キュートなインパクト、猫モチーフを着こなす
宮田理江のファッションラボ
「猫」のブームがおしゃれの世界にも飛び火してきました。服の柄になったり、猫をかたどったバッグになったり。猫特有の愛くるしさとクールさが装いのムードを深くします。英国を代表するブランド「STELLA McCARTNEY(ステラ マッカートニー)」も2016年プレフォールコレクションで猫をキーモチーフに選びました。
アニマル柄のありがちなあしらい方はTシャツ中央での迎え入れ。でも、見慣れている分、面白みに欠けるところがあります。せっかくの猫ブームですから、ここはダイナミックにまとうスタイリングを試したいもの。左右がアシンメトリー(非対称)に仕立てられたワンピースは流れ落ちるようなシルエットが優美な着映えに誘います。さらに、様々な表情のキャットモチーフを配してあり、エレガントなドレスルックに朗らかさや躍動感をもたらしています。猫にはしなやかなイメージがあるので、着こなしでも自然な動きと組み合わせると柄の持ち味を引き出せます。
猫は生き物ですから、立体的な表現になじみます。表面が盛り上がって見える刺しゅうや織物は、平面プリントとは別物の本物っぽさや風格を寄り添わせます。トレンドになりつつある深めスリットが猫いっぱいのスカートに動きをプラス。身頃と袖で編み地の異なるニットで合わせて、質感の違いを際立たせました。オーバーサイズ気味のニットと対照的に小ぶりのバッグが量感のリズムを生んでいます。
目立つ猫柄の扱いにためらいを感じる人もいそうですが、猫柄を孤立させないで、複数の異なるモチーフとミックスすると、かえって収まりがよくなります。いわゆる「柄on柄」のコーディネートです。トップスは胸のVラインがスポーティーな気分。一方、スカートはチーター柄でワイルドな風情。その間にはさまった格好の猫柄は普段より穏やかに見えます。組み合わせるモチーフ次第で全体のイメージを操れます。靴や小物も雰囲気づくりに効果的で、かかとのない靴はアニマル柄になじむ、のどかな雰囲気を呼び込んでいます。
全く逆のアレンジとしては、思い切って猫で染め上げる選択肢もあります。どんなモチーフにも言えるのですが、中途半端に取り入れるよりも、着姿全体に迎え入れると、落ち着きがよくなります。Tシャツ胸のワンポイントといった、妙に浮いた感じも避けられます。こちらのルックはたくさんのキャット柄がにぎやかで、華やいだムードに。コートの刺しゅう柄とパンツの猫プリントはモチーフも質感も異なっていて、互いを引き立て合うコンビネーション。どちらもたっぷりした丈感が大人の余裕を漂わせています。
英国のオリンピック代表ユニフォームを手がけたことでも話題を集めたステラ・マッカートニー氏は日本でもファンの多いデザイナー。動物の命を守る立場を鮮明に打ち出していることでも有名です。動物に由来するファーやレザーを使わない方針で、今回の猫モチーフにも動物へ注ぐあたたかいまなざしが感じ取れます。
飼い主になついていそうで、人にこびることなく、勝手な振る舞いを見せるマイペース主義の猫は、犬とはまた違ったミステリアスなキャラクターを帯びています。その持ち味を巧みに写し込んだ猫柄は装いにも不思議な気高さや女性的な雰囲気をまとわせてくれるから、ちょっとしたイメージチェンジにも役立てられそうです。
画像協力
STELLA McCARTNEY
http://www.stellamccartney.com/
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。公式サイト:http://riemiyata.com/
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