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売れるポーチ付き双眼鏡 天体観測を楽しむ女性たち 大人のための天体観測入門1

2016/8/4

2015年のペルセウス座流星群。今年は今月の12、13日に見ごろを迎える(PIXTA)

8月12日と13日にはペルセウス座流星群、11月14日には68年ぶりの近さで月が地球に接近するスーパームーンが見ごろを迎えるなど、天体ショーが相次ぐ2016年。こうした天体ショーは毎年繰り広げられているが、これまで天体愛好家の主な層は年齢層の高い男性だった。しかし、近年天体望遠鏡の売り場には若い女性の姿が目立つ。何が天体観測と女性を結びつけたのか。調べると音楽フェスに行き当たった。天体観測を楽しむ女性たちの様子、そして初心者でも手軽に天体観測が楽しめるグッズを2回にわたって紹介する。

■女性向け戦略の「宙ガール」 思わぬ波及効果も

「『星を見てみたいんです』。そう言って若い女性に声をかけられることが、この1~2年で増えてきましたね」

ヨドバシカメラマルチメディアAkibaで、望遠鏡・双眼鏡コーナーを担当している三浦優作さんはそう語る。これまでこのコーナーを訪れるのは男性が多く、女性が来るのはまれ。来たとしても、コンサート鑑賞用の双眼鏡を探している人がほとんどだった。それが近年、天体観測に使う望遠鏡や双眼鏡を求めにやってくる20~30代の女性が増えてきたという。

これにともない、天体望遠鏡や双眼鏡の売上げも好調だ。ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでの売り上げは、7月1日から28日までのもので、双眼鏡は昨年比120パーセント、天体望遠鏡は110パーセントとなっている。

それまで、天体望遠鏡をはじめとする天体グッズを購入するのは年配の男性が中心で、限定された市場だった。そこに女性を取り込もうと考えたのが、双眼鏡や望遠鏡を販売する光学機器メーカーのビクセンだ。企画部の藤田彩香さんによれば、きっかけは毎年10月に富士山麓で行われている音楽フェス「朝霧JAM(あさぎりジャム)」だったという。

「新たな層を獲得するため、星を見るのが目的ではない人が集まっている場所で、天体望遠鏡や双眼鏡を使って星を見るイベントをやってみようと考えたのです。そして最初に参加したのが、朝霧JAMでした。ここで星に興味を示す女性が予想以上に多いことに気付いたのです」(藤田さん)

ビクセンは朝霧JAMで、昼間は双眼鏡や天体望遠鏡の操作体験、夜は実際に星空観望会を実施。双眼鏡を10台、天体望遠鏡を3台ほど用意した。20~30代の男女のグループが代わる代わるビクセンのブースを訪れ、1日に数百人が双眼鏡や天体望遠鏡をのぞいたという。

2011年の朝霧JAMで星空観測を楽しむ女性

天体望遠鏡を手にするまでは至らないが、潜在的に星を見たいと思っている人は多い――。朝霧JAMで得た手応えをもとに、ビクセンは女性に広くアピールするため「宙(そら)ガール」というネーミングを考案し、2009年から展開を始めた。TBSテレビ「桜井有吉アブナイ夜会」や毎日新聞のコラム「現代女子論」などで大きく取り上げられ、宇宙好きで知られるタレントの篠原ともえさんも「宙ガール」を公言する。

同社では現在、女性を想定して、双眼鏡と天体観測に便利なポーチ、オリジナルのハンドブックなどがセットになった「ソラプティLite」を販売して好評だ。このセットで使われている双眼鏡の「アリーナH」は、セット販売、単体での販売を含め「ビクセンの製品の中でトップクラスの売り上げ」(藤田さん)だという。

ビクセンが展開する宙ガールシリーズの「ソラプティLite H 8×21 WP」(8080円)。カラフルな双眼鏡や星座柄をプリントしたファイバークロスなど、女性を意識した天体セットが話題を呼んだ ※記事中の価格はヨドバシカメラマルチメディアAkibaとスターベース・東京にて調査。税込み
「ソラプティLite」シリーズに同梱されている「アリーナH」(4910円)。黒や深緑などが多い双眼鏡の中、女性でも手に取りやすいカラーバリエーションで、ピンクの他にグリーン、イエローなど5色展開

「朝霧JAMなどで展開してきたイベントの影響もあり、天体グッズ界の盛り上がりは年々大きくなっています。以前ならあまり見かけなかったような、星がモチーフの洋服やアクセサリーも最近は増えていますし。特に女性から支持されていると感じます」(藤田さん)

また、女性をターゲットにしてきたことで、思わぬ波及効果もあったという。

「女性が興味を持つと、彼氏や家族など、男性やお子さんをつれてきてくれるんです。これにより、多くの層に興味を持っていただくことに成功していると思います」(藤田さん)

■手軽に撮影できる天体写真が人気に

天体に興味を持ち双眼鏡を購入する女性が増える一方で、男性にはより本格的な天体望遠鏡の人気が高まっているという。

宙ガールが天体にはまるきっかけが野外フェスだったのに対して、こちらは写真。「天体写真を撮りたいという30代の男性が増えている」と語るのは、秋葉原にある光学機器の専門店スターベース・東京の池之上武さん。「最近はスマートフォン(スマホ)のカメラも十分高画質ですし、一眼カメラも低価格化して誰もが写真を気軽に楽しめるようになってきている。風景写真の延長として星空を撮影したいという人がよく訪れます」

撮影する場合、天体望遠鏡さえあれば、特別な技術や専用の機材が必要ないというのも人気の理由らしい。

「双眼鏡の場合は双眼鏡とカメラを固定する機材を別途購入する必要がありますが、天体望遠鏡ならそうした機材も必要ない。人が天体望遠鏡をのぞいて観測するように、カメラを天体望遠鏡の接眼レンズにのぞかせるだけで印象的な写真が撮れます。星雲や星団を撮りたい場合は専用の機材が必要になるケースも出てきますが、月や土星など、撮りたいものが明るい天体であれば必要ありません」(池之上さん)

スマホカメラの高画質化をはじめ、手軽に撮影ができるようになったことが天体市場に新たな風を吹き込んでいる。これまで天体写真を撮影しても同じ趣味を持つ仲間がいなければなかなか見せる機会はなかったが、交流サイト(SNS)に写真をアップすれば簡単に大勢の人に見てもらうこともできる。

■星空を気軽に楽しめる双眼鏡

実際に天体観測を始めてみたいと考えたとき、まず何を用意すればいいのだろうか。ヨドバシカメラマルチメディアAkibaの三浦さん、スターベース・東京の池之上さんともに「初心者が最初に購入するなら双眼鏡」とアドバイスする。

天体望遠鏡に比べ双眼鏡は持ち運びもしやすいので、手軽に楽しめる。三浦さんによれば「カバンに双眼鏡を入れて、仕事帰りにちょっと寄り道をして星を見るという人も増えています」という。最近は天体観測に使いやすい双眼鏡が増えてきており、中には星空専用のものもある。

天体望遠鏡に比べると倍率が低いので遠くの天体は見られないが、「その分、夜空の広範囲にわたる星座の観察に向いている」(三浦さん)。

「双眼鏡で見るなら月、それも満月ではなく半月や三日月が面白いです。影のある欠けぎわは月の凹凸がよく分かり、双眼鏡の倍率でも十分に楽しめます。しかも欠けぎわは日によって位置が移動するので毎日観察していても飽きません」(池之上さん)

月や星座以外にも、都心から離れた暗い場所へ行けば、双眼鏡でも星雲・星団が見られるし、流星群も観察できる。今年は8月12、13日にペルセウス座流星群、10月21、22日にオリオン座流星群、12月13、14日にふたご座流星群が見ごろを迎える。3回のチャンスがあるが、特にペルセウス座流星群とふたご座流星群は、1月のしぶんぎ座流星群を加えて「三大流星群」といわれるほど、流れる星の数が多いので注目だ。

■惑星をじっくりと楽しみたいなら天体望遠鏡

双眼鏡で星を見て、「もっと詳しく見てみたい」と思ったなら、天体望遠鏡を購入したい。双眼鏡に比べると、持ち運びに不向きで価格も高いが、双眼鏡では見られない火星や土星などの天体が観察できる。

「天体望遠鏡を購入されるのは双眼鏡で月を見て、もっとしっかり見てみたいという方や、火星などの天体を見たいという方が多いです。最近だと5月に大接近した火星を見たいと購入した方が多かった」(三浦さん)。ちなみに今年、火星が地球にもっとも接近したのは5月だが、三浦さんによれば「今も十分大きく観察できるベストシーズン」だという。

天体望遠鏡で見たい天体イベントは、11月14日、月が68年ぶりに地球に大接近するスーパームーン。通常よりも13~14パーセントほど大きくなるので、見えにくいクレーターや陰影をより子細に観察するチャンスだ。

2015年9月のスーパームーン。今年は11月14日がスーパームーンの予定だ(PIXTA)

また、9月ごろまでは土星も見やすくなっているという。ここ数年は土星の傾きが大きくなっており、土星の輪をはっきり観察できる。

◇  ◇  ◇

このように、星空を観察する道具は双眼鏡と天体望遠鏡の二つがあるが、それぞれに守備範囲があり、見られるものが変わってくる。大別すると月や星座、流星群を気軽に見たい場合には双眼鏡、火星や土星などの遠くの天体をじっくり見たい場合は天体望遠鏡が向いている。まずは日が落ちて暑さの収まった夜に、星空を見上げ、思いをはせながらどちらを購入するか考えてみてはいかがだろうか。

次回は、今年見られる天体イベントに使える双眼鏡・天体望遠鏡を具体的に紹介する。

天体望遠鏡で見たアンドロメダ大星雲。楕円状に広がる渦をしっかり観察できる(写真提供:スターベース・東京)

(文 小沼理=かみゆ)

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