「固定残業代」乱用目立つ 働けど働けど給料増えず
過重労働の温床、トラブルに

最初に相談者が来ることが多い東京労働局の総合労働相談コーナー
関東地方の運送会社に勤務する40代の運転手Aさんは今春、給与明細を見て目を丸くした。それまで見たことがない「固定残業給」の項目がいきなり出現したのだ。
Aさんは、日給8500円の日給月給制で2011年から働いてきた。しかし100時間を超える時間外があった月でも残業代が増えない。不審に思ったAさんは、15年末、労働法が専門の藤川久昭弁護士(クラウンズ法律事務所)や労働基準監督署に相談。会社に説明を求めた。
明細には4月のAさんの勤務日数は22日、基本給は14万5000円弱とあった。日給8500円なら22日分は18万7000円だが、足りない。
すると会社は、Aさんの時給はもともと最低賃金と同額の820円だったと説明した。つまり日給8500円は、時給の8時間分である6560円の基本給と1940円の固定残業代を含んでいたというわけだ。
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Aさんは「固定残業代など一度も聞いたことがない」と反論する。日給の8500円をベースに時間外賃金の支払いを求めているが、会社は「払わない」と平行線だ。