、アメリカでは上司に直接言って何らかのアクションを取るように要求します。そのような場合でも、たとえ正しいにせよ、忠告を与えたりするよりも、相手に同情したり共感を示して聞くことが大切です。人とのコミュニケーションを大切にするのであれば、ぜひ、同情や共感を示すフレーズを覚えておきたいものです。
Keep on going!
:D セイン

米国出身。累計売り上げ部数350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材制作などを行うクリエーター集団「エートゥーゼット」(www.smartenglish.co.jp)の代表を務める。日本で26年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまでに教えた日本人は数万人にのぼる。日本人に合った日本人のための英語マスター術を多数開発している。
東京・文京区のエートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに、英会話教育メソッド「デイビッド・セイン英語ジム」(http://www.david-thayne.com)の監修も行っている。主な著書に、「チームリーダーの英語表現」(日本経済新聞出版社)、「ネイティブが教える英語の語法とライティング」(研究社)などがある。