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成果が上がるチームの作り方

第16回 部下に納得してもらえるリーダーシップとは

2016/9/4

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 前回まで、成果があがるチームの作り方について、「チームの活性化」「意識と思考」「行動」というテーマ順で部下指導のポイントを説明してきました。

 今回から最終回までの3回については、部下指導の技術ではなくリーダーとしてのあなた自身を磨くためのポイントを整理してみたいと思います。まず、自分がリーダーシップを発揮するときに、強みとなっていることは何かということを自己分析してみたいと思います。

影響力の源泉を考える

 リーダーシップの定義はいろいろありますが、ここでは「メンバーを巻き込み、自ら先頭に立って方向性を示し前進すること」と定義したいと思います。そのためには、メンバーからリーダーとして認められている必要があります。メンバーに認められなければリーダーシップを発揮することはできません。

 認められる存在であるということは、よく言う「一目置かれる」存在ということになりますが、一目置かれる存在であることではじめてメンバーに対する「影響力」が生まれます。

 ところで、リーダーの何によって「影響力」が生まれることになるのでしょうか。影響力の源泉です。それはそれぞれのリーダーによって異なって当然でしょう。例えば、好ましい人間性によってメンバーから慕われている場合もありますし、すばらしい統率力によって支持されている場合もあるのです。

 影響力の源泉を大きなくくりでとらえると、以下の2つの要素が見て取れます。

・人柄・人間力(ヒューマンスキル)・
知識・技能(テクニカルスキル)

 以下に、リーダーの影響力の源泉を列記しておりますので、皆さんはご自分がどのタイプの影響力をチーム全体に発揮できるかチェックしてみてください。

(C)究和エンタープライズコンコード「組織化人事評価制度“LADDERS”」より

 往々にして、ヒューマンスキルの高い人は、対話の場を多く持つことにメンバーが抵抗しませんので、対話によるコミュニケーション促進がしやすいですし、テクニカルスキルの高い人のアドバイスは受け止められやすいですから、アドバイスによってコミュニケーションが促進される傾向にあります。

 対話の場、アドバイスを有効に使うことがリーダーシップをさらに高めるベースとなるでしょう。

メンバーが納得して指示を受けるとき

 皆さんのことをメンバーが、リーダーとして認めるきっかけとなるものが影響力の源泉にあると述べましたが、さらにリーダーは、自分の指示に対してメンバーに納得させる必要があります。

 そのために、まず人が他者の話に納得するときの構造を見てみましょう。

 人は、話を聞いているときに、「話している人」そのものと「話の内容」の両方を判断しています。話している人を信頼できなければ「この人には言われたくない」ということになりますし、信頼を置いていれば「この人が言うんだから」ということになるのです。

 また、話の内容については、分かりやすく理にかなった話であれば納得しますし、具体性や論理性にかける話であれば納得しません。

「話している人」の信頼性を高める

 「話している人」の信頼性を高めるためには、日ごろから信頼を裏切るような言動をしてはいけないことは当然として、信頼を貯蓄しておく必要があります。そのために最も重要なことは「約束を守る」ということです。逆に約束を守ってくれた記憶が増えることでメンバーはリーダーを信頼できるようになるのです。

 ですから、小さなこともどしどし「約束事」にすることをお奨めします。例えば「今度飲みに行こう」ではなく、「来週飲みに行こう」というように具体的な約束事にするのです。メンバーが相談したいと申し出た時、たまたま上司に呼び出されていて時間がないときなども、「悪い後にしてくれ」ではなく、「30分後に声をかけるから、そのときにしてくれ」というように相手がはっきりとイメージできる言葉に置き換えるのです。

 この小さな約束の積み重ねは、実は非常に効果があります。決してできない約束はしてはいけませんが、約束してあげたいけれど難しいときなどは、「この件部長に依頼するのは、正直今は難しいと思うけど、今週中には感触をつかんで報告するよ」というように実現可能性を探ること自体を具体的に約束するようにしたいものです。

「話の内容」の納得性を高める

 話の内容の納得性を高めるためには、メンバーが「やれそうだ」と思えるようにすることと、「やったほうがいい」と感じるようにすることが大事です。

 メンバーは、具体的なやり方が分かったときに、それなら「やれそうだ」と思える訳ですから、「何とかしろ」「自分で考えろ」とだけ言い放つようでは納得しないということです。しかし、リーダーとしては、できるだけ自分でやり方を考えさせたいと思いますから、あまりにも詳細な指示は出したくはないですし、メンバーの成長のためにもしてはいけません。

 ではどうするかというと、やり方の一歩手前の話を具体的にして納得させるのです。例えば何が整えばできるのか、成立条件などを示してあげるのです。(リーダー)「このキャンペーンを成功させるためには、目玉の商品がはっきりしていることがポイントじゃないかな」(メンバー)「あっ!そうか。全部を売ろうとするから分かりにくくなるんだ」(あるキャンペーン企画を任す際のやりとりの例です)

 また「やったほうがいい」と感じさせるためには、単にゴールに向かわせるのではなく、ゴールに至ったときのイメージを持たせることが大切です。「このキャンペーンを成功させると、年間の売り上げ目標の30%達成することができるんだ」「このキャンペーンをすることで、新しいお客さんと接する機会が増える」「このキャンペーンで、自社のイメージを変えることができる」などのようなポジティブなイメージを持たせるのです。

リーダー自己研さんのためのチェックシート

 ここまで、「メンバーを巻き込み、自ら先頭に立って方向性を示し前進する」リーダーシップを発揮するために、影響力を持つことと、納得させることについて述べてきましたが、最後に「話をする人」としてより信頼を得るためにリーダーが意識するべきことと、「話の内容」を高めるために同じくリーダーが意識するべきことを表にまとめておきます。

 この表を使って、リーダーとして自己研さんすべき課題を見つけ出してみてはいかがでしょうか。

「話をする人」として信頼を得るために意識すること

(C)究和エンタープライズコンコード「組織化人事評価制度“LADDERS”」より

「話の内容」を高めるために意識すること

(C)究和エンタープライズコンコード「組織化人事評価制度“LADDERS”」より
(C)究和エンタープライズコンコード「組織化人事評価制度“LADDERS”」より

◇   ◇   ◇

井上健一郎(いのうえ・けんいちろう)
井上オフィス代表。人材開発・組織構築コンサルタント。中小企業診断士。日本経営教育研究所顧問。概念化能力開発研究所上席研究員。
慶応義塾大学卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントで制作、営業、プロモーションを経験。責任者としても数多くのプロダクツを手がける。その経験を生かし、現在、企業の組織構築を人材の側面から支援している。特に、「人材アセスメント」による人材の能力分析と、その結果を活用した組織構築、人材能力開発には定評がある。また、人材育成型の評価制度「LADDERS」を開発。評価制度の導入と運用の支援を行っており、導入実績企業は5年で100社に及ぶ。最近では、リーダーの育成に関する企業からの要請が増え、教育・研修という面で幅広く活躍している。著書に『部下を育てる「ものの言い方」』(集英社)がある。
ホームページ http://www.i-noueoffice.com/

[この記事はBizCOLLEGEのコンテンツを転載、2012年11月19日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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