まるで革靴 ビジネスで履ける新世代レインシューズ
雨が降ると履く靴に頭を悩ませている人も多いだろう。実は、ここ数年の間に、ビジネスシーンにも履ける革靴のようなデザインのレインシューズが増えている。
その代表的なブランドの一つが、2013年の誕生以来、雨の日以外に履いてもおしゃれに決まるデザイン性の高さから話題を集めているレインマン(東京都渋谷区)だ。
レインマン広報の鈴木仁氏によると、革靴のようにこまめなケアは必要ないが、靴用シリコンオイルなどで磨くといっそうツヤ感が出るという。
ゲリラ豪雨にも強いゴアテックス
レインシューズの素材として定番になりつつあるのが、米国のW.L.ゴア&アソシエイツが開発した「ゴアテックス ファブリクス」だ。ゴアテックス ファブリクスはウエアや靴など用途ごとに開発され、防水性と透湿性のある、無数の微細な穴を持つ薄い膜「ゴアテックス メンブレン」に、高性能な表生地と裏生地を貼り合わせた素材だ。
ゴアテックス ファブリクスをビジネスシューズに使用する場合は、アッパーとライニング(靴の裏地)の間にゴアテックス ファブリクスを搭載することが一般的で、アッパーには撥水加工された本革の他、人工皮革など各メーカーによって素材が異なる。
ゴアテックス ファブリクスを使った最新のレインシューズを紹介する。
多彩なカラーで足元から個性を主張
2016年に95周年を迎えた老舗靴メーカー、マドラス(名古屋市)では、カジュアルからフォーマルまで、14のメンズブランドを展開。なかでも主力の「マドラス」は、ゴアテックス ファブリクスならではの防水透湿性と、フォーマルな場面にも似合う上質なデザインを融合。ビジネスパーソンから高い支持を得ている。
2016年春夏シーズンには、南イタリアのカプリ島にある青の洞窟をイメージした新作を発表。レインシューズというイメージを覆すファッション性の高いデザインは、スーツにはもちろん、パーティーなどさまざまシーンに似合いそうだ。
上記の商品はどれもスムースレザーを使用しているため、日頃のメンテナンスには、同系色の乳化性靴クリームを使用するとよいそうだ。また、履き始めに同クリームを薄く塗り、革になじませておくと汚れがつきづらくなる。
フォーマル対応のデザインと最先端の機能が融合
1961年にアメリカから上陸した「リーガル」(千葉県浦安市)は、確かな技術とデザイン性の高さで多くのファンを持つブランド。
「時代の変化に合わせ、最先端の機能も積極的に採用しています」と、リーガルコーポレーション・梛良千明さんが梅雨に向けた高機能ビジネスシューズとしてすすめるのが、「30KR」。ソールにいくつもの穴が開いているため、アッパー部分だけではなくソール部分からも水蒸気を逃すことができる。
また、より軽く、ソフトな履き心地を目指して1986年にスタートした「リーガル ウォーカー」では、通気性と軽さを追求した人工皮革「エアロエアリー」をアッパーに採用した、防水性と透湿性にすぐれたビジネスシューズも展開している。
「エアロエアリー」は表面がなめらかで美しく、色落ちや色あせしにくい。また、人工皮革なので、お手入れも簡単なのが特徴だ。汚れが目立ってきたら、固く絞った布で表面を拭いておくだけでメンテナンスができる。
スポーツシューズのノウハウを生かした雨の日対応のシューズ
1949年からスポーツシューズを作り続けているアシックス(神戸市)。独自に開発した素材や構造設計技術などを、スポーツの分野だけではなく、ライフスタイル全般の質を高める製品づくりに生かしているという。
防水機能を搭載したビジネスシューズ「WR610L」も、そのひとつだ。足裏全体のクッション性を高めるため、ランニングシューズと同様の「オーソライト」の中敷を採用。さらに、中敷の表に吸放湿ポリマーをコーティングすることで、靴内部のムレを軽減している。また、かかと部分に独自素材の「スピーバ」とゲルを内蔵することで、着地時の衝撃を和らげ、歩きやすさを実現した。
もちろん防水機能にもすぐれ、アッパーには撥水加工を施した本革を採用。ゴアテックス ファブリクスを合わせることで、雨をはじきながら、汗による水蒸気をしっかり逃してくれる。外まわりが多い日でも快適に過ごせる一足だ。
ゴアテックスは革靴と同様のケアで長持ちする
ゴアテックス ファブリクスを搭載したレインシューズを長く愛用するには、どのような点に気をつければよいのだろうか。靴修理専門店ORANGE HEAL日本橋本店の村上公逸店長氏によると、アッパーに革が使われている場合は、一般的な革靴と同様のケアをすることで、ゴアテックス ファブリクスの機能を、きちんと引き出せるという。
「アッパーに水分や汚れがついたままだと、内部にまで浸透し、靴の中の水蒸気が外に排出されにくくなってしまいます」(村上店長)
日々の手入れとしては、水分と汚れを取り除くことが基本。コバ(ソールの側面)や縫い目を中心にブラシでほこりを落としたら、表面の水分を乾いた布で拭く。そして、丸めた新聞紙を中に入れて乾かす。ひどくぬれている場合は、途中で一度新聞紙を交換すると良い。最後に、靴専用の乾燥剤とシューキーパーを入れておけば完璧だ。
一度ぬれた靴が完全に乾くのに2日はかかるという。村上店長がすすめるのは、3足をローテーションで履くこと。そうすれば、クリームなどを使ったメンテナンスも3週間に1度程度ですむそうだ。「ぬれると革の栄養分が外に出てしまうため、専用のクリームで栄養を補い、仕上げに防水スプレーをしておくと、防水効果がさらに高まります」(村上店長)
ぬれることを気にせずさっそうと歩けるレインシューズなら、雨の日でもアクティブに行動できる。履いたあとのケアを忘れずに行えば、ワンシーズン限りで履けなくなるということもない。憂うつな梅雨を乗り切るためにも、ビジネススタイルに取り入れてみてはいかがだろう。
(ライター 小口梨乃)
[日経トレンディネット 2016年5月26日付の記事を再構成]
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