格安SIMの通話料、無料通話オプションで割安に
大手携帯電話会社よりも割安な通信料金でスマートフォンを利用できる「格安SIM」。大手携帯電話の料金プランと比較すると格安SIMのほうが安いが、多くの格安SIMには通話料が従量制という大きな弱点がある。
格安SIMの通話料は30秒当たり20円がほとんどで、5分電話をかけると1回で200円もかかってしまう。大手携帯電話会社では通話定額プランが一般的なので、電話をかける機会の多い人が格安SIMに乗り換えた場合、大手携帯電話会社よりも高く付くこともあり得る。
最近では、通話料金が定額になるオプションサービスや、一定時間の通話が付属した「無料通話」プランを提供する格安SIMが登場している。そこで格安SIMの主な通話定額や無料通話のプランを比べて、どれほど得になるのかをチェックする。
通話定額を提供するニフティと楽天
まずは通話定額プランを提供するニフティと楽天を見ていこう。最初はニフティの格安SIM「NifMo」だ。
NifMoは、通話定額オプションの「NifMoでんわ」を提供している。国内の一般加入電話や携帯電話宛ての通話料金が定額になる「国内かけ放題プラン」(月額1300円)と、国際電話も定額の対象になる「国内+海外かけ放題プラン」(月額2700円)の、いずれかが選択可能だ。
NifMoでんわはNifMoのユーザーだけが利用可能。電話をかけるには、専用アプリのインストールが必要となる。下の表に、NifMoでんわの特徴をまとめた。
楽天の格安SIM「楽天モバイル」は、最初の5分間だけ通話料金が無料になる「5分かけ放題オプション」(月額850円)を提供している。5分を超えた通話は、30秒当たり10円の通話料がかかる。
5分かけ放題オプションは、楽天コミュニケーションズによる通話料割引サービス「楽天でんわ」の特別オプションで、楽天モバイルのユーザーだけが申し込める。利用するには、楽天でんわの専用アプリから発信する必要がある。下の表に、5分かけ放題オプションの特徴をまとめる。
無料通話オプションを提供するBIGLOBEとUQ
BIGLOBEによる格安SIM「BIGLOBE SIM」は音声通話向けオプション「BIGLOBEでんわ」を提供する。通常30秒当たり20円かかる通話料が半額になる。このBIGLOBEでんわのオプションとして、1200円分の無料通話分を550円安い月額650円で追加できる「通話パック60」がある。
BIGLOBEでんわの通話料は30秒当たり10円なので、1200円の無料通話分で毎月60分の通話が可能だ。BIGLOBEでんわはBIGLOBE SIMユーザーだけが利用でき、他のサービスと同じく専用アプリからの発信が必要だ。下の表に、BIGLOBEでんわの特徴をまとめた。
UQコミュニケーションズの「UQ mobile」。UQ mobileでは、1200円分の無料通話と月1GBのデータ容量を含んだ料金プラン「ぴったりプラン」(月額2980円)を提供している。通話料は30秒当たり20円なので、無料通話分で毎月30分まで電話を掛けられる。
また、月額1000円の「たっぷりオプション」を追加することで、無料通話を2400円(1時間分)、データ容量を月3GBに増やすことも可能だ。料金プランに無料通話分が組み込まれているので、他社のサービスのように専用アプリから発信する必要はない。下の表に、ぴったりプランの特徴をまとめた。
一番安いのはBIGLLOBE
4社の音声通話向けオプションを実際に契約した場合、毎月のトータルでの通信料金はどれくらいになるのだろう。下の表は、NifMo、楽天モバイル、BIGLOBE SIM、UQ mobileの各サービスで、音声通話向けオプションを利用する場合のコストを比較したものだ。通話定額を付けたプランは赤、無料通話分があるプランは青で色分けした。
なお、毎月のデータ容量が同等になるように、NifMoとBIGLOBE SIMは月3GBのプラン(いずれも月額1600円)、楽天モバイルは月3.1GBのプラン(月額1600円)、UQ mobileはぴったりプランにたっぷりオプションを付けた場合で試算した。
一番安いのは、毎月60分まで無料で通話できるBIGLOBE SIMの通話パック60(月額650円)を月3GBのプランで契約した場合の2250円だ。逆に、毎月60分の無料通話分と月3GBまで高速データ通信が使えるUQ mobileのぴったりプラン+たっぷりオプションの組み合わせは、月額3980円とコストが高い。
楽天モバイルの5分かけ放題オプション(月額850円)を月3.1GBのプランで契約した場合のコストは2450円。NifMoでんわの国内かけ放題プラン(月額1300円)を月3GBのプランで契約すると、毎月のコストは2900円だ。
4社のプランを比べると、毎月の通話時間の合計が70分以内であれば、BIGLOBE SIMのコストが最も安い。毎月の通話時間が70分以上で1回の通話が毎回5分以内で終わるのであれば、楽天モバイルのほうが安くなる。
また、NifMoとBIGLOBEを比べると、毎月の通話時間が1時間33分以上であれば、NifMoの国内かけ放題プランが安くなる。NifMoと楽天モバイルとの比較だと、5分を超える通話時間の合計が23分以上なら、NifMoが得になる。
専用アプリでないと対象にならないことに注意
大手携帯電話会社の通話定額プランと格安SIMの通話定額オプションには、何か違いはあるのだろうか。
今回チェックした4社の音声通話向けオプションのうち、NTTドコモの「カケホーダイ」のように、国内の一般加入電話と携帯電話宛ての通話がすべて無料になるのはNifMoでんわだ。カケホーダイを一番安く使うには月額6500円かかるが、国内かけ放題プランと3GBプランを組み合わせれば、月額2900円で通話定額が実現する。
楽天モバイルの5分かけ放題オプションは、auの「スーパーカケホ」やソフトバンクの「スマ放題ライト」(いずれも月額4900円が最安、データ容量は月1GB)といった大手携帯電話会社が提供する5分間通話定額プランに近いが、毎月のコストは大手の半額の2450円だ。5分を超えた分の通話料も半額の30秒当たり10円とお得だ。
良いことばかりではない。格安SIMの通話定額オプションや無料通話分のオプションは、いずれも専用アプリから電話をかける必要がある(UQ mobileのぴったりプランを除く)。大手携帯電話会社の通話定額プランはスマホ標準の電話アプリから発信した通話も定額の対象だが、NifMoでんわや楽天モバイルの通話定額オプション、それにBIGLOBEでんわは、それぞれの専用アプリから発信しないと定額や無料通話分の対象にならないので注意したい。
また、NifMoでんわはインターネットを経由するIP電話の仕組みを利用している。そのため、電話を掛けた相手に自分の番号が通知されなかったり、通話品質が通信環境に左右されやすかったりというデメリットもある。品質を重視するなら、楽天モバイルや大手携帯電話会社の通話定額プランを選ぶほうがいい。
自分の通話パターンを考えて選ぶべき
どのサービスやオプションを選ぶべきかは、通話時間に左右される。というのも、どれくらい通話するかによって、最もお得なオプションが変わるからだ。
例えば、格安SIMで一般的な「データ容量が月3GBで月額1600円のプラン」を契約している人の場合、毎月16分半以上電話をかけているならBIGLOBEでんわの通話パック60、21分半以上なら楽天モバイルの5分かけ放題オプション、33分以上ならNifMoでんわの国内かけ放題プランに乗り換えるとお得だ。
逆に、通話時間が16分以下であれば、通話定額などではなく、基本料金がかからない「楽天でんわ」や「G-Call」といった通話料割引サービスを検討するのがいいだろう。
(ライター 松村武宏)
[日経トレンディネット 2016年4月26日付の記事を再構成]
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