マッサージチェア「匠の技」最前線、AI搭載機も
1954年に日本で誕生し、日本人の繊細さが生かされた家電。現在のマッサージチェアは「今までと全く異なる」と言いきってもいいほど進化し、現在もなお継続中だ。
体格に合わせモミ位置調整
以前はモミ玉の動きに工夫を凝らすのが主だった。マッサージチェアが対応する部位は首、肩、そして腰の上部。肩たたき、肩もみの延長線上だったといえる。ところが1990年代後半からエアバッグによる包み込むような圧押し、リクライニングの導入、肩位置センサーの導入が進んで大きく変わった。
現在のモデルは、次の特徴を持つ。(1)肩位置センサーで、かなり身長が違っても自動的にモミ玉の位置を合わせ、その人の体格に合わせたマッサージをする(2)リクライニングさせ、首から足裏まで全身を連続してマッサージする(3)もみほぐすだけでなく、ストレッチをおこなう――この3つである。
(1)と(2)はマッサージ師が行う「手もみ」に近いほぐしが目的だが、(3)のストレッチで、マッサージチェアは、現代人の健康を支える可能性を手に入れた。
現代、パソコンやスマートフォンを長く使うための肩こり、頭痛、また仕事のストレスによる疲労はひどい。伸びをする程度の運動では不十分。しかしストレッチ機能があると機械任せで、しかも適切にできる。筋肉に負荷も掛かるので適度な運動ともいうことができ、健康寿命にもプラスになるといわれる。
ただしマッサージチェアは、旧薬事法である医薬品医療機器法(薬機法)の医療機器(クラス2)に当たり、今販売されているマッサージチェアは、薬機法の認証を受けている。このため、訴求できる効能は「疲労回復」「筋肉の疲れをとる」「神経痛、筋肉痛の痛みの緩解」「血行をよくする」「筋肉のコリをとる」の5つだけ。効果をアピールできないストレッチなどは、あまり認知されていない。
使い心地は試して選んで
主要メーカーはフジ医療器、ファミリーイナダ、パナソニックの3社。コリをほぐし体を楽にするという目的に対し、メーカーごとにアプローチが違うため、似たように見えてもモミごこちはかなり異なる。フジ医療器は人によってコリが違うことを重視。使う人ごとに最適化しやすい設計だ。ファミリーイナダは毎日使ってもらうことを狙い、標準コースに重きをおく。パナソニックは手もみの再現にロボット工学を生かすという具合だ。このため購入時は実際に体験してみることが必須だ。
モデル差はあるが、価格は、月2回マッサージに通う人だと2年程度で元が取れるレベル。マッサージチェアは余裕で10年は使えるので、モミのバリエーションの多い中機種から高機種がお薦めだ。ちなみに高機種の方が、いろいろなモミ技が搭載されており、より多様なニーズに合わせやすい。近年はデザイン性も上がっており、リビングに置いても違和感がない。
実際に購入すると、短時間でも使えるのが大きなメリットとなる。例えば朝、ストレッチをすると体が温まって動きやすいなど、充実した生活を支える。今後、健康寿命を長くすることが必要とされているが、それをバックアップしてくれる強力な相棒ともいえる。
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AI搭載、張り具合で強さ調整
ファミリーイナダが6月29日発表したマッサージチェア「ルピナスFMC-LPN10000」(8月投入予定)は、初めて人工知能(AI)を搭載した。個人の体形や筋肉の張り具合を自動検出し、それに合わせた強さでもみほぐしを実現したという。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」にも対応。脈拍、体重、血圧などの健康データをネット管理することができる。
(家電評論家 多賀一晃)
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