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post 2020~次世代の挑戦者たち

今、世界の最先端人が日本に注目する3つの理由 米シンギュラリティ大からの報告(3)

公認会計士・税理士 藤田耕司

2016/6/22

2020年の東京五輪・パラリンピック後の時代、「post 2020」には人工知能(AI)をはじめとした科学技術の加速度的な発達が現実となる。世界中の起業家やエリートビジネスパースンらが100倍もの倍率を超えて集まる米国シリコンバレーのシンギュラリティ大学(SU)では、そんな科学技術の進化や、会社の収益を前年比10倍にする思考を学ぶ。日本でまだ数人しかいないSUの教育プログラム修了者である斎藤和紀氏に、SUに集まる人たちが日本をどのように見ているのかを聞いた。
藤田耕司氏(ふじた・こうじ)=左 公認会計士、税理士、心理カウンセラー。1978年徳島県生まれ。2002年早大商卒。監査法人トーマツを経て、FSG税理士事務所、FSGマネジメント、日本経営心理士協会を設立。近刊予定に「リーダーのための経営心理学 」(日本経済新聞出版社) 斎藤和紀氏(さいとう・かずのり)=右 Kiiファイナンスディレクター。1974年北海道生まれ。98年早稲田大学人間科学部卒。2009年早大大学院ファイナンス研究科修了。製造業、金融庁、外資系企業などを経てKiiに参画。15年に米シンギュラリティ大学のエグゼクティブプログラム修了

藤田 前回はシリコンバレーの最先端といわれ、世界中の起業家やエリートビジネスパースンが集まるSUで何が行われているかをうかがいました。衝撃的な内容でした。その教育プログラムへの参加者は、日本からはまだ数人しかいないというのも驚きでした。

斎藤 はい。もっと日本からの参加者も増えてほしいですね。

藤田 SUに集まる人たちは日本をどう見ていますか。

■世界の先端人にとって「特別な場所」ニッポン

斎藤 日本は「特別な場所」だと思っていますね。それは主に3つの理由からです。まず1つ目は、有望な要素技術を多く持っている点です。例えば、自動運転車やナノテクノロジー、ロボティクスなどの分野に関しては、SUでも日本の技術が頻繁に紹介されます。だから投資家や起業家たちは最新技術を探しに日本に来ますし、日本の技術をもっと知りたいと思っています。

あと、日本のアニメや漫画には未来ビジョンを描く特異な力があるように感じます。またハリウッドが参考にするような未来を描いているアニメや漫画が、実は日本には凄く多いです。身近な例を挙げると『ドラえもん』や『攻殻機動隊』などです。SUにやってくるような起業家や投資家たちは、意外と漫画やアニメなどから事業の着想を得ているのです。

シンギュラリティ大キャンパスでの夕食風景

藤田 なるほど、面白いですね。そういった要素技術を作る力や未来を描く力はあるものの、それらを事業化するという点については、日本はいかがでしょう。

斎藤 事業化という点では、日本はあまり上手ではないかもしれません。海外の起業家や投資家は、個々の技術の開発よりも、組み合わせと収斂(しゅうれん)から生じるビジネスモデルのブレークスルー(破壊的創造)に注力していて、そこに資金を注入して一点突破してくるイメージがあります。「あぁ、使われている技術は日本のものなのに…」という事業は多いのではないでしょうか。

藤田 分かる気がします。日本人はモノ作りは得意でも、事業作りがあまり得意ではない。そういった意味では前回お話しいただいた、例えば企業の事業なら、前年比10%増ではなく、10倍増を目指すという「シリコンバレーマインド」と、世界最先端の技術を組み合わせて新たな技術革新を起こす力を養うSUの教育プログラムは、日本人がより学ぶべき内容かもしれませんね。では日本は特別な場所だと思われている2つ目の理由は何でしょうか。

斎藤 2つ目は日本が他の国に例のないスピードで少子高齢化が進んでいる点です。この先に何が待っているのか。それは欧米諸国も他人事ではないでしょうし、果ては人類全体の未来がその先に見えてくるのかもしれません。

藤田 なるほど。そこは、おのずと注目が集まるところでしょうね。3つ目は。

斎藤 3つ目は、日本では長い間デフレが続いていますが、価格の下落と品質の下落が同時に起きる通常のデフレではなく、価格の低下と品質の上昇という、相反する現象が同時に起きていることについてです。これは既存の理論では説明できない現象であり、未来学者たちは興味津々に日本の行末を見守っています。

藤田 確かに良い物が安く手に入るという感覚は年々強くなっていますが、その点は他の国からも注目されているのですね。

斎藤氏は米シンギュラリティ大学のエグゼクティブプログラムを修了した

■注目集める2020東京五輪=来るべき未来

斎藤 そうですね。あと東京五輪・パラリンピックが開催されることも、もちろん注目されています。

藤田 以前、東京五輪のある2020年は科学技術の発展の一里塚として重要な年になると指摘されていましたが、2020年には科学技術の発展はどのようになっているとお考えですか。

斎藤 私はIoTのプラットフォームを提供する会社の人間なので、まずIoTに関してお話ししますと、2020年のインターネットに接続されるIoT機器の数は、調査会社などによると300億台から500億台と言われています。2020年以降は身の回りのあらゆるものがインターネットにつながって、今では考えられない状況になるでしょう。そして、その数はさらに加速度的に増えていきます。

藤田 それは想像もつかない世界ですね。東京五輪までに実現される技術として、他にどのようなものを予想されますか。

斎藤 2020年までにAIによる会話レベルが人間と区別がつかないほどに向上する可能性が十分にあります。ですから東京五輪に来た外国人の大半は、通訳ができるスマートフォン(スマホ)やイヤホン型の通訳機器を持ち歩くと思います。それから仮想現実(バーチャルリアリティー、VR)技術により、五輪会場の様子を遠隔地から同時進行で体験できるようになるでしょう。視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった五感すべてが遠隔地でも同時再現されると思います。規制緩和次第では、自律飛行する小型無人機(ドローン)が都市部で飛んでいるでしょう。開会式で数千台のドローンを使ったパフォーマンスは既に考えられているでしょうし、ドローンレースなども活発になっていると思います。

藤田 4年後はそんな世界になるんですね。次回は加速度的に技術革新が進む時代に向けて、我々、働き手はどう行動すべきかについてうかがいます。

▼シンギュラリティ大学 著名な脳科学者で発明家のレイ・カーツワイル氏(マサチューセッツ工科大学出身)と、宇宙開発事業に多額の懸賞金をかけることで有名な米国Xプライズ財団のピーター・ディアマンティス氏(同)が発起人となり、設立された公益企業。教育や研究を中心に、ベンチャー企業育成なども手掛ける。夏季に実施する若者向けプログラムには80人の枠に対し世界中から数千人の応募があるという。キャンパスはシリコンバレーの中心都市、マウンテンビューの米航空宇宙局(NASA)の研究所内にある。

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