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ヨドバシの格安SIM 「使い放題」だが速度に不満

日経トレンディネット

2016/6/14

日経トレンディネット

大手携帯電話会社よりも割安な通信料金でスマートフォンやタブレットを利用できる「格安SIM」には通信業界のみならず、流通業界からの参入も増えている。

大手家電量販店のヨドバシカメラはインターネットプロバイダーのワイヤレスゲートと協業し、NTTドコモのネットワークで利用できる独自の格安SIMサービス「WIRELESS GATE SIM」を2014年から提供してきた。

2016年3月には、プラン内容を大きくリニューアル。高速データ通信の容量に上限を設けていた従来のプランを廃止し、最大3Mbpsで使い放題というシンプルなプランが新設されている。

データ通信の利用量に応じてプランを選ぶ一般的な格安SIMから、使い放題SIMへと転換したヨドバシカメラオリジナルのWIRELESS GATE SIMは、はたして「買い」なのだろうか。他社の格安SIMと比較しつつ、実際の使い勝手をチェックしてみた。

■通信速度は最大250kbpsと最大3Mbpsの2種類

まずは、新しい料金プランの詳細をチェックしよう。下の表は、リニューアル後のWIRELESS GATE SIMのプラン内容をまとめたものだ。

WIRELESS GATE SIMの料金プラン

WIRELESS GATE SIMの料金プランは、通信速度別に最大250kbpsと3Mbpsの2種類に分けられる。いずれもデータ容量は使い放題だ。

250kbpsのプランはリニューアル前から提供されていたもので、データ通信SIMの月額料金が445円、SMS機能付きは584円だ。音声通話SIMは用意されていない。

一方、3Mbpsのプランはデータ通信SIMの月額料金が1556円、SMS機能付きは1741円で、音声通話SIMは2760円だ。

通常の格安SIMではデータ容量でプランを選択するが、WIRELESS GATE SIMは、「最大通信速度」と「音声通話の有無」でプランを選ぶ点が、他社との大きな違いとなる。

■Wi-Fiスポットが使える

WIRELESS GATE SIMは、追加料金なしでWi-Fi(無線LAN)スポットに接続できるのも特徴だ。250kbpsのプランで利用できるのは、「BBモバイルポイント」「eoモバイル」「Wi2 300」のアクセスポイントとなる。

また、最大通信速度が3Mbpsの「Fon プレミアム Wi-Fi」では、前述した3種類のアクセスポイントに加えて、「FON」のアクセスポイントも利用できる。

このFONだが、世界中のユーザーどうしが互いのWi-Fiルーターを共同で利用する、ユニークなWi-Fiサービスだ。

本来、FONのユーザーになるには専用のWi-Fiルーターを購入・設置しなければならないが、WIRELESS GATE SIMの3Mbpsのプランでは、Wi-Fiルーターを持っていなくてもFONを利用可能となる。

FONのスポットは全世界で1900万カ所以上、国内でも100万カ所以上に上る。ちなみにFONの公式サイトでアクセスポイントの位置を確認してみると、個人ユーザーの専用Wi-Fiルーターが多いためか、住宅街を中心に広く分布しているのがわかる。ホテル、コンビニ、駅といった公共施設では、Wi2 300やBBモバイルポイントのほうが利用しやすいだろう。

このほか、Fon プレミアム Wi-Fiの音声通話SIMでは「留守番電話」(月額300円)や「キャッチホン」(月額200円)などのオプションも契約できる。

なお、WIRELESS GATE SIMでは新プランの提供開始に合わせて、電話番号を変えずに通信会社を乗り換える「携帯電話・PHS番号ポータビリティー」(MNP)制度の転出手数料も変更された。以前は、転出するタイミングにかかわらず1万1000円がかかっていた。変更後は、契約の翌月を1カ月目として12カ月目までは1万1000円のままだが、13カ月目以降の転出手数料は標準的な3000円へと大幅に引き下げられている。

■IIJmioの5GBプランより高く10GBプランよりは安い

続いては、他社の格安SIMと比較してみよう。下の表は、格安SIM大手のIIJmioと、U-mobileの使い放題プランをWIRELESS GATE SIMの料金プランを比較したものだ。月額料金は、いずれも音声通話SIMの料金を記載した。

音声通話SIMの料金プラン比較

U-mobileでは、最低利用期間の扱いが異なる2種類の使い放題プランが提供されている。 「LTE 使い放題」(月額2980円)の最低利用期間は契約した月を含む6カ月間で、「LTE 使い放題2」(月額2730円)は12カ月間だ。

WIRELESS GATE SIMの月額料金は2760円なので、LTE 使い放題2とほぼ同じ。下り最大通信速度はU-mobileが225Mbpsとスペック上は優位だが、実際の通信速度はこれよりも遅くなる。

一方、IIJmioには使い放題プランがなく、毎月使えるデータ容量に上限が設けられている。格安SIMのユーザーに好まれる月3GBのプラン(月額1600円)や5GBのプラン(月額2220円)はWIRELESS GATE SIMより500円~1100円ほど安いが、月10GBのプラン(月額3260円)は逆に500円高い。通信速度は下り最大300Mbpsと3社の中では最も速いが、やはり実際の通信速度はより遅くなる。

■高画質動画の再生は厳しい

実際にWIRELESS GATE SIMの新プランを使ってみた結果をまとめておこう。プランは「WirelessGate SIM Fon プレミアム Wi-Fi」のデータ専用プラン、端末はファーウェイの「P8lite」である。

まず、新プランの通信速度を速度計測アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を使って測定した。測定日は2016年4月20日で、比較的速度が出やすい午前中と、利用者が増えて速度が低下する12時台にそれぞれ3回ずつ計測し、平均値を求めた。結果を下の表に示す。

なお、測定地点は筆者が住む長野県佐久市となる。都心などの人口密集地では結果が異なる可能性もある点をご留意いただきたい。

新プランの速度測定結果

午前中は安定して下り平均2Mbps台、上り平均6Mbps台を記録。下りでは最大で2.81Mbpsを記録した。12時台は速度が低下し、下り平均0.85Mbps、上り平均6.92Mbps。上りの速度はあまり変わらないが、下りは1Mbpsを切ってしまう。

ただし、お昼の通信速度が遅くなる傾向は、他の格安SIMでも同様に見られる。格安SIMの最大通信速度は、あくまでもカタログ上の数値だ。「下り最大300Mbps」をうたっているからといって、実際の通信速度が300Mbpsに届くことは、まずあり得ない。利用が集中する平日の12時台や週末の夜は特に遅く、1Mbpsを割り込むことさえある。最大3Mbpsあれば、格安SIMとしては実用的とも言える。

インターネットアクセスを伴うアプリもいくつか試してみた。ウェブサイトや「Twitter」のタイムラインなど、テキスト情報が中心であれば時間帯によらず快適だ。ラジオ放送局のサイマル放送を受信できる「radiko.jp for Android」でも、バッファの読み込みに要する時間は短く、選局してすぐに放送を聴くことができた。

一方、「YouTube」の再生画質をHD画質の「720p」に固定して動画を視聴したところ、再生は始まっても、その後の読み込みが間に合わずに一時停止することが度々あった。通信状況に応じて画質を調整する「自動」を選べば、途切れることなく再生可能。お昼の時間帯でも視聴できた。

動画見放題サービスの「Hulu」も試したが、画質が良い「高」では読み込みが進まず、再生できなかった。「中」に設定すれば、画質は劣るものの途切れず視聴できた。

なお、WIRELESS GATE SIMでは、通信状況の確認やWi-Fiスポットの検索などができる専用アプリ「ワイヤレスゲート」が提供されている。新プランはデータ通信が使い放題なので通信量を把握する必要性はないが、アプリをインストールすることで対応するWi-Fiスポットに自動で接続されるのが便利だ。

専用アプリの「ワイヤレスゲート」は、対応するWi-Fiスポットへ自動的に接続してくれる

まとめると、WIRELESS GATE SIMの新プランでは、テキストや音声が中心であればおおむね快適に利用できる。オンライン動画の再生は、低画質でもよければ外でも視聴可能だろう。

■最大3Mbpsで10GB以上使うならお得

以上のように、WIRELESS GATE SIMの新プランは使い放題のデータ容量が基本となっており、3Mbpsと250kbpsの2種類から最大通信速度を選択する。

留守番電話をはじめとしたオプションサービスも、必要最低限のものがそろっている。無料で使えるWi-Fiスポットも4種類と多く、アプリをインストールするだけで接続できるのが便利だ。

WIRELESS GATE SIMがお得になるかどうかは、スマホやタブレットの毎月の通信量が鍵となる。

毎月必要なデータ容量が10GB以下の人は、データ容量に上限がある代わりに最大通信速度が速い、他社の格安SIMを選んだほうがいいだろう。例えば、DMM.comの格安SIM「DMM mobile」の音声通話SIMは、月8GBで月額2680円だ。前述したIIJmioも、月5GBなら2220円で音声通話SIMが利用できる。データ容量が少なめの人にとって、WIRELESS GATE SIMの新プランは速度が遅くて割高だ。

一方、毎月のデータ通信量が10GB以上の人は、WIRELESS GATE SIMの新プランもおすすめできる。「3日間で合計1GB」といった短期間の通信量に対する速度制限が課されないところも良い。

ただ、最大通信速度は3Mbpsと遅く、混雑する時間帯には1Mbpsを切る。SNSやウェブサイトなどテキスト中心のサービスや、ネットラジオ、音楽聴き放題サービスのように、高速な通信速度を必ずしも必要としない人には向くだろう。

動画サービスを利用するには速度の遅さがネックだ。最大通信速度に近い下り平均2.81Mbpsを発揮した午前中でも、高画質の動画は視聴中に途切れたり、再生できなかったりした。YouTubeやニコニコ動画、Netflix、Huluといった動画視聴サービスの愛好者には心許ない。

幸い、新プランではFONを含め4種類のWi-Fiスポットが無料で利用できる。駅やカフェ、ホテルに滞在するときなどは、Wi-Fiスポットを活用して遅めの速度を補える場合もある。

最大通信速度だけを見ればWIRELESS GATE SIMの新プランは見劣りするが、毎月の通信量が10GBを上回るほどモバイルデータ通信を活用している人なら、検討の価値は十分ある。

(ライター 松村武宏)

[日経トレンディネット 2016年5月17日付の記事を再構成]

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