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土用の丑、何食べる? 代用品でウナギのかば焼き気分

2016/5/20

 今年は夏の土用の丑(うし)の日が7月30日の1日だけ。食事の定番はウナギのかば焼きだが、ウナギは供給量が10年前と比べて半数に減り、値上がり傾向が続く。今年もウナギ屋が仕入れるウナギの価格は前年と比べて3割高く、気軽に食べられるとは言いにくい。懐に優しく、気分を楽しむ方法の1つが代用品を用いたかば焼き。代用品には日本人のウナギに対する熱い思いが詰まっている。
近畿大学で開発されたウナギ風ナマズのかば焼き。かむと口の中で脂が広がる。

 まずは近畿大学の有路昌彦教授を訪ねた。有路教授はウナギの資源量が減少していることへの懸念から、ウナギ風味のナマズを開発した。

■ナマズ、脂がのりやすく

 研究室ではナマズのかば焼きを用意してくれた。出てきたかば焼きは見た目はかなりウナギに近い。口に入れてかみしめると脂がぐっと広がった。やや弾力のある皮の食感もウナギそっくり。薬味にサンショウをかければ、よりウナギっぽく味わえる。ナマズには小骨がなくウナギよりも口当たりがいい。肉がしっかりとしている点は少しウナギと異なるか。

 有路教授は簡単に育てられ、ウナギと同じようにウロコがない淡水魚に絞ってウナギの代用品候補を試した。コイやドジョウ、ウグイなど様々な種類から、脂がのりやすいナマズを選んだ。近所の川でも見かけるマナマズと呼ばれる品種に、特別に調整したエサを与えてウナギの味に近づける。

 ウナギは天然の稚魚を捕まえ、育てる。1キロあたり250万円程度で取引され、1匹あたりでは約500円だ。一方、ナマズは飼育下で繁殖可能なため、稚魚にかかるコストは1匹数十円程度と圧倒的に安い。有路教授は「ファストフード店で500円のナマズ丼が食べられるようにしたい」と意気込む。

 今年の夏までに育てられるのは20トン以下で、半数が大手スーパーに出荷される。外食店では関東、関西で1店舗ずつ、中部地方に2店舗で扱う。今後は生産効率を上げるために養殖に適したナマズを選んで育て、大量生産技術の研究を進める。

スーパーではウナギのかば焼きのタレだけでも売っていた

 ウナギの代用品の歴史は古い。有名なのが精進料理の1つで、すりつぶした豆腐を焼きノリの上にのせて揚げ、タレを絡めたものだ。殺生が禁じられている僧侶のために、ウナギを殺さずにウナギ風を味わえる工夫をしている。

■ちくわでかば焼きに挑戦

 インターネットを検索すると近年のウナギ価格の高騰で、様々な食材を用いたかば焼きの作り方が紹介されている。穴子、イワシ、ナスなど多数の中で、最もお手軽そうなちくわを試してみた。

 用意したのはスーパーで買ってきたちくわとウナギかば焼きのタレ。まずはちくわの内側に縦に切り込みを入れ、丸まらないようにフライパンに押しつけながらサラダ油で焼く。焦げ目が付いてきたらタレを入れてさっと絡める。このとき、タレをやや焦がし気味にするのが見た目をウナギに近づけるポイントだ。

記者がつくったウナギかば焼き風のちくわ。タレを少し焦がし気味にするのが見た目をウナギかば焼きに似せるポイント。

 できあがったかば焼きは、かなり見た目を再現できた。肝心の味はというと、口に運ぶと練り物特有の弾力で今食べているものがちくわであることを思い出す。代用品とは分かっているものの、ウナギを期待した気持ちが裏切られた。脂もまったく感じられない。タレを焼き付けたことで香りは少し近づけられた。ただ、甘辛のタレを絡めたちくわは、ウナギのかば焼きとはまったく違う食べ物としておいしかった。味が濃いめなのでご飯が進む。お弁当のおかずにも良さそうだ。

■本物、柔らかさに驚き

日本橋の老舗「大江戸」のうな丼。熟練の職人でなくてはトロッとした食感を出せない。

 本物のウナギの味を確かめるべく、日本橋に店を構える老舗のウナギ専門店「大江戸」へ向かった。記者が食べたうな丼のウナギは静岡県産。一度蒸してから焼く関東風の方法で調理する。

 かば焼きに箸を入れると抵抗を感じずスッと箸がとおる。食べるとその柔らかさに驚いた。口に入れると身がほどけるトロッとした食感は、これまで食べたウナギ代用品とはまったく異なる。皮も気にならない。柔らかいかば焼きを崩さず焼くには熟練の技術が必要だ。大江戸の味付けではタレは主張しすぎずウナギ本来の味が楽しめる。香ばしいが、焦げた風味はない。

 大江戸のうな丼は1杯3600円(税別)。現在ウナギ屋が国産ウナギを仕入れる際の価格は1匹あたり1000円程度で、昨年と比べて3割高い。養殖業者は一層の値上げを要求しており「最近さらに上昇してきた」(大江戸の湧井恭行社長)。

■ウナギの供給量、国産・輸入合わせ10年前の半分に

 10年以上前には国産ウナギが1匹およそ300円だったこともあった。ここまで大きく値上がりしたのは、乱獲でウナギの資源量が減少したことが原因だ。一時は100円ショップで売られることもあったという。水産庁のまとめでは2015年のウナギ供給量は国産、輸入を合わせて5万1139トンだった。10年前の半分まで減った。

 湧井社長は「孫、子供の代までウナギを食べる文化を伝えていくために、ウナギを出す飲食店も努力しなければならない」と話す。湧井社長が理事長を務めるウナギ専門店の組合、全国鰻蒲焼商組合連合会では、天然のウナギを使わないなど資源を保護しながらウナギを楽しみ続けるための取り組みを続ける。

 せっかくの土用の丑の日、ウナギを食べたいけどお財布に余裕はない――。そんな人は代用品を楽しむのも一興。夏にかかせないウナギの味を守るために、ウナギ代用品は力強い援軍となりそうだ。

(商品部 山田彩未)

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